8-市場
もう収まった仕掛けの周りは、少し騒ぎになっていた。
「こんな仕掛けがあったなんて〜」
「祭りの日以外に見れるとはなあ!」
観光客と地元の人が数人集まって、盛り上がっている。
それを成したセリは、水瓶への興味はもう失せている。隣接する市場へと移っていた。
朝の活気、見たことのない果物。仕事に行く者も、ここで食事を摂るのか。
船員らしい服装をしている。
大きい茶色、丸い物体のものの前で止まった。何に使うものだろうか?
「木の実だ」
ロードの答えに驚いた。
「え。」
セリの知っている木の実は、手で持てるほど小さな物だ。置かれている茶色、木の実はセリが抱えてなんとか持てるかという大きさで重そうだ。
「ひとつちょーだい」
カナンが購入した。
「あいよ」
そういうと、大きな包丁で真っ二つに割る。
「木の実?」
果物のように、滴る汁に木の実というより果物だなとセリは観察する。
「はい、半分ね
ロードが受け取り、セリにはストロー(藁)が渡された。
カナンは、ストローを木の実に差し込み吸い上げている。
(飲めるのか)
セリも真似て、ロードの持つ木の実をもらった。
「ちょと独特の味」
ロードも飲み、カナンはすんなり飲めている。
「クセになるんだけどねー」
たぶん美味しい?とセリが悩む味だ。独特の味に馴染みがないのだろう。
「慣れないとちょっとねえ!」
店の女性も笑っている。
ロードと分けて飲み終えた。喉の渇きは無くなったが、口の中はスッキリしない。魔法で水を出して飲んだ。
「あの子じゃないか?」
「相当な、水魔法が使えるんだって」
「うちで少し働いてくれないか?」
「いやうちで」「給金弾むぞ!」
市場の体格の良いヒト達に囲まれる。
魔導具や水の魔石はあるものの、大量の水は使い勝手が良い。仕掛けを動かせて縁起が良いというのもある。その機会を逃すまいとした人々。
払い除ける訳にもいかず、セリは身を縮める。
「はいはい、押さないでー」
カナンが集まりを宥めにかかった。勢いが落ち着く。
それまでセリは、ロードがさっと抱きかかえていた。ここなら、迫られることはない。
軽々と身が浮く瞬間と収まったホールド感。
これをなんて言うんだったか。
(嬉しい)
抱っこといえば子供っぽいが。赤ん坊だった時はしてもらっていただろうが、された記憶は残っていない。
少しむず痒い、照れも出てロードの首筋に顔を埋めた。
カナンが仕事は受けないと伝えれば、残念だと言いながらも解散していった。
そのうち、集まりは解散して
3人は市場の人混みを逃れていった。
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