2-海の街
「ようこそ、おいでくださいました」
雪のない道、豪華な馬車に続き大きな館に着いた。セリは雪のない景色に違和感を感じていた。ずっとあったものが無いというのは不思議に感じる。
馬車に乗る前に感じた海のにおいと、窓から見えた人の多さの情報量に、セリは目を回しているのを現状、耐えている。
知らない所での状況把握、見知らぬ土地に興味もわく。
その気の散らかりがあって、ロードから離れない。
ペタリと側にいるセリの様子を目に、ロードの方が離さないのだがと知っている。護衛のカナンは気楽だった。
(すっかり馴れちゃって。)
獣人とヒト族の組み合わせ、その番の組み合わせはトラブルが多い。セリが教会の子であった事と、助けが必要な状況であったから距離は急速に縮まっている。
最凶の竜人。止められる者がいないとされるロードは、すっかり過保護な男になって居た。
(面白いねえ〜)
狼獣人も番への欲求が強いとされるが、自身がそうなる未来などカケラもない。側にいる分には楽しかった。給料も入るしな。
商人としてシュルトが2、3質問しているが、今日は立派な宿に泊まれるようだ。
船旅も豪華な部屋だったが、個室はないし解放感が違う。
(オレの給料では全然泊まれない、いやそもそも紹介が要るようなところか。警備もしっかりで、まあ。オレの仕事はあるんかね?)
そんなのんびり一行は宿泊先の宿に入って行った。
それに同行する案内の男は、ひっそり安堵して居た。迎えるのは貴族も多い宿だが、“今回は竜人が番を連れて”との情報にトラブル、危険があるかもしれないと緊張が走った。
無礼があれば…と胸をよぎった不安があったが、実際はおとなしい子供と人を動かすのに慣れた面々。案内に立つ男も移動しやすかった。
商人のシュルトに答えながら、2人。貴族と研究者だという2人を窺い見る。
(商談だろうか?)
まとまりのないメンバーだなとも思った。
キースとグスタフは、いつも通りおとなしい。子供のセリは、はしゃぐというより情報を見逃すまいとキョロキョロしていた。
見ようによっては子供らしい。
新しいところで落ち着かない、小動物に思える。警戒心と興味が大人のものから、子供に戻ったように。
(最強の庇護者が側に居れば、なあ?)
ロードは軽々、静かにあの大物の魔物を屠った。
(オレの仕事って護衛だったよな。)
討伐は入ってないんだ、とモヤッとする気持ちに言い聞かせるカナンだった。
「明日の夕食には、最高級の魔物の肉料理が出るワ」
「肉?」
シュルトの情報に、セリが反応する。
新鮮な魚も良いが、大物の魔魚の肉はなかなか流通しない。美味いからだが。
「楽しみだな」
ロードがセリに声をかけ、頷くセリ。その護衛も旨い思いはできるらしい。
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