海の街
1-セリの朝
セリが目覚めた時、陽はすっかり昇っ窓から見える海は明るかった。
ぽやっとした頭で周りを見回す。もう皆んな起きているんだろうか。動き出す前に、さらりと自身も髪を撫でる手の方を見た。
「もう起きるのか?」
ロードに頷いたセリは、もぞもぞと起き出し支度を始めた。
船に乗るだけでも、セリが具合が悪くなるかもしれないと聞いているため過保護だった。ヒト族というのはすぐに不調になってしまう、らしい。
ロードはセリの様子にはより一層の配慮をしていた。それは、面倒な貴族の接近も海の怪物と呼ばれるほど大きな魔物にも適用されたのだが。
セリが部屋の外に出た時に、倒された大きな魔物は横たわって居た。
それは、上陸した船とほぼ同じで。夕暮れにその巨体を見たが、セリには魔物の素材だと判断され、大きな荷物だなと搬入物と認識されスルーされた。
この辺の海の男でも大掛かりな討伐になる魔物なのだが。今となっては商人達が扱う商品となった。
セリは、夕暮れに染まる浜辺と海の色に気が向いていた。美しい海は避暑地としても貴族が集まると後で聞く事になる。
船を名義上、出港させた貴族は挨拶できずに案内は別の場所から迎えにきた。
港から、少し馬車での移動になる。
セリに窓の外の景色を見せながらも、その姿を綺麗に隠して今日の宿になる場所へと移動が完了した。
面々は変わらず、セリには安全な旅行であった。
その一方で、大物の魔物の解体に見物人が集まって居た。
「この魔物、凍ってるから新鮮だな」
「解体に付与された刃物じゃないと切れんぞ。」
「まあ、ぬめりがなくて運びやすいだろ」
海の男達は大物を慣れた手つきで解体していた。連絡を受けて集まっていた職人達。
「戦闘するより逃げに転じる装備をした船だったはずだが?」
「ああ、凄腕の魔道士さまが乗ってたんだと」
口も動くが、手は澱みなく動いている。店の親方を譲っても腕は鈍っていない。そんな親方衆にかかれば、簡単な仕事だ。
「あ〜貴族様が居たそうだ」
「お忍びか?」
「その護衛かあ」
ロードは護衛ではないが、セリの健やかな眠りを守るためには魔法をズドン!くらい朝飯前だった。
食事に、換金されて支払われる手筈をシュルトが整え、船員が商会に連絡してこの場に居るl
しばらく遊んでいられる金額と、船を守った恩。御礼として還元されるのだ。
義理人情。
情けは人のためならず。セリのためだという男の行動だが討伐の対象は、綺麗に商品とされ換金されたのだった。
部屋との温度差
最大の機会だった
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