(11) 船内の会話

今回、急な貴族様の船旅。


それに付き合わされる船員達は、目的地で乗せた客の話花が咲いた。


「やっぱ高貴な方への迎えか」

「あの銀髪は教会の関係者っぽいな」


急な申し出は良くあること。金払いはまあまあで、危険が多いとなれば嫌われる客だが断るのも難しい。


「しかしまあ、獣人に商人っぽい男は分かるが他はな?」

「ひとりは学者せんせえらしいぞ。」


なんともへんな組み合わせだと話していた。特に、子供と一緒の男だ。

親子なのかと思うにべったりし過ぎて、違和感のある関係。


「犬獣人と何か分かんない獣人2人に?小綺麗な商人と学者。」

「んで、子供?」


どう並べても、子供が浮く。乗せた場所は岩壁と思われていた隠された場所。中継地点として使い勝手が良さそうだが、今後解放されて使えるだろうか。


そんな曰のありそうなところへ迎えに行ったら貴族。さっさと貴賓室に入って行った一向。


そこにいる子供は、姿を見せず一緒にいる。


「あの貴族の隠し子」

「銀髪の方の関係者」

「大穴で、商人関係!」


暇だし賭けに興じる。もちろん客にも雇い主にも気づかれないように、だ。海の男達は、客の秘密を無理矢理に暴く事はないが、暇には勝てない。


海は荒れず、警戒しているものの魔物も出てこない。

釣りをしている船員の方も、釣果は今ひとつのようだ。


「どーも、今日はかかりが悪いなあ。」

「今日の客は、釣りとの相性は悪いのかもな」


のんびり航海をしている。

行きはかなり急かされたが、帰りは順調も順調。


「我儘な客じゃないっぽいし。」

「でもよ、依頼人は会えてなくて苛ついてるぞ。」


依頼人は、貴賓室に入っていかない。何回か商人っぽい男と話しているようだが。


「仲が良いって感じじゃないな」

「んー、ありゃ依頼人の方が媚び売ってる。」


「銀髪の貴人が高位なのか。」

「そりゃー、あんだけお綺麗だとな。」


「商人に兄ちゃんも都会っぽいな」

「学者せんせいも渋い、良い男だぜ。」


個性的な男たちが揃っていた。


「あの翠色の髪の男。」

「ん?あの兄ちゃんが好みか」


ハハハと笑い話に、客の事を話す。

その中で目立たない話題に上らなかった男2人が、取り扱い注意な獣人とは思わない。


それに、子供については興味から外れていた。フードを被った背丈が低く、気を遣われているから子供と判断しただけだ。


そのセリこそ、一番丁重に扱わないと氷の竜人の怒りに触れることになる。綺麗にその部分を回避している海の男達は、かなり良い回避能力があるのかもしれない。


そう、カナンはひっそり思って船員達の会話から離れて行ったもだった。




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