(10) 船の路

船は順調に進んだ。


魔物への威嚇射撃の音がたまにするが、部屋では音は少しだけ。

高級な部屋は、防音と防御が張り巡らされている。


“例え船が壊れても部屋は無事”な仕掛けと案内された。個室もあるが、セリとロードは広い部屋の角にテントを張ったかのような場所を設けた。


極北の城にあったクッションを敷き詰め、布が垂らされてそこでロードと寝ている。


カナンも近くで「テキトーに寝てるよ〜」という状況だった。


色々な守りが、しっかり敷かれているためセリの行動範囲も狭い。船の上は暇だと思うのは、北の砦で走り回っていた時との差か。


もう、恋しがっているのかもしれない。でもそれは今だけ、船が着く先も楽しみにしているのは確かなのだ。


ちょっと思ったより刺激もやる事もないだけで。

セリの心情とは異なり、夜は静かに過ぎ…


「1日で治らない。」

揺れる感覚が、気分も不安定だ。


波の音は気にならないが、部屋で暇なのはしんどさもあった。


「少し、潮風にあたってみる?」

シュルトが、『潮風に当たると風邪をひかない』と謂れがあると話したため、ロードが連れ出してくれた。


(部屋の中にずっといるようにしたのも、ロードだったけど。)


過保護な竜人と、カナンも付き添って甲板に出た。

セリはフードを被ったまま、潮風と陽射しの対策があっても気分転換になる。


「あー、波も荒れてないし魔物もデケエのはいないから、順風満帆だな」

「魔物が来ても、すぐ排除できる」


ロードの氷魔法は、海の上でも問題なく使えるらしい。火や雷は、船に損害を出すので緊急時意外使っちゃダメだって聞いた。

「頼りにしてる」


ロードが嬉しそうに、セリを抱き上げる。短いが、外の空気を吸う時間は終わりを迎えるようだ。


変わり映えしない景色は、船酔いに誘いそうだ。


セリは気づいている。船員も騎士らしき人も寄って来ない。


そう、命令されているのだと分かった。組織だっているとこういった指示もあるんだとか。あの迎えに来たという貴人とも顔を合わせていない。


カナンとシュルトが部屋に居ないことが多いため、”壁“になって防いでくれている。その恩恵に預かっているのだから、素直に言うことを聞く心算だった。


それぞれ普段通りに過ごしている中、セリは退屈していた。移動が全くない時間がとても窮屈に感じる。


そんな中で少しの楽しみは、グスタフが動いているか?見るのがちょっと楽しみである。集中するとずっと同じポーズなため、さっき見た時とどう違うか分かると、面白い。


それくらいセリは、暇をしているが、ロード背後にべったり陣取り機嫌はそこまで悪くない。


そろそろキースと、お茶の時間だ。きっちり同時刻に過ごしているのも船の生活に必要だそうだが手持ち無沙汰に慣れないセリだった。



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