⑤ 迎え

セリがドワーフの仕事を見ていると

慌しくなる


「船が来た」


危険はないようだが、迎え入れるために動き出す。


岩の扉を開くには、魔力の機構が起動させる方法。そしてもう一つ、人力で動かす必要があった。


かなり重い扉も、人数が揃っていれば動くものだ。掛け声と共に、兵士にドワーフ達とが揃って扉が開く。


セリが見たのは、ツヤっとしてそうな鱗の2頭が船を曳いて洞窟に入ってくる姿だった。



「海竜に曳かせた船か」

「お偉いさんが乗ってるだろうな」


断定した言い方は船のシンプルな造りの事より、海竜と呼ばれた存在が理由だろうか。


ツヤっと滑らかな肌、顔の凹凸も少なく穏やかそうな雰囲気だ。キラキラした青色が綺麗。


今は止まって、2頭が寄り添っている。


近くに来ても、のんびりしていたので見られるのに慣れているのか。


船はそれほど大きくないと思ったが、海を渡ってきたのなら何か仕掛けがあるのだろう。


海は、魔物の巣窟だ。

大型に魔物が忍び寄り、海中に引きずり込むのだとか。


そのため撃退できる武力か、工夫が必要だと聞いた覚えがある。


ただ、海で釣りはロマンらしい。

水魔法が得意なヒト達が海の魔物を狩っているらしい。セリもやってみたかった。


ロードとカナン、シュルトにも止められている。気軽に行けないようだが、海で採取依頼を受けてみたい。


砂浜で貝を狙うつもりだ。

それでも、魔魚と呼ばれる攻撃性のあづ魚が跳んでくることはあるらしい。


海の街で出される依頼、聞いた話を思い起こしていると船から人が降りてきた。この場合、挨拶するべきか?そうならどうするのが良いのか思いつかない。


ロードの羽織りに隠される。カナンも少し後ろにいるのは護衛騎士のモードに変わったからか。


セリは抵抗せず、おとなしくする選択をした。


「これは竜人殿か。その子が番かい?」


思ったより若い相手は、話し方で貴族だと思った。見れないので他には服装がキラッとふわっとしてたのを一瞬、見た。


「あの海竜の夫婦を充分、労ってやってくれたまえ。」


去った気配でロードの服から出て、海竜に近寄った。


ウォーとちょっと高い声を出し、のそりと身じろぎする。


その背中に乗ってみたいと思いながら、どう仲良くなるか2頭の様子を眺めているセリだった。

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