③ 呼び出し

セリが森の巡回から、カナンとロードと共に帰ってきた。


部屋に戻り、洞窟風呂へ向かうところで。

キースがソファに座り手紙を見ているのに声をかける。


「お風呂行ってくるー」

「いってらっしゃい」


視線を外さず、見ている手紙に内容は悪い報せだろうか?

聞き出すことなく、その時はそれで終わった。


その内容を聞くことになったには、夕食ご。


「戻って来いってさ。」


呼び出し、キースへの召喚令状。


すごく豪華な封筒に、その一文だけが書いてあったようには思えないけど。


上質な紙、金が使われた蔦模様。封蝋には偉い人が使う印章があった。

セリでも何か重要な内容と察したが、キースの言いようは軽い。


「どう帰ろうかなー?」


ちょっと他人ごと風。キースなら転移魔法ですぐ帰れそうだけど、ちょっと帰りたくないのかなと察する。


それが面倒臭いという理由だが、顔に出さないくらはできるキースだ。

実際、地道に帰る方を選ぼうと思っている。


「川か。」


カナンの言う通り、まだ凍る部分もあるが船と馬車で行くのが通常のルートだろう。


「馬車にどれだけ乗ると思うの?」


嫌そうな表情にしたキースからして、なかなか大変な距離と日にちがかかるのだろう。


「ジャア、極北の城から転移?」


シュルトの案では城にある転移陣が利用できれば、早いルートだろう。使えなければ、馬車だ。


「一般的な馬車よりのんびり帰れるワヨ。」


特注の広く頑強な馬車が、今頃なら空いているだろうと計算していた。

それでも頷かないキースに何か考えがあるのか?


「どう動くの?」


「待つよ?海から迎えを寄越すって話が出たって。」


シュルトが聞けば、猶予があったという態度でキースが答える。


「全員の帰還命令か?」

「そ、ロードもセリもね。」


ロードの核心に、すんなりキースも答える。


「オレは当然いくけど、セリちゃんが入国するのに用意が要るんじゃないかい?」


「僕がいれば大体顔パスだけどね?」


上の方の人は特権が使える。セリは確信した。

「ワタシも行けるなら、ついていくワ。」


商人であるシュルトも手続きがパスできるなら、同じ行程で行ける。

セリの環境が心配であるので、ついて行きたい気持ちもある。


「グスタフはどうするかな?」


今もいないのは、ドワーフの職人と共に『機構のエネルギーが復旧していない状態』を解決するため日夜検討しているらしい。


夕食には部屋に戻り、また出ていく姿を見ていた。セリが寝ている頃に戻っているのか?徹夜続きなのかはわからない。


この生活も終わりかなと次に進む気持ちは、充填できていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る