14-夜の過ごし方

「ロードは、どこか行きたいところある?」


セリはロードの部屋で、部屋の主に訊ねる。

食事の後は湯に浸かり、2階にあるロードの部屋で大半を過ごしている。


セリの部屋は、『衣裳室』と名前を変えても良いほど着替えに行くのみだ。

ロードの希望でセリは部屋に滞在しているのだが快適なので嫌ではない。


一緒に寝る前の楽しみに氷菓子を準備する。ロードが氷の魔法で作りセリが喜んでいる品だ。


砂糖に珍しい果物をふんだんに使われ、珍しい氷の魔法が精緻に使われている。

“値段をつければ、とっても高価”

それも、番であるセリを喜ばせるためだけしかない。少しはメンバーにも食べさせていた。


「ベリーのやつで〜」

「シンプルなのが好みネ」

カナンは良く食べていて、シュルトは店の人へのお土産に持ち帰っている。たまに食べる程度なのはキースとグスタフだが。


「紅茶味かな?」

「チョコだな。」


狙っている味があるらしい。


セリは色んな味を楽しめて、風呂上がりに食べていた。種類も増えてきている。

最初は果物を凍らせるというシンプルな物だった。そこからセリの探究心と他のメンバーの知識から、かなりこだわった氷菓子ができている。少しずつになったのを層にしてアイスケーキは、特別だ。


材料の調達はシュルトで、珍しい果物が手に入ったら“できた物を半分もらう”事で成り立っていた。


量を作れてもセリが食べ過ぎる事はない。慎重に食べているのは性格からか。


「チマチマ食べる姿が可愛い。」

ロードの言葉である。


「粒にした木の実を入れると、ついカリカリと食べたくなる。」

セリは、ロードに分けてあげながらのんびりした夜を過ごしていた。


そして冒頭の質問に戻る。


「セリと居られるなら良い」


これは、学園で一緒に居られないので嫌だと言う意味が含まれているだろうか?


学園に関わりない者を入れない閉鎖的、というより警護が厳しい場所。

何か。王族も通う場所らしい。


セリの興味は書物だが、この拠点の本で今は十分だった。

今日もキースが新しい物を購入している。


とても良い環境だとセリは思い返す。


そろそろまた寒くなってくるらしい。


雪の見えない景色になるのを想像つかないセリは、北の砦に居た頃を思い出すくらいには。


遠くなりつつある記憶で、それほど重要でもなかった。

ただ、これから何処に行きたいかを考え始めた時に思い当たっただけで。


セリは、『竜の翼』に居られる自身を疑う事はなかった。それくらいには、楽しく確実に成長している時間があったのだ。


そして、何があっても続くとロードと眠るいつもの夜を得たのだった。

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