13-拠点の夕食

拠点に帰って来た3人は、それぞれの部屋に戻っていった。


キースは部屋で本を読み始め、セリは着替えるために自室に行った。ロードが部屋に着いて来たが、戻す。


そんなひと場面があったものの、日常の生活だ。


夕食の準備に食堂へ行けば、シュルトが食糧品の整理が終わった様子で帳面を見ていた。


用意を手伝っていると、日は暮れていた。



夕食の時間は、グスタフは部屋で食べるらしい。セリと後ろを着いて回っていたロード。カナンとキースがそれぞれの自室から出てきた。


「今日はシチューね。」


ブラウンシチューのコクのある香り、お腹空いた。

新鮮な野菜の盛られた器、炙られたパンが置かれる。


飲み物は果実水。氷で冷やされて少しのベリーの味がした。

「美味しい」

氷を作ったロードに報告すると、満足そうな雰囲気になった。


あまり表情が動かないロードだが、発せられる機嫌を読み取れるようになっている。

喜ぶのでセリは言葉で伝えるようにしている。


べったりされるのは、結構慣れているためセリはロードと馴染んでいる。

しかし、まだ子供のお守り感覚の距離とも言える。


男女のとは到底思えないが焦る事でもない。どちらかと言うと、早過ぎるのを止めるために保護者がいるのだ。


「パンとってぇー」

「バターはいるカシラ?」


のんびり、カナンもシュルトも食事を進めていた。



「そろそろどこかに、行こうかな?」


キースは、王都の拠点から出る提案をしてきた。今日の事が関係あるだろうか。セリが視線で投げかけると話が続く。


「騒がしいのが寄ってくるかなって?」


面会の要望書が増えているらしいとは察していた。拠点に届く豪華な装飾の手紙。カナンが危険がないか確かめてから渡すそれ。


(大変だなあ。)

手紙がくる相手の少ないセリはそう思った。


(呪いとかの仕掛け)


セリに届くものに、そんな豪華な細工はない。高価であり、そんな思い入れも向けられる機会などない。


まだ交友関係が少ない上に、手紙をやり取りする相手がいないともいう。

居ても、ロードが阻止するか気がする。



グスタフは学園での講師、シュルトは王都の店での仕事に出掛ける事が多い。


ロードとカナンはたまに冒険者ギルドで仕事をしている。そういえば交友関係は謎だ。


カナンは仕事柄、謎の交友関係くらいあると予想している。ロードに関して言えば、手紙を書くイメージがセリには湧かなかった。


セリが知っている場所といえば、育った教会と『極北の城』、『北の砦』と言われる場所。


そこからこの獣人の国に来た経緯をセリは思い返した。

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