11-ケーキ
購入する魔術書を拠点へ送る話を終え、ケーキを食べに店に行った。
ドレスほどには動き難くは、ない。
馬車から降りるときに手を取ってもらい下りた。
レディな気分というヤツか。以前に少し受けた淑女教育が活かせると思う。
さっさと下りたキースから、個室に案内される。
外が見えるものの、人が近くに来るようにはなっていない。
ここの料理はランチもディナーも美味しいが、気に入っているのはスイーツだった。
“妖精の囁き”と呼ばれる現象から、異なる世界の知識を得られることを言う。料理とくに甘い物には、よくある現象だそうだ。
器に、鮮やかなフルーツソースで彩りを添える。その真ん中に
上品なケーキ。5層の中には何が入っているのか。
食べて見frば、答えがわかる。
キースは優雅に、切り分けたひと口を食べる。セリは少し緊張してひと口を持ち上げる。
口に入れた瞬間の表情を、ロードが見逃さない。
感じる甘さと柔らかい感触の他、何を見つけたのだろうか。
セリが好む食感の良い木の実の音ではない。意外な味の物だろうか?確かめるように咀嚼している。
楽しいような複雑な感情をのぞかせ、喜びにまで至る。
今回のケーキは、セリの好みに合ったようだ。
ロードが同じ物を食べると、果物の酸味が効いていた。南の果物の果汁だろうか?果肉かもしれない。
馴染みのないものだが、甘いケーキをキリっとさせる。
期待通りの出来栄えだった。
紅茶のお代わりが運ばれてきた。キース向けに、あっつい紅茶を出してくれる。
セリとロードは断るのがいつもの通り。
曲が流れて
セリとロードの会話を聞くともなしに、流している。思考に沈み、ボーっとできる刻は貴重だ。
それに、ここにおいて2人の邪魔者であるのはキースだった。
そうわかっていても、ケーキを逃す手はない。
野暮な人間に声をかけられる事もなく、誰彼との関係を穿った見方をされる事はない。
婚約者候補か、仕事先に何かあるのか。面倒な人間に追い回されるのは不愉快だし面倒だ。
それを回避でき、構われない時間は心地よいと認めよう。
ケーキのお代わりも完食して、まあまあ熱い紅茶でさっぱりした。急遽、始まったらしい音楽隊は、まだ解散しないらしく再び曲が流れる。
有名な曲か、何処で聞いた事があるとロードが話す。セリが他国の話に耳を傾ける。
そろそろ、何処かの国に出掛けるのも良いかもしれない。
(この国から出る時、一緒に着いていけば色々楽だ。)
頭の中で今受け持っている仕事の算段をつけ、キースは紅茶を飲んだのだった。
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