9-食後のお茶
珍しく食堂の昼食では。『竜の翼』もメンバー全員が揃った。
「もうオレ、用ない?」
「ソウネ、荷物は良いカラ何か採取してきたの?」
「薬草とちょっと果物。」
カナンとシュルトの話に、セリが補足を付ける。
「後で食べる!」
少ししか採れなかった果物は、味見用でセリのおやつになる。
食糧の下拵えもすぐにしなければならない物もない。
「じゃあ、僕がセリを借りようかな?」
キースが優雅に食事を終わり、そんな事を言った。
セリができるのはせいぜい、お茶のお供くらいなのだが。
ある組織の上位に居るらしいキースを手伝えるとは思えないし、仕事もないだろう。話し相手にもなるかどうか。
(気晴らしになっているなら、良いのだけど)
内心が見えないキースが微笑む。セリは、熱いお茶のお代わりをキースのカップに注いだ。
デザートまで食べ終えたセリはロードの膝上で、食後のお茶を飲む。
ここじゃないと、ロードが落ち着かないらしい。
この姿勢も慣れたもので、誰も何も言ってこない。ふぅと適温のお茶を味わえば満足感があった。
「セリちゃーん、どっか出掛けるぅ?」
カナンの問いに、セリは考える。馬車で出れば街まで直ぐだ。それも良いかもしれないけど、何か用事がある?
グスタフを見たが、さっき手伝いは終わった。シュルトを見ると視線が合う。
ウーンと考える仕草も綺麗だが、特に頼み事はなかったらしい。
ではキースか。
「甘い物、食べたいな?」
果物というわけじゃないだろう。なら、街でケーキを買うか一緒に出掛ける気はあるのか?
もう少し話しながら、決める事にした。
「買い物はないし、商業ギルドに行くにも採取量はなかったから別になあ。」
カナンも用事を考え始める。
冒険者ギルドも用はないのだが、空いている時間帯の筈だ。キースと行く所でもない。
変な人達に寄って集られる。
それを散らすのに炎を出すキースを止めるのは、セリの役目になりつつある。水の魔法は、氷は後片付けが楽なのだそうだ。
シュルトが買い物はしてきたばかりで、食糧も充実している。『甘い物を食べて帰る』しか、案がなかった。
「どこに行こうか?」
「セリの好きに」
ロードも特に用はないのか。甘い物も食べるが、率先して決めはしない。品質には厳しいけど。セリに、べったりとくっついた。
ロードは冒険者ギルドに出掛けていたが、再び街に出るのに否はない様子。
セリといられる事が大事だった。
キースも付くと、個室の案内をされて高級なケーキが食べられる。
持ち帰りもできるか。どこのケーキを食べたいかはキースと協議する事になったのだった。
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