7-散歩
昨日のうちに素材の処理を終えたセリは、早朝に出掛けていた。
使った素材の補填を兼ねて、森へ採取に来ている。
気持ちは散歩のが強いが、魔物とも出会ってしまう森の中に独りでは来ない。
散歩にはカナンも一緒だった。
「ウォン!」
「そろそろ、あっちに行く?」
狼姿で、あっちに行こうと誘っている。森に慣れている2人は、さっさと走り抜けていく。採取場所を探しながら、気負うことなく森の深くまで入っていた。
竜の翼の拠点に接している森。建物の近くには大きな魔物が出ることは無いが、小型の魔物が魔物除けを通り抜けてくる事はある。それに耐えられない者がここら辺に住まっていないのだが。
森の縁と、今いる奥深い場所では違う。魔物同士の衝突、食うか食われるかの緊張。そこから外れているセリとかカナンは、顔見知りと言える魔物を見つけた。
「あの狼、今日も元気そうだねえ」
群れのリーダーらしい白い狼がこちらを認識していた。
ここら辺を縄張りにしている、群だが敵対関係ではない。散歩中によく見かけると少し眺めて立ち去っていた。
「カナンが気になるのかな?」
大きな狼は、興味がない様子なので魔法で水を出して飲ませた。
喉を潤し、まだ走る。
日が昇れば、とても熱いがまだ影が多く走れば涼しさを感じる。
風魔法によって駆け抜け、疾走感を堪能してもセリの横に狼は付き従った。なかなか引き離せないのがちょっと悔しい。
オレが遅れをとるわけないじゃん?という態度を汲み取り、余計に悔しかったりする。
ほどほどに競争心を煽られながら、体力をつけていく。
唯一ロードを拠点に置いての散歩は、良い鍛錬になっていた。ロードへのお土産も探しつつ、すっかり日が昇ってから拠点に戻ってきた。
風魔法で無理矢理スピードを出すのは、足に負担が強い。
「いっぱい走ったねー。」
狼姿のカナンを可愛がるように撫で、散歩に付き合ってくれた感謝を伝える。
採取したものを小屋へ納めに行くセリと分かれ、自室に帰って行った。
昼頃には、人の姿で現れるだろう。
それまでは、狼のフリをする。
それがロードと突き詰めた妥協点だ。そのロードはまだ眠りからしっかりさめてはいないだろう。それでも、番が近くにいいない事で不機嫌だろう事は想像に難くない。
その不機嫌を直せるのは、散歩が終わって晴れやかなセリだけだった。
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