6-薬師見習い

「カナーン、ちょっと手伝っテエ」


カナンを呼ぶ声は玄関からで、ロードに遅れて戻ってきたらしい商人のものだった。


セリは続いて立とうと思ったら、ロードの腕に阻まれたけど。一緒に誘うことでカナンの後を追えた。

「お帰り、シュルト。」

「ただいま、セリ。コレ、来てたワヨ。」


持ち帰った商品を確認して、各部屋に置きに行っているところだった。

カナンが軽々持っているが、中身はずっしり重い食料品だー


セリの荷物は、調合に使う取り寄せてもらった物だ。

薬師見習いとして。シュルトに精製した商品を売りに出してもらっている。


“基準を満たした物ダケ、ネ。”


この基準には含みがある。基準を大幅に越してしまった物は売れない。セリの作る物には、そういった物ができる事もある。


妖精の悪戯と言われる現象。

見習いでも生産した物が希少価値になる。本当に妖精が手を貸している場合もあるが、まぐれでできる事も言う。


セリの場合は、頻度が高いので妖精が関わっているのだろうと判断された。

「好かれる性質なのだろう。」と専門家の言葉も貰った。

魔力や使う素材によって差異ができるが、『それ以上に異常な効能』が特徴だ。


そうなると、売り物としては難しい。認定されたレシピを使って作り出される物でなければ見習いは売るのは難しい。


薬師としてなら、アレンジや特殊な効能を編み出す事もあるだろうが商品として出すなら登録が必要だ。


たまになら良いが、『同じ材料で規定の効果を得られる』物が商品になる。


「特殊な物を混ぜると、出所を探ろうとする。ヤなのを釣ると面倒なのヨネ。」


薬師見習いのセリには、まだ作れない方が良い品は個人で使っていた。

『竜の翼』でも購入して使っている。

「単にジュースかと思って飲んだら回復薬でびっくりした」と言うほど、飲みやすいのは好評だ。



セリが料理や調合、アクセサリー作りまでするが、定期的にとんでもない物ができる。搾取される可能性も出るが守りはバッチリだ。


「取り扱い注意な品でも、扱い方に注意ができればイイヨ。」

お世話になっている先への贈り物に、信用のある筋に売り渡すのもシュルトの人脈と腕だった。


のびのびと腕を磨いているセリだが、ちょっと騒動が知らないところで起こっている。誰かが捕まったり、忠告を受ける切っ掛けになっても。


セリに害がある事は、無い。


商人が信用を失墜させて、潰されている。

警告が出されても、裏の依頼を出して探っていたとしても。


その上、悪いことを企んだ組織が潰された話が流れても。


セリは平穏に暮らしている。

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