王都ギルドの新人

1-ギルド長室

「騒がせてくれたようだな?」


3人が案内された先で、強面の男がそう言った。王都のギルド長だけあって、癖が強そうだ。それに、怯みはしない。


ただ、その視線の先みいるセリは不服を体現していた。

“今日のミッションは、ギルドカードを手に入れる事だったのに。”


既に商業ギルドのカードを持ち、依頼もこなしていたセリなら発行は簡単に行われる筈だった。


もっと前でも手に入れることはできたが、それをしなかった理由は今はどうでも良い。


結局、ひとりで完遂が出来なかった事にセリは、不貞腐れている。自信の考えが子供じみているのは分かる。それを隠そうとしなかった。


まあ、子供の不機嫌くらいでビクともしないギルド長ではあるが、さりげなく両側の2人の警戒に忙しい。


(竜人に狼獣人だと?厄介な種族、ワンツーじゃないか。)


そんな内心を隠そうともしない。図太くなければ、この王都で海千山千の相手はできない。


「竜人の関係者、か。」


今回はこの少女。フードを取れば少女の面影が残る容姿だが、これといって目立つ特徴もなかたった。


魔法使い程度の魔力、細身ですらっとした体つきは強者には見えない。

だが、後ろの2人が執着しているなら別だ。


「冒険者ギルドの方針だが、番である事は隠す。」


竜人がではなく、周囲つまり自分達のためである。

“トラブルの解決は破壊”


竜人の番が害された、と更地になったなど。ままある話だ。

厄災扱い。被害者であり、加害者になりえる番の女は庇護対象というより危険物だ。


傷がつこうものなら、竜人が暴れる。ちなみに竜人は男だけの種族だ。女は多種族。魔力、パワーを兼ね備えた最強の狩人。


番を追い求める、竜の子孫達。武力で対抗などできない。


(その最強の種族のお目つけ役が、狼獣人だと?)


腕力ではなく、抑止力になるのか疑問だ。あの狼獣人なのだから。珍しく大人しい様子に見せているタイプだが…一緒にしとくだけ、危ないだろう。


問題は起こしていないものの、危険に見える。それだけ、狼獣人の問題は根深い。この男がそうならないとは否定できないのだから。


いや。まずこの少女からだ。

「ギルドカードに記録される称号


翠色の玉(ぎょく)


竜人の番を示し、ギルド長以上しか閲覧できない。非公開の情報で、記録とさせてほしい。」


見られるのは、ギルド長権限を得た者達だけ。


“竜人の玉に危害を加えてはならない”

そう言うメッセージだ。俺は、知りたくない情報だが。


知らない方が、目も当てられない事になるのは分かりきっている。


危険な2人が、新人冒険者の保護者としているのに違和感が拭えない冒険者ギルド長だった。

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