第2話 保護者

「セリさんですね。後は魔力を登録完了してください。」


使った魔法は水。

給水魔法と侮られる属性は、建物内で使っても多少目溢しされる。


ちょっと後片付けをすれば済む話で、水に濡れた彼らがするだろう。


「まったく。新人にちょっかいかけなければ気が済まないのだから!」


受付の女性が、怒ってくれるがどうって事ない。

「これくらいなら挨拶の範囲内だよ」


いっぱしの冒険者の口をきく。しかし、魔法使いとしてみれば2人の男が反応できないほどの速さで水を被っている。


有望な新人が入ったとなれば、縁を作っておくべきか。


水魔法と侮る冒険者、その有用性は水の補給に相手の注意を引くのにも使える。勧誘に動こうとする者達の意識を引く者がいた。


「オレの総取りだな?」


獣人の冒険者がそう言う。この冒険者ギルドでたまに見かける男だ。

「ああ、まあそうだな。」


新人が冒険者登録できると賭けたのは、この男だけ。なかなかの賭け金が男の懐へ入る事になる。


「運が良かったな〜、ちょっ奢ってくれないか?」


「運じゃないんだなあ、これが。」含み笑いをする。その様子に、不思議がる酒呑み達。


しかし、何か仕込んだ訳ではないだろうと興味も薄くなる。


「あんた犬の獣人?知り合いに居たっけなー?」


男は、さり気なく受付から見えない位置に移動する。


新人冒険者は、冒険者ギルドの説明を受けている。


「あー!アンタ狼獣人だろ?!」


そう叫ぶ声がうるさく、周囲にも聞こえた。


それがどうしたと思う者、うげっと距離を取ろうとする者。


冒険者の間で、狼の獣人というの厄介だという認識が強かった。

理由は、色々やらかして行く上に腕も立つから面倒だ。


狼が出たと騒ぐ男は、何かあったのだろう。

犬獣人と間違えられるのもわかる。良く居るからな。


(目立ちたくなかったんだが)

そう思って、動けずにいる男に近づいたのは。


「カナン、ついて来てたの?」


無事冒険者登録した、セリだった。


知り合いか?と騒ぐ冒険者達をすり抜けて話している。

隠れて様子を見る予定だったがバレてしまった。


まあ、しょうがない。

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