七日目
「えっ、うそ、もう11時⁉」
長い夢から覚めた私は、目覚まし時計を強く握り、唖然としていた。
てか……目覚まし、鳴らなかったよね?
「なんで? 昨日まで普通に鳴ってたのに」
完全なる朝寝坊だ。昨日夜更かししたのがいけなかったかな。
今から日帰り旅行に行ったって、中途半端になって楽しめない。
「今日は家でのんびりしてようかなぁ……」
一日くらいそういう日があったって良いよね。
その後、朝ご飯とも昼ご飯ともつかない食事をとり、書斎にこもっていた。
もう少し休憩したら、電池だけ買ってこようかな……
「……」
おかしい。急激に眠くなってきた。
今日はたっぷり寝てたはずなのに。
突如、視界がぐらつく。
あ、れ……私、今……何してる……?
「!」
私は浮いていた。
青くて澄み切った、壮大な景色。空を飛ぶって、こんな感じなのかな。
きれい……写真に撮っておきたい。
いつの間にか首から下げていたカメラへと、自然と手が伸びる。
シャッター音が大きく響いた。
「……え?」
その途端、私の中から姿を消していた記憶たちが、甦ってくる。
すべてが一つになっていく。
「……!」
私は色んな所へ旅をする。
どの場所へ行っても、夜には必ず笑顔になって家へと戻る。
ああ、そうだ。あの人は私の診断をしてくれたお医者さんだ……どうしてあんなことしちゃったんだろう。
目覚まし時計が止まる前ぶれ……こんなにあったのに……
そうだよ……! 私は……あの病気にかかった、ただ一人の人間だ。
これは走馬灯だろうか……いや、きっと違う。
不意に空を撮りたくなった理由が分かったかもしれない。
スカイブルーフィルムの最後の一コマ。
私の最後の行き先は、果てしなく続く青い空だったんだ。
とても短い人生だった。
でも、つまらないなんてことは全くなかった。楽しかったよ。
特に、最後の七日間はね。
スカイブルーフィルム ぶれいず。 @f2ov
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