第9話 猿山

 うちの学校は私立でもないのに携帯電話の持ち込みが許されている。

 朝、登校する際にニュース記事を読みながら歩いていた。

 今日は平林が退院したらしいが、どうせあいつらからなんらかの嫌がらせもといイジメを受けるのだろう。

 

 隣のクラスの前を通るとき、前に平林の姿が見えた。

 平林が扉を開けると、すぐに馬鹿どもの声が響いた。

『退院おめでとー‼︎』

 叫んだ馬鹿どもは平林に向かってバケツに入った水をぶちまけた。

 僕はその光景を見ているだけだった。

 僕の横には、いつのまにか渡辺が立っていた。

「西船橋、俺の荷物持っといて」

「えっ⁉︎ちょ…喧嘩すんの⁉︎」

 

 全身を濡らした平林を見てあざ笑う手遅れになった人間は言葉で説得することは出来ない。

 なら簡単。殴ればいい。殺せばいい。

「なにしてんのお前ら」

 手遅れの人間内一人の木智山が口を開く。

「おぉー、渡辺くんじゃん。一緒にやる?」

 木智山は平林の顔面を踏みつける。

「お前らみてえな猿と同価値に落ちるわけなくね?」

 渡辺は木智山の顔面を殴りつける。

 その一発で木智山は右の鼻から血を流した。

「は?ふざけんなよゴミクズが…」

 言い終わる前に渡辺の拳がもう一度顔面を殴る。

「別に正義があーだこーだ言うつもりはねえけどさぁ、お前らみてるとなんか恥ずかしくなるんだわ」

 殴られ続ける木智山は声を出す隙すら与えられないまま、殴られ続けその場に倒れ込んだ。

 残りの三人を睨みつけ、木智山の顎を蹴り飛ばす渡辺を見て、クラス内の誰もが悪魔とその姿を一致させた。

 

 数日後、木智山は傷を全て直した状態で登校してきたが、その日渡辺は学校側からの呼び出しで教室に居なかった。

 まぁこの後木智山が反省したかどうかは想像に任せるとしよう。

 その日、クラスのグループメッセージにびしょ濡れになった平林の写真が大量に送られてきた。

 

 送った人物は、永井望だった。

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