第8話 ビリヤード

  『はよ回せよー』 と池上先生が言う中、僕の手に回ってきたのは校外学習のお知らせ。 さっさと班作って後で感想書かないといけないのは重々承知。 はぁ…面倒臭い。


 ───駅のホームには約300人の人集り、ウチの学校は一学年でも結構人数食うのだが、一際目立つのが死組十六番の小西伸太郎こにししんたろう。デカい、ひょろっとデカい、バスケ部の彼は1年からインターハイ出場の有望部員。

  だが、先日の平林の件の同伴者でもある。 渡辺はこいつにも少し怒りの目を向けている。 快速列車が来るアナウンスが流れるが、一部の人間がソワソワするだけで乗車するのはこれじゃない。

  ふと彼のほうを見ると誰かが彼に手を伸ばそうとしている。彼に声を掛けようとした瞬間、彼の身体は数センチ浮き、線路に落ちた。

 ヤバい──刹那、車両緊急停止ボタン近辺に居た男子生徒がボタンを押し、甲高い音がホームに響き渡った。

  列車は止まった、が、後方車両が緊急停止により押し潰されて大炎上した。

  彼は助かったが、約二十人余りが焼死、十二人が重軽傷という大惨事が起きた。 ──彼を突き飛ばした伊野尾継美いのおつぐみは今でも僕の脳裏に焼き付いている。

 

 ────不可解とは思わないだろうか?普通緊急停止ボタンを普通に押しても、準急列車などでは無い限り、各駅停車ならホームに突っ込まずにスピードを落としているはずだ。

 なのに何故、後方車両が押し潰されたのか?

 それは勿論、運転手又は車掌に負がある──。

 やっぱり…この世界徐々に狂ってきてるな。

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