第10話 ノンフィクションモデル
出席番号二十一番、
彼女は特に周りに影響を及ぼすことは無く、ただごく普通の人間。
仲のいい出席番号三十番、
そんな二人の今日午後一時のやり取りを聞いていただこう。
「ねー、美嘉ってさ、なんで漫画家なんて目指してんの?あんなの職が安定しないってせんせー言ってたじゃん」
「別に、私がなりたいからなりたいんだけど。」
田中は何かを思いついたかのように手を叩いた。
「じゃあさ、私モデルにして描いてよ。どーせ明日土曜日だしいいでしょ?」
原山は「いいの?」と聞くが、田中は頷くだけだった。
「おー、いい資料がゲット出来たよ。ありがと真梨!」
原稿の散らばった部屋の中、ノリノリでポーズを決める田中は笑顔で踊り始めた。
「ねー、何枚くらい描けた?」
田中は原山に問う。
「あとねー、最後の二ページだけ描けてないんだけど、そこのモデルもやって貰っていいかな?」
田中は立ち上がり、色々なポーズを決める。
「どんな感じのが足りないの?これ?それとも…」
「んー、えっとね、『コレ』かな」
月曜日に学校を休んだ田中についてクラスメートは原山に問いかけた。
「真梨ってさ、土曜日に美嘉と一緒に遊んでたでしょ?何か知らないの?」
原山は笑顔で答えた。
「えっとね…ふふ…真梨はね。『可愛いモデルさん』になったんだよ」
数月後に原山の描いた漫画は週刊誌で賞を取った。
僕はこの週刊誌を毎週買っている為、賞を取った漫画を当然ながら読んだわけだ。
だからこそ、この漫画の最後の見開きに載っていたのが血を流し腹を裂いて倒れるヒロインだという事を知ることになる。
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