第13話 ヤングケアラーの子にかけるべき、言葉は…?「がんばって…という言い方は、弱い立場の人にたいして、無責任」

 「君は、ヤングケアラーなんだよね?」

 「…」

 「家族って…、誰の面倒を、見ているんだい?」

 「母です」

 「うん。そうか…」

 「…」

 「私にも、娘が、1人いました。私は、10年ほど前から、外国にいってしまいましたがね。娘と妻は、私のことを、恨んでいるでしょう」

 「たしかに、似てる…」

 「私は、外国の大学に入り直して、医師の免許をとりました」

 「そうですか…」

 「弱い立場の人を、助けたかったから…」

 「なるほど」

 「こんな私を、妻と娘は、許してくれるだろうか…?」

 「許してくれますよ。きっと…」

 「そう、信じましょう」

 「ですね!」

 「生活費とか…。金銭的に、つらいんじゃないですか?」

 「平気です」

 「しかし…」

 「…何とか、やっていくしか、ないんですよね」

 「ヤングケアラーの子は、責任感が、強いんだな…」

 「…」

 「念のため、CTを撮ろうか」

 「はい」

 「やはり、裁判を、起こしてみましょう」

 「…」

 医師は、少しでも、金銭的な救いになれば良いとの思いで、裁判を起こしてみたらどうかと、アドバイスしていた。

 「この裁判では、誰かを傷付けたりすることが目的では、ありません」

 「…」

 「ヤングケアラーのつらさを、少しでも、皆にわかってもらえるよう動くことも必要では、ないでしょうか?」

 「…」

 「社会全体に、働きかけてみることには、意義があります」

 「…」

 「同じくヤングケラーとして苦しむ仲間を救うことにも、つなげられるのではないでしょうか?」

 「…」

 「あなたは、1人では、ないのです」

 「はい」

 「裁判に勝てば、慰謝料を、得られるはずです」

 「慰謝料…」

 一呼吸、入った。

 「これで、誰かを助けられるのではないかと思います!」

 「誰かを、助ける…」

 「がんばって…とまでは、言えませんね」

 「…」

 「そういう言い方は、弱い立場の人にたいして、無責任ですからね」

 「…」

 「いつでも、ここにきてください」

 「はい、先生…」





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