第12話 ヤングケアラーの、心の支えって、何なんだろう?その子が、どれほど、その医師を心の支えに感じていたか。まるで、親子のように。

 暗がりの通路の中を、走った。

 「…何、ここ?給食センターじゃ、なかったの?」

 見知らぬ天井の、下。

 守衛室のような部屋が、見えた。

 電話機も、見えた。

 「これ…、固定電話だ!教科書で、見たことがあるわ!」

 が、電話は、かけられず。

 ケーブルが、切られていたからだ。

 「どうして?」

 鳴らない電話に別れを告げて、外に、走り出た。

 「逃げなきゃ、ダメだ、逃げなきゃ、ダメだ…」

 木々の枝だが、ビシバシと、身体を叩いてきた。

 謎の通路は、藪の中を通っていたらしい。

 「あと、少し…!」

 近くの家に、転がり込んだ。

 「君?どうしたんだね?」

 救急車を、呼んでもらえた。

 そのまま、入院。

 「脱水症状が、見られますね…」

 「そうですか」

 「この子は、どこの子ですか?」

 「それが…、良く、わからないのですよ」

 「困りましたね。とりあえず、医学的に助けはしましたが…あ!」

 医師が、彼女の服のポケットから、生徒専用のパスカードが頭を出していたのに、気が付いた。

 「これは…。パソコンは、あるかね?」

 「はい、先生」

 看護師が、すぐに、検索画面を開いた。

 「これは…!」

 「先生?この子の通う学校が、わかったのですか?」

 「たぶん」

 彼女は、助かった。

 「君は、ちゃんと、眠れているのかい?」

 「はい、先生」

 カルテの情報が、埋められていく…。

 医師と、相談。

 相談相手は、弁護士でも良かったとはいうものの、その子は、どうしても、医師を頼りたかった。

 その子が、どれほど、その医師を心の支えに感じていたかが、わかる。まるで、親子のよう。

 警察には、相談にいかなかった。

 あの、謎の教職センターと、グルになっていたかもしれなかったから。どうせ、同じ、公務員だろうし。

 「裁判を、起こしてみましょう」

 「…え?訴えられるのですか?」

 「このケースなら、できます」

 「ストーカー行為に当たらなくても、ですか?」

 「ええ」

 医師は、優しく、語りかけた。






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