2話契約
フランの指示の元、歩夢は娯楽魔法の練習をしていた。
もし、出来なければこの世界ミレイヌでは生きていけないだろつ。
「魔法に必要なのはイメージじゃ。さっきステータスの魔法の項目に触れた時、頭に使い方が刷り込まれたはずじゃ」
(口調が元に戻ってる。あっちの方が可愛いのに)
歩夢は他の事を考えてるとフランから怒られた。
「聞いてるのか?歩夢よ」
「き、聞いてますよ。魔法に必要なのはイメージですよね」
「ふむ、そうじゃ。強力なるほどに魔力を消費するので気を付けるように」
(ふぅ~、危なかった)
歩夢は頭に強くイメージを持ち、娯楽というくらいだからまずは、とあるイメージを思いついたと思ったら成功していた。
「ふむ、ステータスとは違うの。これが娯楽魔法の一つなのだろうか」
ステータスとは違うウィンドウを凝視しているフランは考えこむ。
「ほれ、何かやってみよ。歩夢の魔法なのだからの」
出現したウィンドウに歩夢が触ってみると、歩夢の予想通りにこれは地球で言うところの通販サイトのページそのものである。
ウィンドウの上部に魔法名が書かれており、それは『
「そんで、何か分かったかの?」
「ああ、これは何処でも買い物が出来る魔法だ」
「なに~、それが娯楽というわけか!」
歩夢は故郷である地球を思いだしながら説明する。
「ああ、俺の故郷地球では、買い物にパーっとお金を使ってストレス発散する人もいるんだよ。まぁ~、人によって違うが娯楽だな」
「ん、人によっては違うとなると他のもあるのかの」
これだけで娯楽というには物足りないと歩夢は考え肯定する。
「試さないと何が出来るか分からないが、おそらくはあると思う」
歩夢が考えてると、何処からか『ぐぅ~』と可愛らしい音が鳴った。
「....」
鳴った方向を見てみると頬を紅くしたフランが抗議する。
「わ、妾ではないぞ」
『ぐぅ~』とまた鳴った。
「プッくっくくっ、何か言い訳は。プッくっくく」
口に手を当てて体をブルブルと震えてる歩夢にフランが怒るが恐くない。むしろ可愛い。これが魔王だとは信じられない。
「わ、笑うじゃない!そうじゃ妾じゃ」
歩夢の練習を手伝って、もう夕方近く日が隠れかけてる時間だ。
フランはそれに加え、朝から何も食べずに家出ならぬ城出をしたから、もう腹が減って鳴ってしまったのだ。
「んー、この渡されたカバンに何か入ってるかな?」
歩夢が城で渡されたカバンの中身を見ようとした瞬間、フランが止めた。
「待て、そのカバン見せてみよ」
歩夢からカバンを渡される前に奪いとった。
「フムフム、どうやらこのカバンに魔法が掛けられてるのじゃ。これは...探知系じゃな。放って置くと王都から追っ手があるやもしれぬ」
カバンを手に取っただけで魔法を見抜く。流石、魔法を極めたと言われる魔王様である。
「やはりか....あのヤツならやりかねない」
あの太りに太った王様の顔が頭に過った。
「カバンの魔法は解くことは出来るが、どうするのじゃ?もしくは跡形もなく燃やすかの?」
フランはフフフッとカバンを燃やしたがっている。
歩夢も流石にカバンに発信機みたいなのを付けられて、カチンときた。
「ああ、盛大に燃やしちゃってよ」
歩夢から了承を貰ったフランはニヤリと微笑んだ。
「そう来なくちゃの。歩夢、離れておれ。
『来たれよ!我が名に応じよ地獄の炎よ』
フランが魔法を詠唱すると掌から黒炎が出現しカバンが跡形もなく、煤や燃えカスも残さずに最初から存在しなかったかのように消滅した。
「おぉ~、凄いな。さすが異世界というかファンタジーというか」
「???後半は言葉の意味が理解出来なかったが、凄いじゃろう。ふっふふーん」
胸を張って威張るフラン
「あ、燃やしたことで、あっちにも気づかれたんじゃ...」
歩夢がフランの顔を見ると....「し、しまったー」と威張る格好で硬直している。
「フ、フラン、やってしまった物はしょうがない。今は隠れる場所を探さないと」
歩夢の言葉で我に帰るフラン。
「そ、そうじゃな。この先に誰も使ってない小屋があるはずじゃ。一先ずそこでどうじゃ」
コクンと頷き、そこへ急いだ。
歩夢とフランが急いで移動する一方、王都の城内一部では大騒ぎになっていた。
「どういことだ?何故探知の受信が途絶える!」
もし、盗まれたり、あの歩夢という者が死んだりしてもマジックアイテムであるカバンは本来なら傷一つ付かないのだ。そう、本来ならの話だが相手が悪かった。
魔王が燃やしたとは露知らず、大慌てで原因追求と歩夢の追跡の準備がなされていた。
場所は戻り、歩夢とフランは無人の小屋を見つけるとフランが何か魔法を唱えた。
「フラン、それは何の魔法?」
歩夢がフランに質問するとまたもや胸を張って自慢気に説明した。
「これはな。妾のオリジナル魔法の一つ、
歩夢は心の中ではそのまんまかよ!とツッコミたいが黙っておく。
「へぇ~、すごいな....」
わざと棒読みで言う。
「何かバカにされてるみたいじゃの」
「いえ、気のせいで・す・よ」
フランが歩夢のジーーーっと見つめて疑ってる。
「それよりも、お腹空きませんか?」
話題を反らそうとする。実際、お腹が空いているのだから話題は反らせるはずである。
「あ、そうじゃの。忘れておったわい」
思い出したと同時に『ぐぅ~』と可愛らしい腹の虫が鳴く。
ギィっとフランが歩夢に目線で笑うでないぞと睨んでくる。
「笑わないですよ。ただ....」
「ただ....なんなのじゃ?」
言うかどうか悩むと言うことにした。
「ただ、可愛らしいと思って」
「な、魔王の妾が可愛いじゃと。そ、そんなことい、言われてもちっともう、嬉しくないよ」
フランは歩夢に背を向けて、蹲うずくまる。いつもの口調と素の口調が混ざっている。
「おや、恥ずかしいんですか?」
「は、恥ずかしいわけなかろう」
「耳が真っ赤ですけど」
フランは話題を反らそうとする。
「それよりも、早く飯じゃ」
「はいはい、
ウィンドウにお金が吸い込まれ、選んだ商品が出現する。後お釣りもきちんと出てきた。
お釣りの割合からおよその金銭価値がわかった。
・金貨:一万円
・銀貨:千円
・銅貨:百円
・鉄貨:十円
これより上と下のお金の価値はおのずと解っていくだろう。
そして、あの王様から貰ったお金は袋に金貨20枚入っていたので、およそ20万円になる。2ヶ月は持ちそうな金額である。贅沢をしなければ....
買った物はコンビニやスーパーで売っている包装されたおにぎりである。二人合わせて四個程、さて魔王様のお口に合うかどうか。
「ほれ、食事にするぞ」
おにぎりをフランに渡した。食べ方が分からないフランに歩夢は自分が食べるのを見せて、見よう見真似で食べた。
おにぎりを包んでたビニールの包装は役目が終えたようにいつの間にか消えた。
「美味しいね。おにぎりっていうんだっけ?」
美味しそうに食べるフランの口元にご飯粒が付いている。
「ほら、口元に付いてるぞ」
「え、どこー。取って」
ため息を吐き、フランの口元に手を伸ばしご飯粒を取るとフランが指にカプっと口で咥えてきた。
甘噛みみたくモゴモゴとして舌も上手く使いチュルチュルと舐め、チュポンと指を解放した。
「ふふふっ、ドキドキした?ねー、ドキドキした?」
フランが腹の虫が鳴った時に笑ったお返しだろうか、フランはニヤニヤと笑ってる。
(や、やられたー。くっ、ニヤニヤと笑って....)
「あぁ~、ドキドキしたよ」
こういう時は否定すると余計に調子に乗られるので、素直に返事を返せばいい。
「そんな返され方されたら、妾の方が恥ずかしいではないか!」
歩夢の方が一枚上手のようだ。フランは悔しがって地団駄を踏んでいる。
「まぁまぁ、そんなに怒らないで、これあげるから」
フランが歩夢の掌を見ると白くて真ん丸の大福が乗っていた。
「た、食べ物に...釣られる...じゅるり、妾ではないわ」
言葉とは裏腹に歩夢の掌から大福をバッと手に取り、モグモグと食べている。
「うむ、気に入ったぞ。歩夢よ、お主妾と契約結ばぬか?」
「契約?」
理解出来ないと首を横に傾ける歩夢。
「うむ、妾は毎日退屈に過ごしてきた。そしたら、娯楽魔法を使う歩夢と出会った。そして、歩夢はこの世界で生きていくには、余りにも弱すぎる。
そこで、歩夢が妾に娯楽を、妾が歩夢を守るこういう契約じゃ」
歩夢の答えは決まってた。
「契約とやらはどうすればいい?」
「歩夢が妾の血を飲めばいいのじゃ」
歩夢はゴクンと唾を飲み、緊張している。
フランが右手の人差し指を軽く切り血がポタポタと滴り落ちる。
それを、歩夢は騎士のように片膝を着き、フランの右手を取り人差し指を口に咥えた。
口の中には血の味が広がった瞬間、歩夢の心臓がドクンと跳ね上がった。
「うっ、体が熱い」
余りの熱さで床に横たわり這いずり回り意識を手離した。
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