女魔王様による娯楽と冒険日記

鏡石錬

1章ムライア王国

1話女魔王と元勇者候補の出会い

あるところにお城、というか魔王城がありました。そこの魔王様は女性で魔族の中でも最強で魔法なら何でもあり、戦闘スタイルも抜群で簡単に言えば魔法拳闘士といったところでしょうか。


 魔王に成るためには単純で魔族の中で最も強い者がなる決まりで大昔からの強烈な契約の魔法で絶対で今の女魔王様でも壊せない魔法である。


 そんな女魔王様はかれこれ約100年間魔王の座を守ってきたが強すぎて、毎日を退屈そうに過ごしてた。


「あ~、退屈っ退屈なのじゃ。グリムはおるか」


 玉座に座ってる女魔王フランシスカは鈴を鳴らす。


「はっ、ここに」


 執事の格好と片目にモノクルをした初老、ウォーウルフのグリムが姿を現す。


「妾は退屈なのじゃ。何か楽しいことはないかの」


 グリムは考えこみ、グリムも娯楽には疎すぎて良い考えが浮かばないが、ある情報を思い出した。


「そういえば、新しい勇者が召喚されたようですぞ」


 勇者のことを伝えれば、退屈だと言っていられないはずと考えるが甘かった。


「はぁ~、また勇者かの。どうせ妾の方が強いに決まっている。そんな決まってることやっても退屈なのじゃ」


 女魔王様はグリムの策を一蹴し、どう退屈を紛らわすのかと、ある考えが頭を過った。


(そうじゃ、ここを抜け出して楽しいことを探すのじゃ。それがいいのじゃ)


 女魔王様が玉座を立ち、何処かへ行こうとするのをグリムが止める。


「フランシスカ様、何処へ行かれるつもりですかな?」


 以前にも魔王城から脱走劇を繰り広げたことがあり、警戒を強めている。


「ちょっと、お花を摘みに行くのじゃが、まさか、女の園まで着いて来るつもりか?グリムよ」


 ニヤリと微笑むフランシスカ


「いいえ、滅相もございません」

「そうかえ、ふふっ、冗談じゃ。では、行ってくるのじゃ」


 フランシスカは王の間を後にし、トイレに行くフリをして自室に荷物を取りに行き、自分の魔法で組み上げたオリジナル魔法の宝部屋アイテムルームに荷物を放り入れた。


(さて、部屋の外に誰も居らぬか。この近くには気配なし。姿を変えて、よし、転移テレポート)


 角や翼を消して、何処かへと転移した。


 一方その頃、現実世界:地球の日本にある飲食店で副料理長を勤める日本人の男性:桜井歩夢さくいあゆむは休憩中でお店の裏路地にて遅めの昼食をとっていた。

 昼食を半分程食したところで謎の光に包まれて、気が付くとそこは今まで居たところではなく、全く見たことない場所で怪しいローブを人が数人、玉座らしき椅子に丸く太ったおっさんと不細工な女が座っていた。

一様、冠を被ってるので王様とお妃様らしいが冠が無かったら、ただのおっさんとおばさんにしかみえない。


「おい、お前こっちにこい」


 ローブの一人が歩夢を指差して呼ぶ。

 お前呼ばわりされて、ムカついたがここは冷静に言う通りに従った。


「おい、ここに手を置け」


 相変わらず命令口調のローブに従って、水晶に手を置く。

暫くすると、水晶が光り自分の名前と何か数字が表示された。


「ふむ、魔力が桁違いに高いな。他は一般人と変わらんか。魔法や技術スキルはどうだ?」


 何人かのローブが水晶を覗き、ブツブツと言っている。


(聞き間違いではないとすると、魔力や魔法で言ったか。やはり、異世界なのか)


 昔からよく漫画やラノベを読んだ歩夢は半信半疑だったが、先程のローブの話を聞いた限りだと間違いないみたいだ。

心の中では夢が叶ったかのように喜び半分、この後どうなるんだろうと心配半分である。

 水晶覗き終わったのか何人かのローブが歩夢に近寄ってくる。


「試したいことがあるので、こっちにこい」


 ローブに言われて行くと、本を渡され、何人かのローブはコソコソと何か話していると本が表紙の色と同じ色で光り初めた。

光が収まると違う色の本を手渡され、同じ事を十回程繰り返した。


「王様がお呼びだ。来い」


 最初の王様がいた王の間に連れて行かれる。


(やっぱり、王様なんだ)


「閣下、お連れしました」

「どうたった。結果は?」


 ローブに王様が聞くと首を横に振った。


「ハズレか」

「ええ、魔力は桁違いに高いので、勇者候補としてまだ期待できたのですが、変な魔法以外覚えておらず魔導書でも無理でした」


 はぁ~とため息を吐き、歩夢に手招きされたので本当は近寄りたくはないのだが、しょうがなく近くに寄った。


「お主には悪いのだが、召喚されたら元の世界には戻れないのじゃ。当分のお金と道具を用意した。これで王都から出ていってくれんかの。勿論ここでの話は他言無用で頼む」


 お金が入った袋と道具が入っているカバンを手渡された。


「あの~、質問いいですか?」


 歩夢が挙手して言う。


「良かろう。我も鬼ではないしの」


 いや、召喚されて直ぐに国外追放とか鬼だと思うのだが。


「事情はだいたいわかりました。ここは何処ですか?」

「ミレイヌと言う世界で、ここはムライア王国である。他にはないか?」

「私が覚えている魔法について教えていただけませか?」

「ふむ、良かろう。おい、教えてやれ」


 王様の近くに待機していたローブが返事し歩夢に近寄ってきた。


「お主が覚えてるのは、娯楽魔法である。名前以外不明であるが、名前から予想するに遊ぶ為の魔法であろう。戦闘には不向きだ」


(まあ、だいたいの事は聞けたし、もういいか。いい加減王様の豚顔は見たくないし)


「そうじゃ、一ついい忘れるところじゃった。魔王には気を付けることじゃ」

「魔王...ですか?」

「そうじゃ、女で名前は...ほれなんじゃったか」

「フランシスカでございます。閣下」

「おう、そうじゃったな」

「ありがとうございます。閣下」


 話は終わり、お城の外へ案内され歩夢は外に向かい歩き出した。

王都の正門は豪華で巨大で直ぐ分かった。正門を出て人目が少ない場所を探し座りこんだ。


「ふぅ、ここまで来たら大丈夫だろう。早速、俺の魔法、娯楽魔法を試してみようか」


 掌を上にして何かを念じてみたが、何も出る気配がしない。

 試してる最中に何も無い場所から突如、歩夢の好みど真ん中の女が現れた。

歩夢が突然のことで呆然していると、女もこちらに気付いたようで近寄ってくる。


「そこの者よ。何か困ってるようじゃの」


 話し方が何処かの王族ぽいけど、せっかくの話すチャンスなんだ勇気を持って答える。


「魔法の使い方が分からないんです」

「魔法が?まずはステータスを開いてみせよ」


 あ、やばい!それも分からない


「すみません。それも分かりません」


 ドキドキしながら答える。


「何?分からないじゃと...まさか、召喚されたのか」


 女が少し考えこむと直ぐに結論を導き出す。


「はい、そうです。」

「ふむ、しょうがないの。手を前に出して、ステータスオープンと唱えれば出て来る。慣れれば念じるだけで出来るはずじゃ」


 教えて貰った通りにやると、ゲームやパソコンみたいなウィンドウが現れた。


「それがステータスじゃ。どれどれ...フムフム」


 歩夢のステータスを勝手に覗きこむ。


「ほぉ~、歩夢と言うのか。良い名前じゃな」

「あ、ありがとう」

「して、問題の魔法は....何?娯楽魔法じゃと」


 驚愕している女


「な、何か変ですか?」


 心配になり聞いてみる


「妾が知らない魔法がまだあるとは....」


 ブツブツと独り言を言い出す。


「とりあえず、その魔法の所を触れば使い方は分かるはずじゃ」


 歩夢は娯楽魔法の項目を触ると頭の中に直接使い方が入ってきた。


「出来たようじゃな。それで歩夢頼みがあるのじゃが、その娯楽魔法を使ってみて欲しいのじゃ」


 目をキラキラと輝かせる。


「えぇ、いいですよ。え~と....」

「ん、どうした?ああ、妾の自己紹介がまだだったの」


 わはははっと笑う女


「妾はフランシスカじゃ。フランと呼ぶ事を許可しよう」


 ん、フランシスカと聞き、最近何処かで聞いたようなと考えこむ。


「フランってもしかして魔王?」

「そうじゃな。恐ろしいか?歩夢」


 首を横に振る歩夢。


「いや、むしろ美人で可愛くて、こんな恋人がいたらって思うくらい」


「な、何を言い出すかと思いきやほ、誉めてもな、何も出ないよ」


 モジモジと誉め慣れてないフランは頬紅くする。


(あれ、こちらの口調が素か)


「本当なんだけどな」

「もう、それよりも魔法の練習するよ」


 歩夢とフランで魔法の練習をすることになった。

 これが退屈な女魔王フランシスカと元勇者候補、娯楽魔法使い桜井歩夢との最初の出会いである。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る