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何故だろう。
私の体が勝手に彼にひかれていくのが分かる。
気が付いたら、彼の横まで来ていた。
正直、自分でもびっくりした。
彼の纏っているオーラに惹かれたのか。
彼が奏でていた透明感のある音色に惹かれたのか。
自分でもさっぱりだった。
でも彼は普通の高校生とはなんか違う気がした。
曲が終わったのか、彼が私に気が付きこっちを向いて話した。
「どうかされましたか。ここで吹いたらまずかったですか」
「いえいえ全然、大丈夫だと思いますよ」
「そうですか。最近、吹奏楽部に所属してまして、この場所がなんか好きでたまにここで吹いてるんです」
この場所が好きというのは、分かる気がした。
静かに流れる川に、風に揺れる葉の音、虫の鳴声
ここだけ、切り離された田舎の様に感じられた。
「それにしても、演奏お上手ですね。つい聞き入ってしまいました。どれくらい練習されているのですか」
「名前をお聞きしてもよろしいですか」
どれくらい練習したかを聞いたら、名前を聞き返されてしま
った。
でも、隠す理由もないと思い、教えることにした。
「私は、東雲琴です。あなたは」
「僕は、音海凪といいます。さっきの答えですね」
「部活で二時間くらいですかね。東雲さんほど、私は頑張っていませんよ」
私より頑張っていない?
正直、全く意味が分からなかった。
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