第2話

私は、紅くんが言うことに対しては、ほとんど承諾していると思う。

なぜか、と聞かれたとしても、あまり明確な理由は答えられないような気もするけれど、一つ確かなことはというと。紅くんが誰よりも「綺麗」に見えているからだ。少なくとも私には。


それは容姿だけでなく、心とか、性格をも指している言葉である。紅くんを形容するのは「きれい」という言葉なのだ。

そうやってまた私は、ぼーっとしてしまうから、即座に我に返ってくる。


「紅くん、今日は何してたの?」

「今日、紺ちゃんのことを考えてたよ」


そう強調して言う。


「あはは、困っちゃった? 今日も紺ちゃんのことを考えながら、君の絵を描いてた」


紅くんは、学校に行ってない。詳しく言ったら、学校を休んでいる。「不登校」っていうやつなのかな。

紅くんは、この前までいじめられていたらしいから。今は休んで、その休養に努めている。私も加わって。

学校にも、私も実際に担任から聞いたけれど、「体調を崩して、休養を取ることになった」ってされている。でも、明らかに男子の数人とか女子の数人の行動がおかしくなって、ずっとそわそわしていたり、物に八つ当たりをするようになったり、そのような人たちが、紅くんが学校に来なくなってから、行かなくなってから、現れたから、多分その人たちが、紅くんをいじめていたんだと思う。


紅くんが中性的な容姿だから。言葉遣いだから。


そして、そんな姿で、今日も私にそんなことを言う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る