次の日の空が明るみ始める頃に薊は家を出て社跡が見えた場所からもう一度場所を確認する


そして、その社に向かうための道が無いかを探すため町と反対から山裾沿いに歩き始めた




山といえるほど大きいものでもない、30分も歩けば一周できてしまう


本当の山に申し訳ない気持ちすらある




しばらく歩き町の真裏までやってくると獣道とも呼べないが、どこか人が通ったかのような形跡が残っている場所を見つけた




「ここから上がれるのか...?」




そう思いながらも薊は草をかき分け木々の枝や根をつかみながら登っていく


するとすぐに開けた場所に出た、そこにあるのは社と鳥居をつなぐ参道に苔の生えた石が敷き詰めてあり、社は風化してしまい形をとどめていなかった




薊がここまで来たのは社の有無ではなく、夕日で輝いていた光の正体を探すため


開けている土地の隅からこの場所が見えた町のはずれが見える場所がないかと古くなった木々や少し水気が残っている土に足を取られながら探し歩くとその場所は以外にもすぐに見つかった




「ここからか」




木々の間からはつい先ほどまで自分が立っていた場所を見ることができた


そして、その点と点が結ばれる先を見るように振り返るとそこにあるのは山に植わる木々、そして鳥居と留守になっている台座が視界に入った




鳥居は石でできていてとても光が反射するようには見えない、何か埋めてあることも考えて見える範囲を隈なく見るが特になにも見当たらない


木々が生えている場所をみてもあるのは落ち葉と枝ぐらいだった


残るは留守になっている台座だけだがここにもそれらしきものは苔に包まれていることもあって見当たらない




「山のゴミかカラスが咥えていた何かが光っただけか」




そもそも何が光ったのかもわからないので、見つけようにも見つけられるものでもない






よく見渡すと本来対であるはずの台座の片方だけは今でもそこに居続けていた


その台座に座るのは良く見る狛犬や狐ではなく、魚の形をしていた




「魚?こんな神社あるのか?」




しかもこちらも例に洩れず苔に覆われており、本当に魚かどうかも怪しい形をしている


その魚をぐるりと一回り見てみると片目だけが他の石とは明らかに違うもので出来ていた




「これか?てことはあの時魚と目が合っていたってことか」




いくら像とは言え魚と目が合ったと思うと少し可笑しく思えてきた薊だが




「でも場所が微妙に合わないような...昨日まで一度も見たことなかったぐらいだからいろんな偶然が重なったってだけかもしれないな」




何が正解で不正解なのか、何を見つれば良かったのかを薊もわかっていなかった




「さて帰るか」




光るそれであろうものを見つけた薊は来た道を戻っていくことにした

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