第3話 怪人の正体

東郷とうごうさん! 大丈夫ですか!」


スタッフ達は孤軍奮闘ショーをやりとげた僕をねぎらう様子もなく、一目散に怪人役に駆け寄る。


「佐藤くん、大変なことをしてくれたね。この人はゼロワンプロモーションのスーパースカウト、東郷康隆やすたか氏なんだよ!」


ゼロワンプロモーション? 

あの大手芸能事務所の?


東郷康隆……聞いたことがある。

いまゼロワンプロモーション所属で活躍している芸能人の9割を彼が見出したと言われている、伝説のスカウトマンだ。

そんな人が一体なぜ?


「彼はね、日頃からこうやって演技の場に自ら潜入して俳優の卵を発掘しているんだ。なかなかやられず君を困らせていたのも、役者としての対応力を見ていたんだよ」


なん……だと? 


それじゃあ訳の分からない怪人の振る舞いは全部演技で、あの舞台は言わばオーディション会場だったというわけか。


僕の俳優への道は閉ざされたに等しい。芸能界の大御所スカウトマンに怪我をさせてしまったのだから。


僕はがっくりと肩を落とした。その後のことはあまり覚えていない。

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