第8話 何事も 変りのみゆく世の中に 同じかげにも澄める月かな

 第7話 何事も 変りのみゆく世の中に 同じかげにも澄める月かな。 (二宮尊徳)  

2022年3月13日 V1.02


 格言・箴言は、長い歴史を誇る中国ばかりではありません。

 わが日本には、縄文人という単一民族文化から紡ぎ出された、川柳という「さり気ない箴言」「楽しい格言」「愉快な名句(歌)」があります。



 ○ 人を育てる楽しみ

 菜か芥子か 種まく手元わからねど 花咲く時はいちじるき哉。 (二宮尊徳)

 豊葦(とよあし)の 深野(ふかの)が原を田となして 米を作りて喰う楽しさ。 (二宮尊徳)


 田を深く よく耕してやしなえば 祈らずとても米やみのらむ。(二宮尊徳)

 蒲公英(たんぽぽ)や 幾日踏まれて今日の花。

 渋柿のそのまま甘しつるし柿。

 鳴くが真か 鳴かぬが実か 蝉と螢のこんくらペ。

 清水チョロチョロ岩間を出でて沖へ軍艦のせに行く。

(小さな湧き水も、やがて大きな河となり大海となって、軍艦やタンカーを載せるようになる)


 ○ もともと誰にでも才能はある。それを引き出す「伯楽ありて千里の馬あり」

 名も知れぬチリチリ草の露までに 影をわけつつ宿る月影。

 泥水も 葉に玉なせば 蓮の露。 

 所変れば品変る 浪華の芦は伊勢の浜荻(呼び名が違っても、本質は同じ)。

 橋は大阪京都は花か 奈良の大佛三笠山。(その土地や町に固有の景色・個性・匂い・趣きがある。それを生かす。)

 その日暮しの朝顔さえも 思い思いの色をもつ。(個性はさまざま)


 → ○ 荒を包む(易経)

 ○ 十指長短あり(易経)

 ○ 中国の「抜苗助長」という故事と同じ教えが日本にもありました。

 年毎に 咲くや吉野の山桜 木を割りて見よ 花のありかを。

 → 花を咲かす木を割って中を見る、というバカバカしい話というよりも、大自然の摂理の不思議を(おもしろおかしく)詠んだ歌なのでしょう。



 ○ 偶像崇拝ではなく、大自然の摂理に学ぼうとする科学的で文学的な心

 なかなかに 山の奥こそ住みよけれ 草木は人の是非(善悪)を言わねば。

 天地自然の浄化の主は 万古不休のお骨折り。 → 赤壁賦(水と月)

 凉しさや 弥陀成佛の以前より

 → 天地自然の道理は釈迦や阿弥陀(宗教)以前より存在する。

 畑打(はたうち)や 拝して帰るタ日かな

(ミレーの名画「晩鐘」と同じ。一日の労働の終わりを、神(夕陽・大自然の摂理)に感謝して家路につく)

 何事も 己が歩みに似たりけり 右踏みしめて左行くなり。


 佛とて 外に求むる心こそ 迷いの中の迷いなりける。 (一休和尚)

 釈迦と云ふ 悪戯者が世に出でて 多くの人を迷わするかな。 (一休和尚)

 信心に よりて利益はありと知れ 佛も下駄も同じ木のきれ。

 釈迦阿弥陀 作りかゆれば下駄足駄(げたせった)変れば変るものにそありける。

 舎利子(しゃりし)見よ 空即是色花ざかり。 (小笠原長生)

 仁と義と 勇に優しき武士(もののふ)は 火にさえ焼けず水に溺れず。

 釈迦逃げて 弥勒すすまず今日の秋。


 ○ 伝統の継承

 何事も 変りのみゆく世の中に 同じかげにも澄める月かな。 (二宮尊徳)

 菜の花や 月は東に 日は西に。 (蕪村)

 → いい先輩が卒業すると、入れ替わるようにして、また同じように素晴らしい先輩が出てくる。それが伝統(というシステム・組織力がある学校の強み)。毎年違うタイプのリーダーが出てくるが、彼らの根本理念は昔も今も変わらない。


 ○ ただの仲良しではない → 組織としての厳格さ

 仲が良いとて礼儀を欠くな円という字も角がある。


 ○ 心の持ち方一つ

 → 「人生うまくいくことばかりじゃありませんが、桜を散らす雨のように、物事の見方を変えて何事も楽しんでいけたらいいですね」立教キャプテン

 兎も角も心一つを住みかえよ山も浮世も外ならばこそ。

 所変れば品変る浪華の芦は伊勢の浜荻。

 暫くは雲の上にも出でて見よ雨の降る夜も月をこそ見ん。

 永き日も 囀(さえず)り足らぬ雲雀(ひばり)かな。 (芭蕉)

 精出せば 凍る間もなき水車。

 長生きは只働くの外はなし 流るる水のくさらぬを見よ。


 ○ 「明治の木村」に勝つ秘策

 どうなりと なろと柳に出られては 気を春風の勢(いきおい)もなし。

 → 「木村」を超えるには、彼を乗り越える「空の空の心」になるしかない。


 ○ 恋の歌ですが、「何事にも筋論や論理・法で括れないことがある」という、いかにも日本人的な世界を教えてくれています。

 鳥も通わぬ玄海灘を何を便りに通わんす。

 虎は千里の籔さえ越すに障子一重がままならぬ。

 末(すえ)は袂(たもと)をしぼると知れど ぬれて見たさの花の雨。 (陸奥宗光)

 忍ぶ恋路と夜降る雪は人目忍んで深くなる。

 憎うて叩くと思うな煙管(キセル) 可愛けりやこそ ロ(煙管の吸い口)も吸う。

 手折らるる人に薫るや梅の花。 (千代女)


 化粧の水を何処へ捨てよか虫の声。 (千代女)

 

 



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