第34話 後継者と関係者のその後

 ジオン・サルディーラ

 

 父親の死後三年行方不明になる。

 彼が歴史に現れるのはヴァレンシァのサガロに対して『ノーマ帝国の最新艦を泥棒したから買ってくれ』

 金額はともかく、大きさにおいては泥棒の最高記録である。

 以後、北海と地中海と新大陸への新航路で海賊を行う。

 北海の女王クィーン・デイジー二世を撃破。

 内海でのレアとの戦いではサルディーラ軍を指揮する。

 ミリディアVSソフィア正教圏において、遊説化となり諸国連合の要となった。

 ミリディアとの外交も一手に引き受ける。

 以後はヴァレンシアに所属する。

 植民地をめぐり、カステラヤ帝国の無敵艦隊との熾烈な戦争に身を投じる。

 年を取って(?)から『モア』と言う名の料理屋を始める。

 副題は『まともな食べ物に飽きた方に・・』どんな恐ろしい食べ物がだされるのかと思えば。

 今では普通となった潰物も売られた。

 彼の店では現在出されていないが、当時のメニューにはドラゴン料理が確かにある・・。(伝説ではジオンは新大陸にドラゴンファーム『竜牧場』を作ったとされる)

 トマト・ジャガイモなどの新大陸の食料に挑戦した功績もあり、漢方薬や朝鮮人参を紹介した功績がある。

 彼の存命中にサルディーラにも出店する。

 現在のチェーン店の走りになる。

 アルテシアの死後、姿を隠す。

 伝説では新大陸に渡る。

 

 カストーナのアデュー

 

 モアの存命中支えた四鬼四駿の筆頭格。

 モアの死後、サルディーラ政権を支える。

 彼の残した人材の一人。

 最も濃密にモア的なる物を受け継いだ。

 エスカチオン対ミリディアの最大の決戦『マジリノの戦い』のとき、作戦参謀を務める。

 彼が残した高度線が描かれた精緻な地図にコンパスや分度器を使用した9つの作戦計画(採用されたのは1つ)は、現在国立博物館の戦史部屋の正面に飾ってある。

 目由都市アランの反乱を機に植民地の経営からサルディーラに帰還する。5年後、21歳年下のアルテシア・サルディーラと三度目の結婚をする。

 死ぬ間際の6年で君主を軍事的に補佐する参謀本部を作った

『巨人戦争』での活躍は『世界最高の知力』と軍関係者から絶賛されている、97カ国全ての軍事教練用教科書に出てくる。

 

 アルテシア・サルディーラ

 

 父母の死後、サルディーラ王家を引き継ぐ。

 父親の知謀と母親の勇猛を受け継ぎ、父親の凶悪と母親の狂気を受け継がなかった。

 民に対して慈悲深く、敵に対して寛容であった。

 後世から『この時代、ただ一人、騎士の心を知る人』と絶賛された。

 また、芸術大学を作り。

 大・中・小の作品が、本物、偽物含めて、たくさんできた。

 今でこそ『芸術の都』の称号をオリアンに譲っているが、かつて、ここが芸術の発信地であり、ここより2世紀の間に出来た傑作達は今も観光産業の目玉としてサルディーラ市民を食わせている。

 彼女をして、『ルネッサンスの萌芽』とする。

 齢九十にて暗殺される。

 その容貌はに二十代後半を保っていた。

 暗殺者は謎だが彼女の不老を恐れる孫や、エスカチオン勢力に葬られたという噂は絶えない。

 彼女の墓は革命時に暴かれた。

 彼女の愛したサルディーラ市民によって。

 

 オリアン国のカロ

 

 オリアン国滅亡後は各国のヘッド・ハンティングを固辞。

 治安が回復した陸路で商人になる。

 一時期はシャンリーの暗殺を恐れて、北部同盟の盟主であり、ノーマ帝国に対してエスカチオンがおこした独立戦争時当時、エスカチオンの左翼とノーマ帝国右翼として激突したダン・ジョウ・ストレンツオの下に身を寄せる。

 モアが設立した市場や通商路やインフラを最も効率よく資本を使用し、以後、今の時代まで使われる複式帳簿とアラビア文字の導入を行う。

 各地の価格調査の手法を設立し、求められるものを必要な場所に動かし、短期間で財をなす。

 ノーマ帝国を滅ぼしたミリディアとのオルレアン平原の決戦に対して、ジオン・サルディーラの勧めに応じてソフィア正教圏の軍師となり、戦争費用を手出しした。

 商人として成功してから結婚、妻との間に4人の子を残した。

 幼い子供達に天文額的な借金を残して死んだ。

 死に際、ジオンに対して「お前達、親子には最後まで騙された。

 頼むから息子達とは関わらないでくれ」年をとって産まれたから、余程可愛かったのだろう。

「そう、邪険にするなよ。

 親父には世の中全て欺かれた。

 サルディーラ王家も例外ではないよ、ヤツにはアンタが一番騙されてない。

 満足して死にな。

 それに物は考えようだ。

 エスカチオンは巨大なものを残したから、骨肉合い争う事態だ。

 借金は兄弟を結束させる」

 余りの言い種に荘然自失し、カロは失意の内に死んだ。

 彼もまた、巨大な運命に翻弄された人間の一人だった。

『モアには、最後まで騙された』墓に刻まれる。

 

 長男カローノ(小カロ)

 

 父親の跡を継ぎ商人となる。妻の連れ子であるが一番カロに尽くした。

 カロの遺言が守れず、ジオンと深く関わってしまう。

 晩年は新大陸において大規模な植民地経営を行う。

 世界の食料王となり、ソフィァ正教圏をレアによる『小麦の楔』から救った。

 ジオンによって背負わされた借金は、彼の代で返せなかった。

 新大陸の独立戦争を仕掛けた、新興国初代大統領は彼の曾孫にあたる。

 

 次男プチモア

 

 戦争をしたくない一心で坊主になるが、異教徒に捕まり改宗という宗教的な前科を負う。

 宗教家をクビになった。

 魔法を勉強しながら騎士になり、名誉の回復をはかるが。

 失敗に終り、傷口を広げた。

『医は仁術』と口にして無免許の医者をやりながら、国債と株式の概念を産みだし金持ち相手に金をかき集める。

 が…、泥棒に入られたのか、使い込んだか分からないが、この時点では大物詐欺師にされる。

 父親の遺言が守れず、ジオンと深く関わってしまい。

 モアが作った『法人格』を応用し世界初の株式会社を設立。

 多くの業種の経営に乗り出した。

 上手くはいかなかったが、職業組合ギルドによって守られる手工業連合と対決した(時代が早すぎた。狙いは良かったが大量生産の技術が確立出来なかった)

 晩年、銀行業にも乗り出し、現在まで続く世界三大銀行の一つの創始者となる。

 

 長女アルアル

 

 アルテシア・サルディーラの庇護の下、演劇の演出家を目指すが、父親の遺言が守れず、ジオンと深く関わってしまう。

 道を外す。

 ミリディアを追い出した後の、西ノーマ帝国の復興に身をささげる。

 人々の心の中で魂が枯れるのを憂い、伝記や伝説や童話を中心とした大掛かりな出版業を営む。

 世界初の版画の挿絵付きだった。

『魂』を口にしたモアですら、聖書と翻訳とエロに終始したのだから。

 なかなか革命的なことだが、しかし、ジオンとの間にできた子供が借金の返済に困り、差し押さえられるという不幸に見舞われる。

 引退を撤回し、老骨に鞭打ち、金策を重ね、公的資金の注入をしてもらうという離れ業を行う。

 それまでノーマ帝国は官僚機構を中心とする統治を行っていた。

 ミリディアの統治時代はノーマでは学者が軽んじられていたため。

 食い扶持に困った教育を受けた官僚たちを中心に、この出版社から世界に誇る小説家や演劇作家を産んだ。

 彼女自身はライフワークとして、著作権や肖像権の概念の創造にも深く関わる。

 

 三男ハウリングベア

 

 大学で法哲学を学ぶ。

 父親の遺書が守れず、ジオンと深く関わってしまい。

 大学教授の道を断念。

 ジオンと共にカステラヤ帝国と戦う。

 植民地獲碍戦争の基本となる万国法なる条約を制定する。

 晩年はサルディーラ王国の大学で、魔法の体系化を行い、成長しやすい効率のよい教育システムを確立する。

 今日ある大学の単位やカリキュラムといった。

 国は世の中の動きを見て毎年市場にどれだけ供給するかという国家運営理念、および医者、建築家、法律家などの国家資格の概念創造に大きく関わる。

 

 シャンリー4世・エスカチオン

 

 モアより余程善人である。

 異教徒、新興国ミリディアに宗教都市ソフィアーネが囲まれたとき、援軍を送らずに陥落するのを、何もせず見ていた。

 モア生きていれば、ソフィアーネ炎上はなかった。

 これらの暴論は、千年先の未来でも、永遠に言われつづけるだろう。

 そのせいか今でも人気がない。

 弟殺しの前科を作ったし。

 功ある家臣とも戦争をした。

 調べれば調べるほど、膨脹王国を守るための、防衛的色が強い計略であり、戦争であった。

 

 第十三婦人

 

 彼女の生んだ子は青い髪の少年は、シャンリー4世の粛正を受けなかった。

 シャンリー三世もこの子供をとても可愛がった。

 シャンリー三世の死後尼僧院に入らずに、城と爵位をもらい優雅に暮らした。

 ジオン・サルディーラと手紙のやり取りがあり、現存する手紙から判断するのに、どうも愛人関係にまで発展したようだ。

 彼女の息子は真面目な男で、勝ったり負けたりを繰り返しながら齢九十五まで常在将軍である。

 寿命で老いる事も無く、レアとの戦いで討ち死にする。

 

 サガロ

 

 ヴァレンシアの十人委員会の委員長を引き受ける。

 一時期はミリディアと通商条約を結び、国ごと破門される。

 当時の教皇に『異教徒ですら私をここまで怒らせなかった』と言わしめた。

 ミリディアとの海戦では総司令官となり。外国人で海賊であるジオン・サルディーラを副総司含官として登用する。

『異例の人事』だが議会の反対多数を押し切って断行する。

 ミリディアの武力による世界征服の波が発生する。

 過去一度目は鐙で、二度目は馬上で扱いやすい短弓と攻撃力を補佐する毒矢、分断包囲を行うパルチザン戦術で、そして彼が生きている時代におきた三度目の波、各地の技術革新による安価なマジックアイテムや火薬兵器を使用するドラゴン騎兵で世界を席巻しようとした。

 世界が飲み込まれていれば歴史が変わった対ミリディア戦争において、ソフィア正教圏で最初の勝利をもたらす。

 最後までカステラヤ帝国との戦争に反対するが、勝利の後は、点在する港の拡張と整備に務め、存命中には間に合わなかったが、最終的に、どの港でも戦艦が修理できるまでにインフラを整備した。

「海の高速道路」と呼ばれ、来るべき巨大人型兵器を操る時代、民族の存亡をかけた世界大戦の時代に『ヴァレンシアの世紀』と呼ばれる基礎を築いた。

 

 ガッシャ夫人

 

 アルテシア・サルディーラの良き相談役となる。

 アルテシアの結婚式において花嫁側の代表を務める。

 この時、縄でイモ虫のように縛り上げたジオン・サルディーラを結婚式場まで連れて帰るのに成功する。

 

 アルバート

 

 モアが息を引き取るとき、立ち会った四騎士の一人。

 ミリディア軍によるノーマ帝国陥落時、一人道徳において参戦する。

 敗戦後はゲリラ活動に努め、若者を組織したりした。

 常勝するミリディァが「ソフィアの毒牙」と呼んで恐れていた。

 ソフィァーネの防衛戦時、エスカチオン義勇軍を率いて参戦し戦死する。

 聖人の列に名前を連ねる。

 

 アデューの息子・ガリア

 

 モアが息を引き取るとき、立ち会った四騎士の一人。

 カストーナのアデューの息子。

 アデューと入れ替わりレアとの最前線都市の防衛を任される。

 秘密結社H・S・G(ヘルメス・の息子・ギルド)を正式に引継ぎ、魔法や大砲を考慮した新しい籠城用の建築物の創造に務めた。

 

 リーファ

 

 モアが息を引き取るとき、立ち会った四騎士の一人。

 ジオンの捜索隊に従事する。

 隊解散後も一人で捜索する

 ミリディアとの戦争の最中、ジオンを捕まえて婿にする。

 リーファのハーバートン家は革命期の粛清の嵐の中、軍務官僚として命脈を保ち現在まで続く『巨人戦争の時代』に世界最強と言われた巨大人型兵器部隊『ブラックランス』の母体となる。

 

 モンダル山のカリス

 

 モアが息を引き取るとき、立ち会った四騎士の一人。

 出自不明でありモアとの同一人物という説。

 アルテシア・サルディーラの愛人説。

 三人いた説、ジオン影武者説。

 モア隠し子説などある。

 出生年未詳、モアが創始した大学の第一回卒業生の一人。

 卒業論文は現在、彼のだけが発見できてない。

 史実において、ジオン・サルディーラの外交活動時、通訳として参加する。

 しかし、ミリディアの通訳記録では、この男は結構、勝手にしゃべったり、判断したりしている。

 またカステラヤ帝国側の記録ではジオンに向けて、レア語族の言葉を使い「小僧が、黙っていろ」と、叱り飛ばした記録が残っている。

 教育を受けた記録管を勤める奴隷が偶然レア語族を研究していたために起こった珍事であり、小さい声ではしていたこともあり、研究者の中では否定的意見が多い。

 ミリディアとの戦争が終結してから、しばらくはモアが創始した大学に帰り、望遠鏡を駆使して天文学を整理してから、教会の『地球を中心に回っている』主義を否定する。

 新大陸から新しい生命圏を発見。『多元宇宙諭マルチバースを展開』して、ソフィア教会の教義に異を唱えて『火あぶり』になりかける。

 大学を放逐される。

 目と鼻と口だけが開いた頭巾をした異端審問官を前に堂々と叫んだ。(この時、アルテシア・サルディーラは、カリスを殴って黙らせた、以後も体をはって庇ったと言われている)

「学者ハ、想像デ世界ヲ話セナイ」。

 今も私の心を捕らえて放さない言葉だ。

 植民地獲得戦争に参加はしてないが、ヴァレンシア海軍とカステラヤの無敵艦隊との戦い時は、ヴァレンシアの軍師を勤めている。

 カステラヤ帝国の『アラゴン地方寝返り工作』の首謀者であった。

 今も紛争の続くカルターニャ地方、問題の端緒を作った。

 現在において賛否両論別れる。

 万国法設立時はホスト役を引き受けている。

 一説では彼と一部のメンバーによって、原稿が書き上げられ、国際会議はただの承認の場になった。

 万国法は確かに植民地獲得の場を世界に広げ、一等国、二等国などを作り、東方諸国の悲劇を生んだ。

 少なくなるはずだった戦争の輸出になった。

 当時流行しだした、感情的な魔女狩りへの論理的な対抗手段となった。

 裁きは議会によって作られた法律によって行われる、という基礎を築いた。

 今日の民主主義に見られる『皆で決めたことは守りましょう。矛盾点があれば検証して、資料を作り、皆で納得のいくものに作り替えましょう』に通じる。

 妖精の血を引いていたようで、ほとんど老化しなかった。

 カストーナのアデューの死後、三週間目に階段で転んで死ぬ。

 愛妻家で「リリー」という妻がいた。

 彼女は勇猛な将軍で態度がでかく、あまつさえ上司のジオンを船長室から追い出し私室にした、超がつく非常識人。

 カリスは蛇蝎の如く畏れながら敬っていた。

 彼女には両手がありました(当時の魔法技術では四肢再生はあった)

 墓はない。

 革命の混乱時に暴かれたのかもしれない。

 謎の多い人物。

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モア物語 鈴木 @yann1234

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