第2話 モア・サルディーラ

『超絶美形』なる言葉がある。はっきり言えば量の事である。

 量の問題なのだが人類の半数にとって『大問題』のようである。

 この作品の主人公であるモア・サルディーラを偲ぶのに、当時の文献を参照しても『頬に紅さした』とか『天使のような』とかの文字しか見当たらない。

 その悪魔的な策謀とは別に、芸術の庇護者であり続けた彼には当時の画家の多くが好意を寄せていた。

 美しい肖像画しか残ってない。

 後世の我々がロマンティズム(彼が生きた時代への追体験)を抱くのに。

 過去に思いを馳せて想像の翼を広げる時、彼は私の想像しうる最良の姿で現れた。

 少年の頃、春の日だまりの中で母から読んで聞かせてもらった。

 童話の挿絵にある『妖精の姿』だった。

 彼の多くの功績は人類の歴史の中において眩しい輝きを持つものだった。

 彼の歩んだ道は光であり闇であった。

 有史以来の深い影も落とした。

 そして今の時代は、彼に対してあまりにも残酷だった。

 歴史とは切り口であり、時代時代の空気がメスを入れる。

 人の行為を、残酷な自分の眼鏡だけで裁くのではなく。

 今の時代が『美しい』と肯定し『名もなき人々全ての精一杯頑張った運命的な結果であり。過失もあったが、現在の私達が全てを教訓にした』と。

 激しい赦しをもって過去と対話することは、できないのだろうか…。

 彼の魂が浮かばれない。

 特に彼の場合『人類の歴史』に巻き込まれてしまったのである。

 これ(この歴史)は本人の意思ではなかった。

 私が資料をひっくりかえして書く物語は「公平中立の史書」としてではなく。

 彼に共感を抱く一人として…。

 多少は身贔屓に書かれているので。

 不快に思われる方は一度この本を買っていただき、火にくべてもらっても構わない。

 彼の輝ける二十年を書きたいのだが、そんな事をすれば十年はかかる大作となる。

 彼の生きた三十年の前後五十年、合計約百五十年は緒羅星ごとき人材が多数現れ、その多くが『風が吹けば桶屋がもうかる』程度に関連があった。

 彼がその命を終えた最後の戦いを中心にすえ、周辺事項として彼のこれまでの功績と人間関係を振り返りながら、筆を進ませていただこう。

 そのため書かれている事項が多少前後するけれど、彼を滅亡に追いやった戦いのストーリーだけは前後することはない。

 時代背景や宗教など面白くないところ、知っているところなどは飛ばし読みしてもらって構わない。

 多少門外漢の人間ではあるが、私なりの考察を踏まえ、数多くのIF物が書かれている。

 モースト・ミステリー(有史最大の不思議)に迫ってみたい。

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