第17話 爛れた生活

前話のあらすじ。ジンやりまくる。


◆◆◆◆◆


 朝、目覚めたときはひどい状況だった。裸の女達が俺に絡みついたまま眠っており、体の節々が痛む。そして俺も含めて全員の身体が、様々な汁が乾いてこびりつき酷い状態なのだ。事後の匂いと言えば悪いものではないが、これだけの人数分ともなると鼻がおかしくなる。


 とりあえずひとっ風呂浴びようと起き上がると、俺の腕にしがみついていたヒルダも目が覚めたようだ。寝ぐせの付いた頭のまま、周りの状況に気付いて目を丸くしているのがなんとも言えず可愛らしい。俺が風呂に入るつもりと告げると、皆を起こさぬように静かに付いてきた。





「ジン様、ちょっとはしゃぎ過ぎましたね」


 一緒に湯船につかりながら、舌を出してはにかむヒルダはとても可愛い。昨夜の乱れ具合からは想像できないほどのあどけなさだ。思わずヒルダを抱きしめる腕に力が入るのは仕方がないよな。



「もう、まだするんですの?」


 抱きしめる俺に胸を押し付けて上目遣いで尋ねてくるヒルダに、俺は我慢できなくなる。洗い場の壁に手を突かせて後ろから激しく襲い掛かると、ヒルダも身体をくねらせて応えてくれる。




 結局長い風呂になったが、身も心もすっきりと出来たので良しとしよう。身支度を終えたヒルダもにこやかに俺の腕を組んでくるので、そのままいつもの酒場のテーブルに向かうことにした。


 フロアは女達が総出で片づけをしているところだった。片付けというよりもあちこちにできたシミを取っているといった方が正確だろう。こんな場所で大乱交パーティを開くなど誰も想定などしていないので、後片付けが大変そうだ。


 さすがに裸のままではないが、割とひどい格好の者もいるのは見なかったことにしたほうがいいのだろうな。



 俺も当事者なんだがヒルダは気にすることは無いし、あの子たちも十分楽しんだんだから任せておいて大丈夫と、使われなかったテーブル席に俺を連れていく。そして俺を座らせると食事の準備をすると言って離れていった。




「しかし、これだけの人数を相手にしたんだよなぁ…」


 煙草を咥えながら見るとは無しに床を拭く女達の姿を眺める。元の世界でも散々女遊びはしたが、さすがにこの人数は無理だったろう。ざっと見ても30人は下らないのだから。これものおかげかと思うと、あの自称神に少しは感謝しても良いかもしれないな。




「おまたせ、あり合わせだけど軽くつまめるものにしたわ。ジン様のことだからお酒も飲むんでしょ?」


 艶々とした顔でヒルダが朝食? を持ってきてくれた。だがその内容は明らかに酒のアテばかりなので朝食と言っていいか悩ましいが、まあいつものことだ。ヒルダの方を見れば小さなサンドイッチが彩りよく並んだ、こちらは喫茶店のモーニングのような朝食だった。ヒルダはさすがに朝からは飲まないようでお茶を用意していた。


 そうして朝から酒を片手に美女とモーニングとしゃれこむ。ようやく掃除は終わったのだろう、女達は散り散りに自室に戻っていくようだ。さすがに汚れた格好だったので風呂に入りたいのだろう。誰もいなくなったフロアにヒルダとふたり朝食を楽しむことにする。




「そういやいつまで閉める予定なんだ?」


 話題が途切れたタイミングで、何の気なしにヒルダに尋ねる。俺にはあまり関係ないが、世話になっている店なので店の状況ぐらいは聞いておきたい。



「そうね、別に急いで開けるつもりはないわ。外の騒動が完全に落ち着いて、それからしばらくは様子を見るつもりよ。うちの子たちに何かあったら大変だから」


「そうなるとひと月ぐらいは閉めたままって事か? 俺が聞くのも変だが、店としては大丈夫なのか?」



「うふふ、心配してくれてるの? うれしいわ。でも大丈夫よ、それなりの蓄えはあるしジン様から預かった大金もあるから。昨日みたいな毎日というのもちょっと素敵じゃない?」


「金は任せた以上は好きにしてもらって構わない。だけどさすがにあれを毎日は俺の身体が持たないぞ」



「あら? 朝からずいぶん元気だったけど? 冗談よ、でも女の子たちの相手もしてあげてね」


「ああ、そこは心配するな。折角の貸し切りだし、精々楽しませてもらうつもりだよ」




◆◆◆◆◆





 そうして、これまで以上に爛れた生活が始まった。


 基本的に女達は全員フロアに出て、常に俺を取り囲んでくれる。一緒に酒を楽しみ、気分が乗ればその場で押し倒す。他の女達もすぐに参加するので結局大乱交パーティとなる日常だ。


 変わったのはフロアの床が掃除しやすいものに変わったぐらいか? さすがに毎日染み抜きは嫌だったようで気が付いた時にはシーツのようなものが床に敷かれていた。お前らどれだけ盛ってるんだと言うと、お互いさまと笑われたものだ。




 外部との境界は頑丈に閉じられ、カーテンでその様子は隠されている。おかげで闖入者の心配はないが、今が昼か夜かわからない。昼夜に関わらずまぐわっている俺達には、あまり関係ないんだがな。


 さすがに娼館の女達、様々な手管で飽きさせる事が無い。さらに大勢の女が参加することで、日々技術が洗練され、さらに満たされるという好循環。もうどれだけの日々こうしているのかすらわからなくなった頃には、すでにひと月が経過していた。




「ジン様、ちょっとお話が」


 その日は珍しくベッドで目が覚めた。とはいってもベッドでないとできないプレイという言葉に乗せられただけなんだがな。その証拠にベッドの上には4人の女が裸で毛布にくるまっている。そんな状態の俺を呆れた顔で起こしに来たヒルダが見つめている。



「どうした? 何かあったのか?」


 ヒルダがわざわざ起こしに来るなど久しく無い。よほどのことがあったのかとヒルダに尋ねると、自室に来てほしいと答えが返ってきた。ヒルダの部屋には何度かお邪魔しているが、どうやらそんな色っぽい話では無さそうだ。


 急いで風呂に入って身支度を整えるとヒルダの部屋に向かう。ヒルダは俺が来るのを待っていたようで、テーブルには朝食も用意されていた。さすがに酒のアテではなかったことからも、これからの話は重要なものなのだろう。





「で、何があった?」


 茶を飲みつつヒルダに尋ねる。だがヒルダの表情を見る限り良い話では無さそうだ。正直なところあまり聞きたくはないが、そういうわけにはいかないんだろうな。



 俺達が店に引きこもっている間の情報収集は店の男たちが受け持ってくれていたらしい。そして今朝とんでもない報告があがってきたのだそうだ。


 ヒルダの話はこうだ。俺達が引きこもってからもクスリによる被害は治まる様子もなく、それどころかより多くの中毒者が現れたらしい。そのため衛兵や騎士団だけでなく冒険者達も依頼という形で協力しているようだ。


 あれからひと月以上経過した現在。ようやく落ち着きを取り戻したのだが、それは街の人口の激減によるものでしかなかった。ひとり中毒者が現れれば少なくともその周りにいた家族や友人が被害にあう、つまり数人から十数人の命が絶たれるという事だ。それが多い時には数百もの中毒者が暴れまわり、対応が遅れることで被害はさらに拡大する。


 結果としてこのひと月で5万以上いたモルブランの住人の半数以上が消えたのだ。一部は街から逃げ出したものも含むが、そうする前に命を落としたものがほとんどという事らしい。



 もはや街としての機能は停止し、人々は自宅に引きこもり人通りも絶えている。近いうちに食料の供給も止まるという事だ、こんな場所に来る商人などいるわけもないから当然だろう。騎士団が王都から物資を輸送しているが、人口が激減したとはいえ街の規模からすれば焼け石に水でしかない。


 結局ヒルダが何を言いたいのかといえば、この街から離れるつもりだという事らしい。確かに食料の供給が止まるのならばどうしようもない。そしてこの騒動は未だに終わりが見えていないということは、供給の再開のめども立たないという事なのだろう。



「で、行き先のあてはあるのか?」


「いいえ、これから考えるつもり。話を聞いたのがさっきだから仕方ないわ。それで預かっていたお金を清算しておこうと思ってね」


 なるほどこれが話の本命という事だろうな。俺にとってはあぶく銭だが、それなりの大金ではある以上きっちりしておきたいのだろう。



「金はいい、とっとけ。これから色々と物入りになるだろうしな」


「ダメよ。そこまでジン様に甘えるわけにはいかないわ」



「じゃあ引き続き預けておくって事でどうだ? 店が再開したらまた遊ばせてもらうだろうしな」


「そんなの…、いつになるかわからないわよ。それに再開できないかもしれないし」



「それならそれで仕方ないさ。俺が持ってても無駄遣いしかしないんだ、ならヒルダ達の役にたつ方が金も喜ぶってもんだ」


「いいの? すごく助かるけど、ジン様に甘え過ぎだと思う」



「それならここを立ち退く日まで、サービスしてくれたらいい。金を返されるよりもそっちのほうが嬉しいさ」


「バカ、ほんとにジン様ってバカよ。でも、大好き」


 そう言うなりヒルダは俺の手を取りベッドに押し倒してきた。早速サービス開始という事か?





「大好き。ううん、愛してるわ」


 その日は一日ヒルダの猛攻を受け続けた。昨日までの大乱交よりも濃厚で素晴らしい時間だったとだけ言っておくとする。




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 読んでいただきありがとうございます。続きも読んでいただけるよう神頼みしておきます。

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