第5話 成長がおかしい気がする
前話のあらすじ。仁、レベルを上げに行く。
◆◆◆◆◆
最初の魔物は思ったほどの脅威ではなかった。
とはいえ他の魔物も同様とは限らないし、油断できるような状況でもない。ゆっくりと森の奥を目指して進んでいく。警戒を怠らず足を進めるが、襲い掛かってくるのは黒猿ばかり。この程度では剣のひと振りで終わってしまう。しかも単独でしか襲ってこないのはこの魔物の習性なのだろうか? 団体で来ればもう少し楽しめるのにと少し不満に思いつつも歩みを止めることは無かった。
かなり進んだのだろうか、振り返っても森の入り口はもう判別できない辺りまで進んできたようだ。それでも変わったのは黒猿のさらに大型版が現れた程度、ほとんど誤差のようなものでしかない。
(なんか思ってたよりも大した事が無いよな。それなら今のうちに魔法の練習もやっておくかな)
はっきり言えば、この程度の魔物などであれば全く相手にならないのだ。大したスピードでもなく十分に余裕をもって切り殺せる。たまたま弱い魔物が生息するあたりという可能性もあるが、それでも余裕のあるうちに魔法の練習をしておくに越したことはない。
街に向かう途中のアデーレの馬車の上で検討していた魔法。派手ではなく、周りへの影響を考慮する必要もなく、それでいて一撃必殺といえる程度の威力。様々に検討した結果、俺が選択したのは投石だ。アデーレを助けに行った時のことに影響されたとも言えなくはないがな。
もちろんただの石を投げるようなものではなく、鋭利な正四面体を高速で放つことで掠れば切り裂くことが出来るし、当たれば即死は間違いないというかなり物騒な魔法である。
その正四面体に俺は
そして短いキーワードで複雑なイメージと関連付けるのならば、漢字以上に適した言語を俺は知らない。つまり
他にもいろいろと魔法の検討はしたが、まずは
煙草を吸い終わるよりも魔物が襲い掛かってくる方が早かった。短くなった煙草を咥えながら懲りずに襲い掛かる黒猿に向けて魔法を発動する。
「
俺と黒猿の間に突如出現した正四面体、大きさは拳大程だろうか。現れるや否や黒猿に向かって勢いよく飛び立つ。突如出現したうえに高速で飛来する
(ちょっと過剰戦力かな? サイズはもっと小さくても大丈夫そうだな)
控えめに言ってもグロ画像なみのスプラッターな死体を見て俺は
それからは
結局、黒猿程度では
こうなると後はもう作業でしかない。黒猿が視界に入れば
(そういえば目標を決めてなかったな。とりあえず強くなれればとしか考えてなかったが、このまま延々と猿を殺してもしょうがないしな)
黒猿が敵ではなくなったとはいえ、俺の力がどの程度なのかの判断基準にはならない。そもそもこの黒猿がどの程度の強さであるかも知らないのだから。
ステータスはこの世界の仕様とか言っていたが、他人と比較できないのでは目標が定められない。これは何とかしたいが解決策を思いつかない。とはいえ折角ここまで来たのだ、行けるところまで進んでみようと思う。
さらに進むとようやく猿以外の魔物が視界に入る。今度の魔物は牛人間とでも言えばいいのだろうか、毛深いミノタウロスとでもいったような姿をしていた。ただその身長がでかい。3メートルはあるかと思える巨体に人の背丈程はある巨大な斧を担いでいる。武器を魔物が使うとは厄介だな。
しかも牛人間は単独ではなく数体の群れで行動するようだ。単独行動の猿からいきなり難易度が跳ね上がるというわけだ。
とはいえ俺のやることは変わらない。
「
すでに猿で検証した、複数の
(数は増えたが、猿と大差ないのか…)
まだこの辺りは浅い場所で、大した魔物は出てこないのかもしれない。安全マージンが確保できるこのあたりで狩りまくるか、もっと奥に進むか。ただあまり奥に行けば道に迷うかもしれないリスクがある。
(奥に行くのも面倒だし、このあたりを狩り場としようか)
さらに強力な魔物を探すのを諦めた後は、順調に魔物を狩り続けた。魔法も剣ももはや自然に扱うことが出来るようになった。やはり貰ったスキルはとんでもないものだったのだろうと改めて思う。途中怪我をすることもなく順調に来れたのはスキルのおかげといってもいい。
そろそろ飽きてきたよなと思いつつ進んでいると、他の冒険者に出くわした。結構距離を取っていたつもりだが、魔物を探して動き過ぎたのかもしれないな。暗黙のルールで獲物の横取りは厳禁らしく、少し離れた場所で戦いの様子を観察することにした。適当な場所に座ると一服付けて戦いの様子を見る。
冒険者は6名、前衛と後衛が3人づつのようだ。相手の魔物は牛人間でその数4匹、冒険者達は苦戦しているように見える。
冒険者側は前衛3人のうち1人が大剣と呼ぶのだろうか身の丈ほどもある巨大な剣を持っている。残りのふたりは俺の持っているのと同じぐらいの剣だ。後衛には弓がひとりと、槍がふたり。
どうも牛人間の毛によって攻撃がなかなか通らないようだが、うまく連携して牛人間の攻撃もかわし続けている。一進一退の攻防ってのはこういう事を言うのかなと、のんびり様子を眺めていた。
その時ひらめいた! この冒険者を鑑定したらどうなるんだ? おれは前衛の大剣使いをみて鑑定してみる。
-+-+-+-+-+-+-+-
オーケン
職業:剣士
LV:45
種族:人間
HP:1,200/1,450
MP:145/170
物理戦闘力:C
魔法戦闘力:E
スキル:
剣術(LV3)
-+-+-+-+-+-+-+-
「うーん、微妙だな」
LVの割には大したことがないように見える。俺が確かLV1でHPもMPも500だったと思うから、これぐらいなら俺ならLV5にもなれば十分追い抜いてそうだ。スキルもひとつしかない。ひょっとしたら彼だけがしょぼいのかもしれないと、後衛の槍使いのひとりを鑑定する。
-+-+-+-+-+-+-+-
ソウワン
職業:槍使い
LV:38
種族:人間
HP:800/850
MP:100/110
物理戦闘力:C
魔法戦闘力:E
スキル:
槍術(LV2)
-+-+-+-+-+-+-+-
「こんなもんなのか?」
他の奴らも念のため見てみたが、ほぼ誤差の範囲で職業とスキルが異なるだけだった。それなら牛人間もと思い鑑定する。
-+-+-+-+-+-+-+-
LV:40
種族:ワーカウ
HP:3,050/3,850
MP:20/20
物理戦闘力:B
魔法戦闘力:E
スキル:
斧術(LV3)
-+-+-+-+-+-+-+-
「ほぉ、魔物の方がスペックは上っぽいな」
これなら4対6で接戦なのもうなづける。それにしても魔物も鑑定できたのか、今頃気付くとは間抜けな事だ。
俺が鑑定している間も戦局は動かず、相変わらず一進一退を繰り返している。ちょっと飽きてきたので自分の状態を確認することにした。最初の時以来ステータスの確認はしていなかったから、結構成長してるかとワクワクしている俺がいた。
「ステータス」
-+-+-+-+-+-+-+-
ジン イズモ
職業:なし
LV:22
種族:人間
HP:23,003/23,003
MP:22,360/23,003
物理戦闘力:SS
魔法戦闘力:SS
スキル:
言語理解
鑑定(LV MAX)
収納(LV MAX)
全魔法
武神
全耐性
無詠唱
回復量増加(LV MAX)
獲得経験増加(LV MAX)
複写
称号:異世界からの召喚者
-+-+-+-+-+-+-+-
「えっ?」
おもわず二度見してしまった。LVはまあいい、それなりの数を倒したと思うし、獲得経験値増加もあるからな。だがHPとMP、お前らは何なんだ。ふたりそろってさっきの大剣使いの20倍以上ってどういう事なんだ?
ちょっと冷静になる必要がありそうだ。HPやMPが何を指しているか、ちょっと確認してみるか。ステータスを表示し、ポチってみる。
HP:物理戦闘における総合力。怪我等により減少し0になると死亡
MP:魔法戦闘における総合力。精神攻撃や魔法の使用により減少し0になると気絶
「うーん、ゲームのように単純なものではないのか…」
ゲームで例えるならSTRやINTといったものがステータスとすれば、HPやMPは単なる体力は魔力の残量を示していたのが一般的だと思うが、この世界ではHPやMPの数値がすべてを含有しているということになる。
と、言う事はだ…、俺はあの大剣使いの20倍以上強いということになってしまう…。うん、無いな。そうなればもはや同じ人間とは言えないだろうから、何かの間違いだ、きっと、多分、だといいな…。
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読んでいただきありがとうございます。続きも読んでいただけるよう神頼みしておきます。
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