第10話出産に立ち合う
嫁さんは妊娠8ヶ月まで働いた。マタニティーブルーなのか、元気がない。
僕も夜眠れず体調が悪かった。僕はうつ病の治療をしていたが、幻覚や幻聴が現れ始めていた。
心療内科の薬でごまかしていた。今は嫁さんの出産をサポートしなくてはならない。
僕は出来るだけ、禁酒した。嫁さんは酒好きだから、彼女の事を思うと僕だけ飲むのは悪い気がしたからだ。
嫁さんは実家に滞在した。もう、予定日近くだったからだ。夜中の1時に嫁さんに起こされた。陣痛がきたのだ。
僕は嫁さんを産婦人科に連れて行った。
しかし、その晩は産まれなかった。
翌日の昼に再び陣痛があり、分娩室へ運ばれた。僕は出産に立ち合った。
嫁さんは深呼吸しながら、奮闘していた。
僕は、ラマーズ法じゃないんだな?と思った。
声をかけようにも、助産師さん達が声をかけてるし、手を握りたくても、踏ん張り棒を掴んでるし。
僕は心の中で応援した!
分娩室にハッピーバースデーの曲が流れた!
産まれたのだ。
僕は自分の子供を見に行った。健康そうだ。
僕は今度こそ嫁さんに声を掛けようと、振り向いたら、隠れていた出産後の下半身を見てしまい、目眩がした。
もう、事故現場並。血の海。
僕は分娩室から出て、ソファーに横になった。
出産が終わり処置を済ませた、嫁さんが部屋に戻ってきた。
「あんた、なにしに出産立ち合ったの?」
「……余りに壮絶で緊張したから」
「キョロキョロして、頑張れ!も言わないなんて!」
「すいません。2人目の時にそうします」
入院は1週間程度。新米ママさんは退院する前の晩はフランス料理であった。運んで来た看護師に
「あの~、僕の分は?」
「え、これはママさんだけの料理です」
「せめて、赤ワインだけでも」
「病院内は禁酒です。では」
僕はガラス越しに、すやすや眠る息子を見て帰宅した。
もちろん、居酒屋で一杯飲んだ。
だが、全ての事の始まりはこれからである。
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