167 王家からの報酬

「リサお姉ちゃん気づいてなかったの?」

「クリスは気づいていたの?!」


クリスからジト目で見られているけど、まったく気づいていませんでした!

むしろどうしてクリスは気づいていたの!

気づいたら教えて欲しかったよ。


「商業ギルドで言ったじゃん〜時たますごいことするよねって?」

「あれってこれのことだったの!?パッチワークの登録のことかと思ってたー!」


あの時は登録で頭がいっぱいになってから、気軽に登録するようなものをポイポイ出したことに対してだと思っていたよ。

素材についてはエミリーさんも特に何も言わなかったし、私も完全に頭から抜けていたし!


…あれ?

じゃあもしかしてエミリーさんも気づかず、納品したときに発覚したのかな?

予想外のことにあたふたしているエミリさんの姿が思い浮かんでしまった。


お騒がせしてごめんなさい、エミリーさん。


「それでこれの報酬なのだけど、これくらいかと」

「…ぎぇ?」


思わずどえらい声が出てしまった。

出された紙に書いてある金額は目玉が飛び出るかと思うくらい高額だった。


「あの、これって?」

「パッチワークの新しい使い方を編み出した人の初めての作品。色とりどりの布地を使って、さらにそれを使って草花を表現しているなんて、もはや芸術と言っていいくらいのもの」


あーあー!

保湿剤の時と同じ登録者のプレミアム価格がはいっているんですねー!

柄はモザイクアートと言われれば、芸術と捉えることもできるかもしれないんですけど!

でも前世では当たり前にあったものなんです!

前世ではもっとすごい作品もあったくらいなんです!


そんなこと言えないけどさ〜


「さらに使われている布地の素材は早々に手に入らないもので作られているわ。だからこれいくら位は相応ということなの」


布地の素材がすごいのは認めるんですが、それは私の洋服を作った残りの端切れなんですよー!

素材としては価値があるかもしれないんですが、布としての価値は0なんですよー!


そんなこと正直に言えないけど…。


「納得できない?」

「えっと、その…」


正直には答えられないけど、言われていることはその通り!

ぶっちゃけこんな高額をもらう価値はないと思っているけど、正直に答えられるはずもなく。


もう深紫の涙と同じように献上品にするんじゃだめかな?

顔色を読むなんて日常茶飯事のお手の物かと思うので、察していただきたいです。


「そうもいかないのよ。これ2つあるでしょう?私ともう1人にね?」


察していただけた!

けど、そういえばライバル的な貴族の方にもって話で2個作ったんだったね。

…この方のライバルって貴族じゃないよね?同じくらいの地位の人って言ってたよね?

つまりはそういうこと…!?


「そうなの。だから献上だと少し面倒な事態になってしまうのよ」


察していただけたようです。

にこにこ笑っていらっしゃいますが、絶対に譲りたくないと言う圧力を感じます。


献上はだめ。

でもお金はそんなにいらない。

これは板挟みじゃないかな?


何か、何か代替案を出さないと…!


「ちょっといいか?」

「あら?ギャレンから何か提案があるのかしら?」

「まあな。金がいらない冒険者への報酬ならいくつか提案できることあるだろう?情報と許可だったりとかな?」


情報と許可?

どういうことだろうか?


「王家にはな、一般に秘匿されている情報や場所があるんだよ。そこの情報を見たり、入ったりできるなら、報酬としては申し分ないだろう?」


おぉ?

秘匿されている情報なんてものにはあまり興味はないけど、秘匿されている場所にはちょっと興味がある!

一般では行けない場所なんてこれを逃したらもう2度と入れないかもしれないもん!


「ほら?興味あるみたいだぜ?」

「…仕方ないわね。本来ならAランク以上ではないと開示できないのだけど」

「俺が一緒ならいいだろう?実力的にはAランク以上だろうし」

「ふぅ、仕方ないわね」


これは、もしかしたら解決の気配…!

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