166 王族との対面
「ようこそいらっしゃいませ。主は奥の部屋におりますのでご案内いたします」
きらびやかな扉を潜り、緊張が高まっていく中、出迎えてくれたのは執事の格好をしたイケオジ様!
できる執事という雰囲気を漂わせています!
その姿にちょっぴりテンションが持ち直した。
「リサ様?」
「本物の執事だよ!」
道案内している執事さんの迷惑にならないようにそっと小声で話す。
今生初めて生で執事を見たかもしれない!
いや、正確には家令かもしれないけど、本物だよ!
ちなみにクソ故郷の城の連中は、隅々まで腐ったエセ執事でした!
「おじい様って執事枠じゃなかったの?」
「執事服でしたのでそうとばかり思っていました」
「じいじは何と言うか、執事っていうよりチート執事っていうか」
エセではないんだけど、本物じゃないというか。
普通の執事さんがすることも、じいじはデタラメな手段でやりきってしまうから、やっぱり本物とは言えない感じなのだ。
言葉にするとちょっと難しいけど、他の2人には伝わったようで頷いてくれた。
枠って言っている時点でクリスも本職とは思っていないよね?
「やろうと思えばおじい様も本職の執事に負けないとは思うけど、問題の解決方法が普通じゃないからね〜」
「だよね!」
そういうところなんだよね、じいじが本職だと思えないの!
あくまで執事っぽいことができる、本職がじいじっていうだけで!
「こちらになります」
「あ!ありがとうございます!」
雑談に夢中になっている間に部屋の前に着いてしまったようだ。
いかんいかん、気を抜いていい場所じゃなかったのに。
ギャレンさんもこっそり笑っているので気づいているからね!
後で覚えてろよ!
「どうぞ」
「あ、ありがとうございます!」
高級な粧飾がされている扉がゆっくり開いていくに従って、どんどん緊張が高まっていく。
「ようこそ。お座りになって」
「あ、ありがとうございます!」
「ぷぷっリサお姉ちゃん、さっきから同じ言葉ばっかりだね〜」
クリスがぼそりと突っ込んでいるけど仕方ないでしょう〜!
こっちは慣れていない貴婦人との対面なんだから…!
全員が座ったところで少し心に余裕が出てきた。
どんな方に呼ばれたのか気になるけど、顔をまじまじと見るわけにはいかない。
不愉快にならない程度にチラ見すると、胸元に煌めく紫色の宝石は見覚えがある。
「その宝石…」
「えぇそう。あなたがくれた深紫の涙よ」
「ふぁ〜」
私が知っている深紫の涙は渡した時のほとんど原石の状態だったからそこまできれいだとは思ってなかったけど。
研磨され装飾された深紫の涙は、深い紫の中に星みたいな煌きが見える。
反射とかじゃなくて物理的に輝いているように見える!
「こんなに輝くものなんですね〜」
「鮮度があってこそこの輝きなの。この状態で加工できるのは奇跡と言ってもいいくらいなのよ?」
「そうなんですか?」
解体も薬剤の調合もそんなに難しいものじゃなかったと思うけどな?
薬剤も調合できなくても、薬師に調合を依頼すればいいと思うけど。
「えっとじゃあお礼というのはその深紫の涙についてですか?」
「ちょっと違うわ。もちろんこれにも感謝はしているけど、本題は別なの。あれを」
そう言って台車に乗せて運ばれて来たのは、いつぞや保湿剤を納品した時のパッチワークを施した箱だ。
2つともあるということはライバルの貴族様の分も含めてあるということだ。
「保湿剤の代金は商業ギルドの口座に振り込ませてもらったけど、これはそのまま受け取るわけにはいかなくて」
「えっと?」
なんでそんな話に?
保湿剤の入れ物だよ。
「正当な報酬を払うにしても確認しておいたほうがいいという話になってね」
「えぇ?」
ただの贈り物用にラッピングしただけの箱なんですが、どうして報酬の話になるのでしょうか?
聞きたいけど何が失礼に当たるのかわからない!
質問して不敬!なんてことになったら怖くて下手に質問できないよ〜
「価値をよく理解されていないのですか?…この布に使われている素材をご存知?」
「布の素材?あっ!」
そうだ!これ、エルフの里のノーラさんと一緒に作った布地だ!
あの時使ったのは…!
思い出してさーっと青ざめる。
「ご存知のようね。鑑定士に確認してもらったところ、使用されているのは世界樹とドラゴンの素材だったけど、間違いないみたいね」
「世界樹…?」
「ドラゴン…?」
そうです!
私の洋服を作るとかで持っている素材で一番耐久性があるものを選んで作ったんだ!
パッチワークに使ったのはその端切れだった!
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