165 依頼者の元へ

ギャレンさんに連れられて戻ってきました首都に!

ギャレンさんの先導で旅をしたわけだけど、道中はただただ速歩きで進んできたので何事もなかった。


スピードを調整したのか日中は歩いて、夜は宿に泊まってを繰り返していたので順調な道のりではあった。

むしろ順調すぎて町並みをゆっくり見ることはできなかった。

精霊の国から出てきたアンさんは観光したそうだったのに、申し訳なかった。

またリーンの街に戻る時にはゆっくり観光してもらおう。


「首都に着いたけど、行くのは首都のどの辺りですか?」


行き先は首都だと聞いたけど、首都もなかなか広い。

お礼を言いたいということだったけど、冒険者ギルドに依頼を出しているならギルドの中で会うのかな?


「依頼人の家だな。それ以外の場所だと護衛が大変になるからな」

「護衛…」


それって私の護衛じゃなくて、依頼人の護衛ってことだよね?

護衛が必要なんて、それってつまりは、依頼人の方って、もしかしなくても…。


「まあAランクに依頼出すくらいだからそういう事だろうとは思ったけどさ〜」

「お礼なんて手紙で済ませられるのにわざわざ連れて来て欲しいと依頼くらいですし、お礼と合わせて何か依頼があるのかも知れないですね?」


クリスとアンさんはわかっていたんだねー!?

私は全然気づかなかったよー!?

ちょっと、もう少し早く情報を共有してもいいんじゃないかな?


ギャレンさんが情報共有させる暇なく出発したのもあるかもしれないけど、旅の途中とかでさ、共有できたんじゃないかな?


ちらりと視線を送ると、思っていることが伝わったようで2人は首を横に振った。


「リサお姉ちゃんが気づいていないことはわかっていたからさ〜」

「旅の途中で言っても引き返せないですし、変にプレッシャーをかけないほうがいいかと思いまして」


苦笑する2人に土下座して謝りたくなった。

2人ともあえて共有しなかったんですね。

逆に気遣ってくれていたのに理不尽なことを思ってすみません!


「仲がこじれなくてなによりだ。宿はすでに取ってあるから依頼人の都合が着くまで待つことになるな」


宿はいつでも泊まれるよう予め確保してあったようだ。

うわーつまり泊まっていないときも宿泊料を払っていたってことだよね?

確実にお金を持っている人ってことじゃないですかー。

しかも先触れで調整が必要なんて、どう考えても高貴な方ってことですよねー。


はあ、気が遠くなりそう…。


「まああんたには悪い話じゃないだろうから、呼ばれるまでは宿でゆっくりしておけばいいと思うぜ?」


ギャレンさんの言う通り、今更ジタバタしたところでどうしようもない。

高級そうな宿を取ってもらっているのだから、この際たっぷり堪能させてもらおう!


問題を先送りにして、訪問の日程が決まるまで宿のサービスを堪能し尽くすことにした。

あと首都ならアンさんもちょっとは観光できるだろうと、お勧めの飲食店などを巡ること数日。

お礼を言いたいという依頼人に会う日が来た。


「あわぁ…」

「うわーすっごい馬車が来たね!」

「これに乗って行くんですか?馬車に付けられている紋章ってやっぱりそういう事ですよねー?」


迎えにきた場所をみた反応は三者三様だが、みんなあえて明言はしなかった。

多分私に気を使ってくれたのだろうけど。


はぁ、夢であって欲しかった…。

現実を直視したくない私はそんなことを思ったが、流されるまま乗った馬車は走り出した。


「この方向ってやっぱりそうかな?」

「そうですねー少なくとも先には立派なお城が見えますねー!」


他人事のようにって、2人からしたら他人事か。

この国での活動期間が長いのは私とじいじだから、2人が呼ばれるわけないし。


馬車はどんどんお城の方へ近づいていく。

これは確定だね。

でも私も呼ばれる理由がわからないんだよね。


いっそ呼び出し理由がじいじだったらまだ傍観していられたんだけどな。

ギャレンさんが依頼された相手が私だというので、心当たりがなくても行くしかないしね。


「お城の入口に入ったよー!ってあれ?」

「なんだか右の方向に行きましたね?お城ではなかったんでしょうか?」

「本当!?」


お城ではないの?!

お城でないならまだ希望が見えるかな?!

この国の頂点の方と会うことはないのかな!?


「あー行き先は離宮だぜ」

「り、りきゅう?」


りきゅう、りきゅうというとあの離宮?

一般的に王族が住むと言われている離宮ですか?

つまり王族と会うのは確定ですかー??


「まあ城でも良かったんだろうが、人目が多いと問題が起きるかもしれないからな。だから離宮だと思うぜ」

「離宮ですか…」

「まあ、冒険者にしたら自分から会いたいと思う相手ではないよな〜特にあんたみたいに貴族に仕えたいとか貴族になりたいって思わない冒険者は〜」

「わかっているなら依頼受けないでくださいよ〜」


ギャレンさんが受けなければ、私も行く必要はなかったはずなのに。


「依頼人が依頼人だから断れるかよ」

「ですよねー!」


自分が逆の立場だったら有無言わさず連れて行くよね!

腹をくくるしかない!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る