164 Aランク冒険者

「よう、久しぶりだな?」

「んん?」

「悪い悪い。飲み込んでからでいいぜ?」


朝食のパンに齧りついたタイミングだったので変な声を出してしまった。

言われた通り先にモグモグさせていただこう。


「ゴックン!っとえーっとAランクの…」

「ギャレンだ。魔の森の遠征以来だな?」


そうそうギャレンさん!

Aランクパーティーのリーダーをしていた人だ!

あの時はクズな役人だっけ?

そいつのせいで色々大変だったなぁ。


「ギャレンさんも魔の森で狩りですか?」

「んーちょっと違うな〜」


何やら言葉を濁したような言い方。

遠征の時にはバッサリ言い切っていたギャレンさんらしくないな。

これは、もしやもしやの、フラグが。


「あんたを迎えに来たってことだ」

「だぁー当たった!!」


やっぱりフラグが立ってしまっていましたか!

昨日ついうっかり順調だな〜って思ってしまったから、フラグが!立ってしまったのか!?


「リサお姉ちゃんと知り合いみたいだけど、迎えって何の用でかな〜?」

「Aランクの方がそう安易な依頼を受けるなんてことはなさそうですしね?」


おっと?なんか不穏な気配が?

クリスもアンさんもにこやかな笑顔なのに、威圧が漂ってない?


「あいにく依頼人の詳しい用件は聞いてないんでね」

「そんな中途半端な依頼ってAランクが受けるものなの〜?」

「不思議ですよね?その依頼はギルドを通しているのでしょうか?」


クリスとアンさんは完璧に敵対モードになっておられますー?

あれかな?私はギャレンさんと遠征に行ったことがあるから人となりがなんとなくわかるけど、2人は知らないから突然の言い分で怪しんでいるのかな?


「意外とグイグイくるな?こちらの2人はパーティーメンバーか?遠征の時にはいなかったよな?」


2人に責められていたのに耐えかねたのか、話の矛先が私にきたぞ?

まあギャレンさんが悪い人じゃないってわかっているから助け舟だと思っておこう。


「遠征の後から仲間になったんですよ!2人とも美人で美少女でしょう?」

「あぁ、そうだな。本当に人族か信じられないくらいに、な?」

「っ!」


いらないことを口走ってしまったー?!

ちょっと冗談を含ませたら、まさかそこから2人のほうが怪しまれることになるとは!


ギャレンさんの目が笑っていない気がする…。

こ、これは何か話を逸らさないと、言ってはダメなことまで吐いてしまいそうだ。


「あぁーで!これってギルドを通しての依頼ですか?」

「…まあな。心配ならギルドマスターに確認するといいぜ?」


話を逸らしたのを見逃してくれたようです!

ギルドマスターに確認してもいいって言い切るっていうことはやましい所はないっていうことだろうね。


依頼人もわかって依頼を受けているってことだろうし。

でも何も聞かずにほいほいついて行くのもおかしいし、いくつか質問しておこう。


「じゃあ行き先は?」

「首都だ」


首都かぁ〜

そんなに時間が経っていないのにまた戻ることになるのか。


「いつまでに行かないといけないですか?」

「なるべく早くって聞いているな」


そうだね〜

首都に戻るならせめてどこかに寄り道してからと思ったけど、依頼なら速やかに移動になるよね〜


ギャレンさんに協力してあげたいけど、楽しみたい気持ちもあるんだよね〜

だんだん億劫になってきた。


「直接お礼を言いたいらしいが首都から動けないらしくてな。護衛兼道案内を頼まれたわけだ」


わざわざAランクのギャレンさんに依頼することかな?

依頼料が出ているとはいえ、ギャレンさんがそのまま受けるところも不思議だ?


「まああんたは呼びつけられただけで、何の利益もないよな〜」


まあそうなんだよね。

お礼をと言われてもそこまで何かした記憶は…じいじがドラコン倒したくらい?

だけどそれなら首都でなんていう話にならないだろうし。


「依頼の後でよければ面白いところに連れて行ってやるよ。どうだ?」

「行きます!」


ギャレンさんが、Aランクのギャレンさんが面白いという場所に連れて行ってもらえるなら行く価値はあるでしょう!

魔の森も楽しかったけど、もう中腹くらいだとクリスとアンさんだけ余裕で狩れる状態だから私は手が出せなかったし。


我慢しているわけじゃないけど、ちょっとマンネリ化していたというかなんというか。

だから新しく知らないところに行けるなら行ってみたかった。


「よし!交渉成立だな!」

「リサお姉ちゃんがいいならいいよ〜」

「私も首都は初めてですし、楽しみです!」


よかった〜

勝手に決めてしまったが2人は反対しないようだ。

さっきまでギャレンさんに向けていた嫌疑的な視線もなくなったようだ。


「よしじゃあ気が変わらない内に早速いくぞ!」

「はいはいー」

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