チートじいじと行く～出奔勇者の諸国漫遊～

163 お勉強の成果

「終わりましたー！」

「僕も大体終わったよ〜」

「お疲れ様！」

私がポーションづくりに没頭している間に2人は図鑑の内容を覚え終わったようだ。

アンさんもこの短時間で覚えるなんて、記憶力がいいな〜。

こういっては何だけど、あのイタズラ精霊を取りまとめている女王とは思えないくらい。

私のポーションも大体作り終わったし、後はじいじだけかな？

「戻りました」

「うわっ！？」

「きゃ！」

またじいじは！足音も気配もなくいきなり背後から声をかけないで欲しい！

何度もされている私はともかく、アンさんは悲鳴をあげるくらい驚いているでしょう！

「ほほほ」

「笑ってごまかさない！アンさんごめんね！じいじは気配を消している時が多くて、時々こんな茶目っ気で驚かせるの！一応悪気は、一応ない！はずなんだけど…」

説明していてちょっと自信がなくなってきた…。

こういうイタズラっぽいものは悪気に入るのか？入らないのか…？

「大丈夫です！普段から他の精霊に同じようなことをされていましたから」

「それはそれでどうなの？」

精霊たちは自分たちの女王にもイタズラをしていたの？

普通は敬うものじゃない？

「まあ前世もあったせいか、反応が人間っぽくてからかい甲斐があったのでしょうね…」

あぁアンさんが自分で言った言葉に萎れていく。

うんまあ人生、じゃない精霊生？色々あるよ。

そんなこともあるよね。

アンさんを宥めて宿へ戻ると、宿の食事にデザートを追加してもらった。

頑張ったご褒美って訳じゃないけど、これでアンさんの気持ちも持ち直すはずだ。

「ふわー何ですかコレ！なんですかコレ！フルーツタルトだけどフルーツタルトじゃないー！」

「う〜ん花蜜を足したらまたさらに美味しいね〜」

用意してもらったのはダンジョンで手に入れた果物を使った贅沢なタルトだ！

美味しい物を食べたいのでダンジョンの果物に、放牧の街ローウで手に入れたミルクやバターも提供して作ってもらった。

ダンジョンの果物は種類が豊富にあったので色とりどりでそのままでも美味しい。

それがバニラの香り高いカスタードクリームとバターの風味が豊かなクッキー生地に挟まれて、味にも奥行きが広がり食感も楽しめる逸品になった！

さらにクリスの提案で精霊の花蜜もお好みでかけれるように準備したら、これがまた大正解！

クッキー生地に蜜が染み込んだサクジュワの美味しいハーモニー！

前世の飽食時代でも味わったことのない美味しさ。

アンさんがフルーツタルトだけどフルーツタルトじゃないと言った意味がよく分かる。

じっくり味わいたいのに次々口に運んでしまい、すぐになくなってしまう！

1ピースじゃ足りなくて、全員おかわりしたから1ホールあっという間になくなってしまった。

結構大きめのホールで作ってもらったんだけどな。

デザートは別腹っていうしね、女性が3人もいればなくなるのは仕方ない仕方ない。

「はぁー美味しかったぁ」

「夢のようでした。こんな美味しいものがあるのですねー」

「今日のは特別かな」

使っているミルクやバターは放牧が盛んな街の特産品だし、果物はダンジョンで手に入れた完熟したものだからね！

宿の食事も美味しいけど、素材からこだわるとまた違うからね。

「これだけでも国から出てきて良かったと思うわ」

「精霊って食事はしないんでしたっけ？」

「そう、基本は魔力が濃いところに住んでいれば周囲の魔力を補給できるから。食事は嗜好品って感じね」

妖精も魔力で生きているから精霊もそうじゃないかと思っていたよ。

あれ、でもそれだとアンさんは魔力が濃い地域にいないとダメなんじゃない？

魔の森はともかく、街の中は魔力が濃いとは言えないよ？

「大丈夫ですよーそのために花蜜がありますから。固めておけば長期保存もできますし」

「やっぱりあの花蜜って魔力の補給ができるんだ！」

花蜜に含まれている魔力が多そうだったから、魔力回復薬とか作れそうだと思っていたんだけど、精霊の魔力補給用だとは。

「なくなれば配下の精霊が持ってくるので、まあ数年くらいは街に引きこもっても大丈夫ですね」

にっこり笑った顔もセリフも女王らしい！

配下だって配下！

アンさんがちゃんと女王していたんだなって感じるよ。

でも冒険をするなら街にずっといるっていう訳じゃないから、引きこもる心配はいらないけど。

「美味しい食べ物はいっぱいあるから、旅ついでに美味しいものもいっぱい食べましょうね！」

「えぇ！楽しみ！」

恐らくいたと思われる転生者が色々広めてくれて良かった。

知識チートはできないけど、材料を探すところからなんて絶対無理だもん。

食べたいけどそこまでの熱意は持てなかったと思う。

過去の転生者の皆さまありがとうございます！

翌日はまた魔の森に戻って、アンさんがちゃんと魔獣の知識を覚えたか確認することになったのだが。

「もともと魔獣の特性に合わせて倒せていたんだから、傷つけていけない素材がわかっていれば簡単だよね」

魔獣の素材となる知識があれば、もうアンさんの敵ではないよね〜

魔の森の中腹くらいになると入る冒険者も少なくなる。

見られる心配がないとわかってからのアンさんの討伐スピードが恐ろしくあがっていく。

Dランクはもちろん、Cランクの魔獣もどんどん素材に変えていっているよ〜。

アンさんに触発されたのか、負けじとクリスも弓と魔法を駆使して目に付く魔獣をどんどん倒していく。

うーん、このまま討伐と納品を続けると、そう遠くない内に2人ともCランクに上がりそうだな。

そうのんきに思っていた予想はすぐに裏切られることになった。