161 精霊女王の実力
その他対策として、見た目を武装するという話や護衛をつけるという話も出たが、どちらも今の私たちには必要ない。
結局絡まれた時には実力行使という力技に落ち着くことになった。
脳筋みたいな考えで大変残念だけど、一番効果があるので仕方ない。
冒険者なんて脳筋じゃないとならないし、仕方ない仕方ない。
「明日から魔の森で魔獣狩りと採取に行こう!浅いところならそんな強い魔獣は出てこないはずだから!」
クリスの実力は大体把握できているけど、アンさんの実力はまだわからないんだよね。
Dランクの冒険者を捕まえられるから、それの応用で魔獣も串刺しにすれば大丈夫だとは思うけど。
森の浅いところで実力を見ることになった。
「うーん予想通りだね。いや予想以上かな?」
「そうですか!なら良かったです!」
いやー何ともグロテスクな状況で楽しそうです。
串刺しにされた10匹のゴブリンの前ですっごく喜んでいるアンさんにちょっと口端が引きつりそうになった。
何気にゴブリンソルジャーも混じっているし。
うんでも、ゴブリン程度ではアンさんの敵じゃなかった。
これなら魔の森の中腹くらいなら進んでも良さそうだ。
それに採取に関してもさすがだった。
精霊女王だからなのか、植物魔法が使えるからかわからないけど、なんと知っている植物は生えさせることができたのだ!
私がワーキングスペースで薬草を育てていたのがアホらしくなるほど、あっという間に生えてくるのだ。
採取関連の依頼はアンさんにお任せすれば困ることはなさそうだ。
もちろんなんでもかんでもアンさんにお任せするわけじゃない。
依存や搾取の関係になるのはダメ、絶対!
けどアンさんが自分が持っている能力で依頼を達成できるなら、楽な方法を取ってもいいと思うんだ。
アンさんの採取依頼の達成になるしね。
ということで、次はそのまま魔の森の中腹に向かうことになった。
私が冒険者になってすぐにじいじの修行に耐えた場所でもある。
懐かしいな。
「じゃあこの辺だとちょっと動きが早い魔獣からかな?」
「近づかず今いる場所で捕まえればいいですねー!」
遠目に見えていたのか、あっという間にシルバーウルフたちのツリーができてるー。
遠隔での魔法操作もできると心にメモする。
「次はちょっと数の多い魔獣かな?」
「地面から一網打尽に攻めれば大丈夫ですねー!」
地面から出てきた枝に腹を突かれて息絶えたキラーアントの群れ。
広範囲に渡って串刺しにされているのでまるで剣山に突き刺されたように見える。
広い範囲の魔法操作も大丈夫、と。
「飛行する魔獣は」
「絡め取れば大丈夫ですねー!」
大樹に取り込まれオブジェクトになったジャイアントビーたち。
これならかなり高いところを飛ぶ魔獣も大丈夫っと。
「最後にとっても硬い魔獣は」
「閉じ込めてしまえば問題ありませんねー!」
ストーントータスとアイアントータスは大樹に包まれそのままメキッと潰れた。
石より硬い魔獣も大丈夫…ってあるかー!
樹で石以上の硬さの魔獣を潰すってなに?!
「中を真空にして息を止めておけばすぐ潰せますよ!」
「確かにできているね〜?」
クリスもね〜?じゃないよ!
普通に考えてもできるはずないのになぁー!
いやクリスは多分できるんだろうけどね。
そう考えると今のパーティーメンバーは全員にチート疑惑が…。
魔法も剣もモノ作りも暗殺もお手の物、古参のじいじ。
連綿と続く世界樹の記憶を持つ、知識チートのクリス。
精霊の女王であり、精霊魔法を前世の知識で柔軟に使いこなすアンさん。
…今更ながらにこのメンバーはやばいかも。
私の焦りを知らない2人は倒したトータスの残骸を見ながらほのぼのしている。
「アイアントータスまで倒せるならCランク相当の実力はあるってことだよね〜?」
「そうなんですか?」
うん?今、何か引っかかったぞ?
アンさんがCランク相当の実力があるって言っただけなのに…?
「アンさんが疑問に思ったところに違和感があるのでは?」
「はっ!そうか!」
じいじの一言で引っかかったことがばっちり解けた!
つまりアンさんは
「魔獣のことを知らない!」
「あぁ!」
「そう言われれば?」
そうだそうだ。
Cランクのアイアントータスを倒したのにCランク相当の実力があるってわかっていないんだもん!
そして振り返ると思い当たる節がある。
今まで倒した魔獣の状況を。
シルバーウルフたちのツリー、貴族に人気の価値のある毛皮が穴だらけ。
腹を突かれたキラーアントの群れ、冒険者の防具として人気の甲殻部分は貫かれている。
大樹に取り込まれたジャイアントビー、高級レンズにもなる羽は粉々になっている。
今回のストーントータスとアイアントータスは影響がなかったけど、本来トータス系の魔獣には内臓などが薬になるものもある。
アンさんの今の倒し方だとその素材もボロボロになっているだろうな。
「冒険者として稼ぐには価値のある部位の知識は重要!魔獣を討伐すれば終わりじゃないんです!」
討伐だけでお金がもらえるのは素材にならないが、とてつもない繁殖力で増えては困るゴブリンくらいだ。
それでもらえるお金も微々たるものだけど。
だから冒険者は素材でお金を稼ぐのだ!
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