159 精霊女王のランクアップ

「で、どういう状況だこれは?」

「あー新人に絡んだクズの磔?」


訓練場の騒動がとうとうギルドマスターの耳に入ったらしく、見に来たギルドマスターの第一声に私はそう答えた。


結果は思っていた通りアンさんの圧勝だった。

喧嘩を売ってきたクズはアンさんの精霊魔法により、手足を木に取り込まれたオブジェクトになった。


てかあれがイタズラ精霊のお仕置きに使っていた精霊魔法か。

樹木を自由に生やすなんてすごいな。


拘束しただけかと思ったけど、クズの顔色が少しずつ青白くなっていく。

もしかしてドレインのような体力を奪う能力まであったりするんだろうか。

まあ、冒険者ギルドの中だし、流石に命までは奪わないだろうから放っておくけど。


この精霊魔法なら魔の森での魔獣の討伐も大丈夫そうだな。

拘束すれば、ドレインでもいいし、鋭い先端で串刺しにもできそう。


「はぁー騒動起こすなって言っておいたはずなんだがな〜」

「巻き込まれただけです。冒険者なんだから売られた喧嘩は買うしかないでしょう?」


冒険者のギルドマスターのくせに何を言っているんだろう。

見た目で喧嘩を売られるなら、舐められないためにちゃんと実力を見せる必要があるでしょう!


「もうちょいゴツい奴がいればな。せめてもう1人くらい男が欲しいところだ」

「そんな簡単に仲間が見つかれば苦労はしないよ」


そんなに都合のいい男の冒険者がいるわけないでしょう!

立候補してきたとしてもアンさんの美貌かクリスの可愛らしさ目当ての男だろうし、そんな男どもなんて信用できるわけない!


ギルドマスターも無理だと思っていても言わずにいられなかったのはわかる。

でもさ、信用できて一緒に旅ができる男性のメンバーをすぐに捕まえられるわけないよ?


「まあ、とりあえずランクはあげておくか。Dランクの冒険者を倒せるならDランクでいいだろう」

「おぉう!アンさん!Dランクにランクアップだってー!」

「きゃあ!やっぱりギルド登録で絡まれてのランクアップ!なんて物語みたいな鉄板があるんですね!」


いつもは絡まれて終わりなんだけど、今回は得るものがあって良かった!

あとアンさん、前世は絶対ラノベ愛読者でしょう!

絡まれて模擬戦からのランクアップなんて、ラノベのような出来事はそうそう起こらないことなんだからね!

どっちかというとランクアップ後に絡まれる方が多いんだからね!


「それもそれであんまりないことでしょうに…」

「じいじ何か言った?」

「いえ、何も」


なんか呆れたような声が聞こえた気がしたが、気の所為だったみたい。

アンさんはギルドカードを返してもらって、上がったランクに大はしゃぎしている。


しかしあんなクズなのにDランクの冒険者だったんだな。

Dランクって冒険者としては一人前になるランクじゃないのかな?


「そういえば、首都で絡んできたのもDランクだった気が?」


盗賊を捕まえてCランクにあがったけど、その時も絡まれた記憶がする。


「Cランクは壁なんだよ。だからそこに上がれずDランクで終わる冒険者が多い」

「壁…?」


Cランクに上がるのって規定の討伐数と採集数と盗賊の捕縛じゃなかったっけ?

Dランクの討伐と採集を続けて、盗賊のタイミングが合えばCランクに上がれるんじゃないのかな?


「規定数は公表してないが、Dランクの規定数は毎日達成できたとしても数年かかる数だ」


数年かかるの!?

私は1年も経っていないはずだけど!?


「ランク以上の討伐なんかは加点になっているからな。ブラックベアーやゴブリンの群れの討伐とか、あと遠征でAランクの魔獣も討伐しただろう?それが加点扱いになって早くランクアップしたんだ」

「へぇ〜」


そんな評価方法なんだ。

登録してからぽんぽんランクが上がってたから気にしてなかった。

ランク以上の討伐がなかなかできないから、数年ずっとDランク止まりでランクアップできず、腐る冒険者が増えるってことか。


クリスとかアンさんがCランクにあがるには、Dランクの依頼を数年間毎日こなすか、Cランク以上の討伐や採取を積極的に行う必要があるってことかな。


「困ることがないならこのままDランクでいいんじゃないかな〜?」

「そうですね。ランクアップがないのは寂しいですが、無茶をしてまで上げたいものではないからですね」


そうだよね〜

登録した当初はじいじがEランクとか許せなかったからランク上げに集中したけど、今は私もじいじもCランクだし、クリスとアンさんもDランクになった。

ランクだけをみれば侮られることはない…はずなんだけどなぁ。


「外見が気になるなら改善する方法がなくもないけど、ちょっと宿に戻ってから話そう!アンの分の部屋も取らないといけないし!」


クリスが言うことももっともなので、さっさと冒険者ギルドを後にして宿を確保することにした。

ギルドマスターが何か言いたげにこちらを見ていたけど気が付かないふりをして撤退するよ。


幸運にも大人数の部屋は空いていた。

部屋割りで少しもめたが、結局4人部屋を借りて3人で使うことにした。

もちろん3人というは私とクリスとアンさんだ。


じいじはじいじとはいえ、男性だからね。

クリスはともかくアンさんと同室にするのも気が引けたので。

パックちゃんもいるしまあ4人ということでいいでしょう!


「で、クリスの外見を改善する方法は?」

「そうそう!男がいないってことなら、僕が男になればいいのかなって思ってさ」

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