158 精霊女王のギルド登録
女王の準備が整ったので精霊の国を出ることになった。
女王の代替わりとかしないのかと思ったが、今のところはしないらしい。
用があったら会いに行くというのを聞くと精霊のいい加減さがよくわかるよ。
「そういえば女王は名前ないの?」
「あるにはありますが、精霊の間でしか呼べない呼び名ですね。精霊以外に名前を呼び合う習慣がないので」
前世みたいに秘匿された真名みたいな扱いなのかと思ったが、単に精霊以外が発声できない音だという。
やっぱり人と精霊だと色々違うんだな。
「呼び名がないと不便ですよね。ではアンと呼んでください!」
前世でも自分の名前をもじってアンと呼ばれていたそうだ。
呼び慣れている名前がいいもんね。
「そういえば、私たちも名前名乗ってなかった!」
お互い呼び合っていたから認識はしているかもしれないけど、自己紹介はちゃんとしておかないとね!
ということで改めて自己紹介を行った。
のだがアンさんが困惑したのはじいじの呼び方だった。
「私はリサ様のお世話をしております。じいじでもじじ様でもおじい様でもなんでもお好きなように及びください」
私もじいじの名前を聞いた記憶がなく、正気に戻った頃にはすでにじいじと呼んでいた。
改めて名前を聞くのもどうかと思っていたが、じいじは今回のような自己紹介を毎回しては好きに呼ばせている。
きっと私も同じような自己紹介を受けてじいじと呼んだんだろうな。
「では、執事さんとお呼びしても?」
「はい、喜んで」
じいじの格好が執事風なのでその呼び方になったのだろうけど。
アンさんも結構安直なネーミングセンスの持ち主のようだ。
まあじいじもいいならそれでいいけど。
「おじい様がその服以外を着ているところ見たことないけど、他の服は着ないの?」
「確かにその黒い服ばっかりだね。他の服も似合うと思うけど?」
じいじはロマンスグレーと呼ばれそうなイケじいだから、ちょっと派手な服でも着こなせそう。
ちゃんと頭髪はふさふさだしね!
「今のところ変える気はございません。この服のほうが汚れを気にせず動けますので」
…その汚れというのは返り血ではないよね?違うよね?
旅の中のホコリや泥とかの普通の汚れのことだよね?
「そっかー」
じいじの着てる服もきっと清浄機能がついているはずだから、わざわざ汚れを気にする必要もないもんね!
そういうことだよね!
返答が怖くてそれ以上ツッコミする勇気はなかった。
「じゃあまず冒険者ギルドだね!」
「登録はどのように?精霊でも登録できるのでしょうか?」
冒険者ギルドの登録内容を知らないと不安になるよね。
登録用紙で登録することや偽証しても特にバレないことを伝えた。
「名前はアンで、人族で登録でいいでしょうか?」
「耳でエルフじゃないってわかるから無難だよね」
「うん、まあ大丈夫だとは思うよ」
庶民とは見られない可能性が高いけど。
アンさんは精霊だからか、人族より格段に顔がいい…!
旅装束も普通に見えるが、知識のある人からみればとても高価な素材が使われていることがわかるし、マジックバッグを持っていることも分かる人にはバレるだろう。
私ですらお嬢様と勘違いされたくらいだから、アンさんも確実にどこかの令嬢だと思われるだろうけど、それはもう仕方ない。
「登録したらランク試験も受けれるけどどうします?」
「一応魔法は使えるのですが、ずっと精霊の国にいたので魔獣討伐などはしたことがなくて…それより精霊たちのイタズラの謝罪を繰り返すばかりで」
「じゃ、じゃあ登録だけして、魔の森で採取や魔獣討伐をしてみましょう!」
うっかり相手の地雷に触れてしまったようだ。
アンさんが遠い目をしてしまったので慌てて話しの方向性を戻した。
まずは冒険者登録することを目指してギルドに向かったのだけど…。
「ヒヒッ!今更泣いても遅いぜ?」
「目にものを見せますわ!」
アンさんはすごくやる気になっている…!
過剰防衛にならないようにお願いします!
お察しの通り、すんなり登録するだけで終わらなかったのである。
冒険者ギルドの受付で無事に登録できたまでは良かった。
問題はその後だ。
「おいおいおい、冒険者ギルドはいつから女子供のたまり場になったんだ?」
「爺さんまでいるぜ?ここをどこだと思っているんだ?」
テンプレと思わしき冒険者に因縁をつけられた…!
アンさんと私というお嬢様と勘違いされる女の子と、未成年者に見えるクリス、そしてご年配なじいじのパーティーを見たら、冒険者なのか疑いたくなるのは仕方ない。
どちらかというと依頼者っぽいメンバーだもんね。
登録している現場を見られているから依頼者じゃないっていうのはバレているんだけど。
絡まれた流れからそのまま実力を見せる流れになった。
まさしくテンプレの流れ…!
そんなテンプレは遠慮したいところなんだけど、アンさんはものすごく張り切っている。
私たちを侮辱されたというのもあるが、ラノベ定番のシチュエーションにはしゃいでいるようだ。
はしゃいでいるのはいいけど、対人経験あるのかな?
「人や魔獣との経験はありませんが部下たちの仕置したことはありますので!」
対人経験はないけど精霊をお仕置きした魔法をそのまま使うらしい。
うん、力加減を間違わなければ大丈夫かな。
…万が一ということもあるからアンさんが力加減を間違わないように見張っておこう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます