154 精霊の国

やだ、クリスが物騒なこと言っている。

精霊が釣りの邪魔をしていたから魚が釣れなかったから苛ついているんだろうか。

でも落とし前つけるほど悪さをされたわけじゃないからな〜

それに精霊って何ができるの?


「精霊は自然魔力が高いから色々できることがあるよ〜契約して使役することもできるし、結構長生きだから収集しているものを貢がせることもできるよ?」


物騒な上に恐ろしいことまで言い出した。

釣りを邪魔されたくらいでそんなこというのもおかしいと思うけど。

いちゃもんにならない?


「そうだ!そうだ!そんなひどいことしてないよー!」

「うるさいな!リサお姉ちゃん、精霊のいたずらを受けたら、ちゃんと絞めておかないと図に乗ってどんどん被害が拡大するんだよ〜」


前世で知っている精霊とイメージが大分違うんですけど!?

クリスが言うには精霊は力が強いくせにイタズラ好きでしかもで加減と言うかブレーキが利かないらしい。


放置していると許されたと思ってどんどんイタズラの規模が大きくなって被害がひどくなるんだとか。

だからどんな小さなイタズラでもした時はきつくお仕置きをする必要があるらしい。


前世の妖精と精霊の性格が逆じゃないかな?

妖精は成長したら祝福をくれるのに精霊はイタズラ被害とか、この差は何なのかな?

うん、もうこれはクリスに任せよう。

考えるのが面倒だ。


「とりあえず君たちの国に連れて行ってもらおうかな?」

「な、なんでー!?」

「もちろん上の精霊に責任取ってもらうためにね〜」


ヤのついた人みたいなクリスは、ついに精霊の国に乗り込むことにしたようだ。

丸投げした手前、私は口を挟むことはしない。

捕まっている精霊には申し訳ないけど、これも気軽にちょっかいを出した自分の行動のせいだと反省して欲しい。


「さあさあ国に続く道はどこかな〜?早くしないとごねた分だけ賠償が増えるよ〜」

「っ!」


ニコニコして物騒なことをいうクリスに観念したのか項垂れながら精霊は海の方を指した。


「へぇ〜本当に珍しい!海の中に国への入口があるなんて!」

「海の中?」

(コテン?)


リーンは港街と言っても魔の森もあるし、通常の精霊ならその森に国への入口を作る事が多いのに、捕まった精霊の国は海の中を通るらしい。

例え海の近くに森がない場合でも野原などの緑が多くあるところに繋げるのに、そうとう変わった精霊の国らしい。


「騙そうとしていたらどうなるかわかっているよね〜?」

「わ、わたしたちの国は海の中からしか行けませーん!女王が決めて移動したんです!嘘じゃないですー!」


クリスの眼力に精霊は目に涙をためながら訴えるその様子に嘘はなさそうだ。

でもどうやって海の中に行こうかな。

泳げるとは思うけど、もし入口が深海だと絶対に息継ぎできない。


「こういうお困りごとにはおじい様の魔法でしょう!」

「じいじ?」


できるの?という視線ににっこり笑ったじいじは軽く手を振った。

すると薄緑色の膜が3人を包み込んだ。


「これ、結界魔法?」

「さすがおじい様!動いても保てる結界なんてできるのはおじい様くらいだよ!」


つんつん結界魔法を触ってみるけど、少し弾力がある感じだ。

そしてクリスが言うように少し歩いてみると結界も同じ方向に伸びていく。


うん、無駄に高性能な結界だね!

私も少しは学んだんだよ、一般的には結界は動かせない。

追尾機能のある結界なんてもはや結界ではないということを!

まあじいじにしたらこれが結界のデフォなので突っ込むなんてことはしないけど。


「じゃあ、早速海の中へ行ってみようー!」

(コクコク!)


クリスの掛け声にパックちゃんはとっても楽しそうに頷いている。

海の中なので人に見られることもないから、堂々とみんなで一緒にいることができるのが嬉しいのだろう。


やっぱり寂しかったんだね…。

これからもパックちゃんと一緒にいれるように後でじいじに相談しよう!


「こ、こっちですー」

「へぇ〜海の中って初めてかも〜」


精霊に導かれるまま海の中に入っていくと、そこは美しい景色が広がっていた。

群れになった魚に空から差した陽があたり、キラキラ輝いている。


前世の水族館で見たことある景色だけど、そのスケールはまったく違う。

遠くまで続く青の景色にクリスもうっとりしている。

数多の記憶を持つ世界樹でも海の中には入ったことがないようだ。


樹がわざわざ海に行って潜るなんてしないからね。


「ここになりますー」


精霊に案内されて着いたのは海底の何の変哲もない岩場だった。

精霊の国の入口と言われてもどこが?と思えるほど普通に思える。


「ここからどう入るのかな?」

(コテン?)

「はわわ!ここに精霊が魔力を通すのですー!」


ジト目でクリスが問いかけると精霊は先ほどムギュッとされた記憶を思い出したのか、慌てて岩場にタッチした。

するとあっという間にレリーフが刻まれた扉へと変わり、開いていく。


開いた先には花畑と丘らしきものが見える。

けれど周りの海水が流れ込むようなことはない。

ダンジョンと同じような異空間に繋がっているみたいだ。

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