153 釣り場
そして翌日、借りた釣具を携えて教えてもらった漁場にやってきました!
ここでは手頃な魚が釣れるらしい。
まあ釣り竿を貸し出しているところからして、それくらいの魚しか釣れないんだと思うけど。
「見たところ浅瀬かな?」
「貸し出しているところだし、海に落ちても大丈夫な場所にしているんじゃないかな?」
こういう体験をしたがるのは平民だけじゃないからね。
いくら自己責任と伝えてあっても、貴族の方に万が一があったら揉めるかもしれないしね。
気を使わないと大変だよね。
釣りの場所は浅瀬でも、少し奥へ行けば深くなっているようだ。
沖の方に網でも沈めてあるのかブイっぽいものが見える。
そのせいかここは釣り場と言うより海水浴場っぽいな。
たぶんあの網で大物の海の魔獣が入って来ないようにしているんだと思うけど、その方法も転生者の提案っぽいな。
「まずは一本釣りをしてみよう!」
「おー!」
何事もチャレンジ!ものは試し!
前世でも一本釣りなんてしたことないけど、何が釣れるか楽しみだ!
「…釣れないね〜」
「釣れないね」
けれど人生というのはそう簡単にいかないものだ。
始めて10分、竿はうんともすんとも動かない。
釣りは待つことが醍醐味とか聞いたことあったけど、これは私にはわからないかもしれない。
釣れない人は1日釣れないこともあるって聞いたことあるけど私には絶対無理だ。
まったく動かないこの状況に飽き始めている。
よく釣りをするところだと魚も学習して食いつきが悪くなるって聞いたことはあるけど、この釣り場にそんな利用されているとは思えないんだけどな。
「なーんかおかしいんだよね〜魚の気配があるのに、こっちの餌に気づいていないっぽいんだよね?」
「こっちの餌に気づいてない?」
ちゃんと動かして餌をアピールしているのに?
お腹いっぱいとかじゃなくて、気づいていないっていうのはどういうことだろう?
餌に何か変なものを混ぜてないよね?
「ほいっと!」
「わぁー」
餌を確認するために竿を引き上げたら、何かがくっついているではありませんか!
ってなにこれ?
確認するため捕まえようとして見たが、顔を近づけた途端にその何かが見えなくなっていく。
これ本当になに?
「めっずらし〜こんなところで見るなんて」
消えたと思った何かをクリスはいつの間にか捕まえていた。
差し出されたクリスの手の中には小人がもごもごもがいていた。
「これは精霊だね〜森にいることが多いから、まさか海の中にいるとは思ってなかったよ」
「は、離して〜」
小さい声だが抵抗している声が聞こえた。
へぇ〜精霊って話せるんだね、初めてみたよ。
妖精とは違うのかな?
「精霊はね、妖精とは違うんだけど、人族は妖精が成長したと思っているっぽいんだよね〜」
(ジーッ)
精霊と言う言葉に反応して契約している妖精のパックちゃんが擬態から解いた。
クリスが捕まえている精霊に近づいていった。
確かに妖精であるパックちゃんは話せないけど、クリスの捕まえている妖精は話せる。
人が成長した姿と勘違いしても仕方ないのかもしれない。
ちなみにパックちゃんのことはクリスが同行した初日に知られている。
元が世界樹のためか、妖精とかそういう気配に敏感なんだとか。
だから目の前の精霊もすぐ気がついたみたいだ。
パックちゃんは他の人がいる前では姿を表すことをしないほうがいいから、パックちゃんが擬態を解くのは寝る前の女子会のときだけだ。
今は海の近くで隠れるところもないため擬態を解いたようだ。
(フルフル)
「もしかして精霊が気になって出てきたの?」
(コクコク)
好奇心で出てきちゃ危ないじゃん!
パックちゃんももうちょっと気をつけよう?
今は精霊がいるから誰かに見られても精霊のせいにすればいいけど、見つかったら大変なことになるよ!
やっぱりいつも擬態ばっかりで寂しいのかな?
魔の森に行くときは擬態を解いて一緒に行動できるように何か考えよう。
「で、この精霊どうする?釣りの邪魔していた訳だし、どう落とし前つけてもらう?」
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