151 穏やかな旅路

チーズドッグのレシピを書き終わった私はすぐに宿に戻ることにした。

これ以上余計なことを言って登録やら何やら巻き込まれないために!


ちなみに原因と保湿剤の装飾代についてはリンダさんとエミリーさんに丸投げした。

すでにもらった保湿剤の金額と釣り合わないと言われるが、そもそも適正価格なんてわからないし、追加の報酬がなくても全然構わないから。

こういうことは専門の人に任せたほうが丸く収まるだろうし。


そうやってお任せした2人が正当な評価を出すために鑑定士を雇い、パッチワークに使われていた布の価値を知って絶叫したことを私は知らなかった。



「では首都でのやりたいことも終わったので、港町リーンに向けて出発したいと思います!」

「おー!」


翌日、首都を出発した。

新鮮な魚介類も尽きてきたから早めに港町に行きたいだけで、決して逃げるようになんてことはナイヨ。


首都にも魚介類は売られているけど、干物などの加工されたものが多く、魔法が使える異世界でも品質を保つための技術にはお金がかかるようだ。

技術料が販売価格に上乗せされるため、新鮮な魚介類をお安く手に入れるためには港まで行くしかない。


それにクリスも早く海を見てみたいだろうし。

そう思いつつ向かった旅路だが、前回みたいに護衛兼荷物運びの任務中ということもないので、自分たちのペースでゆっくり歩いていった。


任務中は立ち寄った街をゆっくり散策することはできなかったから、少し散策に時間を取ることにした。

前回服飾で有名なリーヴォルの街で肌着などを買ったくらいだったからね!


また寄った街の商業ギルドのお姉さんにお勧めのお店を、特に美味しいお店を紹介してもらった。

もちろん紹介手数料はかかるけど、その価値はあるよね。


そして商業ギルドのお姉さんのお勧めの店は最高だった。

コスパがいい町中華っぽいお店と金に糸目をつけないならと教えてもらった美味しいイタリアン系のお店を教えてもらったので、昼食と夕食に食べに行ったのだがどちらも大変美味しかった!

大変、大・満・足!


そしてその日は宿のふかふかのベッドで熟睡したのだ。

やっぱり旅はこれくらいのゆとりあるものがいいよね。

何かに巻き込まれてばかりだったから、ちょっと働いて美味しいもの食べてゆっくり散策する時間が人生には必要なんだよ。


そうして寄る街で同じように商業ギルドでお勧めの店を聞いては食べて休んでを繰り返し、何事もなく港町リーンに到着した。

本当に不思議なことに道中は何事も起きなかった。

街に寄れば何かと巻き込まれることがあるはずなんだけど、何でだろう。


エストガース国に来て1年くらいは経つから、一般人として冒険者として馴染んだのかもしれない!

それだったら嬉しいな〜!


「まずはギルドに行って森の状況とか確認しておこう!」


魔の森で遠征した経験があるとはいえ、それも随分前の話だ。

しかも行った時は異変がある状況だったので今の森の状況を把握しておかないとね。

クリスも冒険者業が板についてきたのか、うんうん頷いている。


「ということでお久しぶりです!が、何でギルドマスターの部屋に呼ばれているんでしょうか?」


本当に何で?

冒険者ギルドの受付で森の状況を聞こうと思ってギルドカードを見せたら、すぐさま部屋に案内されたんだけど。


「自覚がないのか?お前さんたちのやらかしはこちらに共有されているんじゃぞ?」

「なんで、いち冒険者の情報が共有されるんでしょうか?」


やらかしなんて…この間、商業ギルドでパッチワークのレシピを登録したくらいしか記憶がないよ!

商業ギルドだから冒険者ギルドとは関係ないはずだ。

どちらかというと、じいじの方がやらかしているんじゃないのかな?


「冒険者登録したのがこのリーンの街だからな〜。どこぞのドラゴンを倒しただの、オークションの代金を取りに来ないだの、ダンジョンの裏道を見つけただとか色々聞いているぜ?」


うっ!

どれも身に覚えがある!

いやしかし、ドラゴンを倒したのはじいじだから私のせいじゃないけどね!


「大体な、冒険者なのに寄った街の冒険者ギルドに来ないっていうのはどうなんだ?」


せめて途中で滞在報告があれば、後追いできたんだけどなと呟くギルドマスターに文句を言われるが、ギルドに寄ると面倒ごとばかり起きるので寄りたくなかったのだ。

だから本当に必要なときにしか立ち寄ることはしなかった。

まあ、その数少ない立ち寄ったときも絡まれたりしたんだけどね。


「まあ、そんなこともあって念の為にこの街に来た理由を確認するために呼んだんだよ」


他のギルドと同じような騒動が起こってはたまらないとギルドマスターが呟くが、ぶっちゃけ聞いたところで遭遇する時は遭遇するのだ。

首都からリーンまでの道のりが穏やかだったからリーンの街で何か起こるかもしれないとふと思ってしまった。


これはフラグじゃないよね?

自分の考えに冷や汗が流れそうだけど、フラグが立ったとしても証拠なんてないからそんなことは伝えられないし伝えたくない。


なので当初の目的である魚介類の仕入れと、仲間になったクリスのために海を見に来たこと、魔の森で活動をしに来たと伝える。


それを聞いたギルドマスターはクリスをじっと見つめていたけど、大きなため息をついて問題起こすなよとだけ言った。

頷きはしたものの、起こる時は起こるのでその時は諦めて欲しいと心のなかで返事をしておいた。

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ギルドマスターの苦労は86話以降の閑散話でお察しください〜

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