150 登録三昧

布で箱を飾るって考えがないのか。

これは盲点だった。

確かに豪華な箱と言えば彫刻が施された箱だったということを今思い出した。

作っている時に思い出してよ私!


前世の漫画とかで貴族の婦人とかはレースやリボンなどで衣装箱を飾り付けているイメージがあったから、当然のようにあるのかと思い込んでいたようだ。


「あとパッチワークっていうのは四角の違う布地を縫い合わせることで、リサのように花みたいな模様になっているものはパッチワークとは言わないわ」


えぇ!パッチワークのパターンは四角だけなの?

どういうこと!?

三角形や六角形を使えばもっと色んなバリエーションの柄ができるはずなのに!

まさかワンパターンしかないの!?

パッチワークを登録した転生者ちゃんとそこまで登録しろよ!

前世の婦人会から抗議が来るぞ!


「さらにいうと間に綿か何かを詰めているようですね。やわらかい印象と手触りもですが、保湿剤が割れるのを防ぐ緩衝材にもなりますね」


あぁ〜そこまで考えてなかった。

ただ、前世のパッチワークで使われていたのは厚みのある布のイメージだったから入れただけなのに、まさか衝撃吸収的な扱いになるとは。

思いもよらない副産物だ。


結局まとめて全部登録することになった。

しかもパッチワークに至ってはまだパターンがあると知られ、知っている限りのパターンを書かされたのだが、これが大変だった。


前世の母がちょっと手芸を嗜んでいたので、手芸の本を見たことがあった。

ひし形や円形を使った幾何学模様や三角形を使ったリボンやチューリップ、風車みたいな模様などなど結構覚えてそれを書く羽目ににに…。


素知らぬふりをしようと思ったけど、無理だった。

書いている途中でリンダさんとエミリーさんがダッグを組んで色々質問してくるのだ。

レシピを書く方に集中している時に質問されると知っている情報だとポロッと口走ってしまう。

質問に答えず書くことに集中していれば良かったのに、それに気づいたのは全て書き終えた後だった。


「お疲れのところ申し訳ないのですが、確認がございまして。こちらの宝飾に使われているのは世界樹の涙で間違いないでしょうか?」


性も根も尽き果てている私にお使いのお兄さんは遠慮なく問いかけてくる。

前回も深紫の涙だったし『涙』つながりの宝石になってしまったが、何か懸念があるのだろうか?


「疑っているわけではありませんが、世界樹の涙もとても希少です。本物であるなら出どころの確認をろ思いまして」


確かに前回といい、今回といい希少といわれる宝石がポンポン出てくるのはおかしいか。

前回の深紫の涙はその魔獣を討伐したから冒険者ギルドにも記録が残っていた。

だから確認する必要はなかったかもしれないが、今回の世界樹の涙については確認ができなかったんだろう。

盗んだものだと思われたくないので、ここは正直に。


「えっと、エルフの里に行きまして、その縁で」


クリスからもらったなんて話さないけどね。

エルフの里でもらったと言うなら嘘だけど、エルフの里に行って、クリスに会ってそのクリスからもらったものなので、嘘ではない。

ただ端折っている言葉があるだけで。


この言い訳はネレーオさんに聞かれた時のために考えていたものだ。

あとは聞いた人がエルフの里でもらったと勘違いするかもしれないだけで、決して騙しているわけでない。

ただ説明を端折っただけ。


「エルフの里ですか…あそこも一般人には入れないところだと思いますが。確かにエルフの里であれば世界樹の涙を手に入れることはできそうですね」

「信じられないなら、エルフの里の族長に聞いてみたら?リサお姉ちゃんが滞在していたことを教えてくれるからさ〜」


お兄さんの言葉にクリスは笑顔なのにどこかトゲトゲしい声色で突っかかった。

両者の間で一瞬雷がバチバチしていたように見えたのは気の所為だよね?

割と誰にでも楽しそうに話すクリスにはちょっと珍しい光景だ。


「…そうですね。大丈夫だとは思いますが念のため問い合わせしてみます」


突然始まったお兄さんとクリスのにらみ合いは、お兄さんが引き下がって終わった。

何だったんだろう。


「エルフの里に行ったってことはまさか代替わりの儀式に参加したの!?」

「代替わりの儀式?」


そんなのあったかな?

私がエルフの里でしたのは、魔法の訓練と薬草栽培の勉強と洋服の仕立てくらいで、儀式なんて見てないけど。


「…儀式はあったけどリサお姉ちゃんは屋台をしていたから見てないはずだね〜」

「あぁ!あの時にあったんだ!忙しくてまったく知らなかった!」


あのチーズドッグが飛ぶように売れて完売して翌日の販売をどうしようか右往左往していた時にどうやらそんな儀式が行われていたらしい。

それなら知らなくて当たり前だね。

チーズドッグの販売で頭いっぱいだっただろうし、話す余裕すらなかった。


「チーズドッグとはどのようなものでしょうか?レシピ登録は?」

「え、えっと…」


おっと別のところから新たな質問が飛んできたぞ!?

チーズドッグのレシピ登録はしていないけど、そもそもレシピ登録してあるものだったりしないよね?

その場合レシピの使用料って払わないといけないんだっけ?

いやレシピは見ていないからその場合は免除なんだっけ?

そこまで深く考えず屋台で売っちゃったけど、ちゃんと確認しておくべきだったかも!


「ホットドッグのレシピを買わずにリサ様が作ったものになり、1日だけのお祭りの出店であればレシピ代も不要のはずです。ですよね?」

「えぇそうですね。1日限りの祭りでの使用の場合徴収できる額が大したものではないですから」


セーフ!

レシピ代は払わなくていいようだ!

いつの間にかじいじが確認していてくれたようで良かったよ〜

次から何かを作る際は確認するように気をつけよう。


「ただ、チーズドッグはホットドッグの派生になりますが、レシピの登録はしておりませんね」

「では派生レシピとして登録をお願いしますね?」

「…はい」


じいじのフォローがあっても逃れられないものがありました。

ちょっとパッチワークのレシピですでに手がフルフルなんですが。

後日とかにしてくれないかな?

エミリーさんだって登録するものがいっぱいでお疲れじゃないかな?


少し期待してエミリーさんを見たけどにっこり笑って無言の督促をいただきましたぁ。

そんなことで見逃してはくれないですよね。

手首に回復魔法をかけて最後の一踏ん張りだ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る