149 献上品の大騒動
「リサ、久しぶりね」
「リンダさんもお久しぶりです!連絡取れるの早かったですね!」
リンダさんは緋色の獅子というCランクパーティーで活動をしているから冒険者ギルドなどに伝言を頼んでもすぐに連絡が取れないと思っていた。
なので数日で連絡が取れるなんて驚きだ。
「リサが献上品をなんて聞いたら何が何でも来るわよ!ちなみに他のメンバーはまだ遠征中よ」
「そこまで緊急なものではないと思うんですけどね〜」
希少なものではあるけど、リンダさんが冒険業を中断してまで急いで来るようなものではないと思うけど。
「リサのなんでもないはなんでもなくないから急いで来たのよ」
「はい?」
ぼそっとリンダさんが何か呟いたようだけど、なんだか疲労の色が濃いので聞かないようにした。
「あっお兄さんもお久しぶりです!」
商業ギルドの応接室にはリンダさんの他に男性がいた。
よく見ると前に深紫の涙を献上した時にお願いしたお兄さんだった。
いくら貴族の窓口がリンダさんとはいえ実際に運ぶのはその貴族の担当者の人だもんね。
「お久しぶりです。今回もとんでもないものを献上していただけるとか」
「はい!こちらですね!」
まず取り出したのは献上する世界樹の涙で作った宝飾品から。
ネレーオさんの宝飾師としての地位を確立するためにも後ろ盾の方に必ず見て欲しいものだ。
「っ!」
「これは、また…」
リンダさんとお兄さんは宝飾を見て息を呑んだ。
当然だよね!
腕のいいネレーオさんが希少な世界樹の涙を使って作った逸品なんだから!
「…あとは依頼された保湿剤ですね」
2人の意識が宝飾から離れるまで待とうと思ったのだが、全然戻ってくる気配がないので次に預ける保湿剤を出した。
今回は後ろ盾の方と依頼された貴族の2人分なので、昨日急いで作った飾り箱を2つ取り出す。
模様を変えると格差が出るかもしれないので、模様は同じにして布地の柄違いにしてどちらの物かわかるようにした。
中身は同じ保湿剤だから、同じでも良かったんだろうけど一応見分けはできるようにしておいた。
「こちらもお届けお願いしまーす」
蓋を開けて中身で保湿剤であることを見せる。
これで献上と依頼の納品は完了だね!
「…っ!リサ!」
「はい!?」
叫ぶようにリンダさんが名前を呼んだので反射的に返事をした。
ど、怒声に聞こえるのは気の所為にしたいな…。
それは叶わない希望だとわかっていても願わずにはいられない。
だってリンダさんの表情が般若になりつつあるから。
「…リサ様」
「…はい」
エミリーさんにも名前を呼ばれそちらを向くと、優しい笑みの瞳にはひんやりとした光が浮かんでいる。
…あぁ、なんかやらかしたんだな、私。
「…ごめんなさい。理由がわかりません」
しかしやらかした要因に心当たりがないので正直に謝るしかない。
変えたところといえば、貴族向けにちょっと外見をデコレーションをしただけだし。
技術はないから見かけで豪華っぽく見せるしかなかったんだけど、あまりにも拙いものだから貴族に納品するには向かないのかもしれない。
前日に慌てて作ったし、まあ仕方ないかな。
「多分リサが思っていることは違うわよ」
「拙い飾りだから貴族の人に相応しくないのかと」
「違います。逆なんです。あまりに凝りすぎていて預かっている依頼料と釣り合いが取れません」
えっ?こ、凝りすぎた…?
いやでもラメもどきの瓶とパッチワーク的な飾りをつけた箱だよ?
「なんで不思議そうな顔をしているの。まあわかっていないのは伝わるけど」
「でも、瓶に水晶を砕いたものを混ぜたのと、箱にパッチワークを貼り付けただけですよ?」
化粧品の瓶を宝石で飾っていたり、パッチワークの布地で作られたカバーを見たことがある。
だからそんな珍しいものではないはずなのに何でこんなことになっているんだろう?
「…1つずつ確認していきましょう。まず瓶ですが、瓶に宝石などを足して飾り付けたものはありますが、瓶そのものに何かを混ぜて装飾したというものはありません」
「な、なんで?」
瓶を成形する時にちょっと混ぜたものをまとわせるだけでできるはずだよ?
私は魔法で横着したけど、そんなに難しくはないはずだ。
宝石を足したりするより安くて簡単にできるはずなのに。
「とりあえず今までにはなかったので後で登録ですね」
今までなかったんだ。
スライムゼリーとか簡単に扱えるはずなんだけど。
今までの転生者さんは登録しなかったのかな。
愚痴っても登録されていないんだったら仕方ないけど。
「次は箱ですね。パッチワークという技法はありますが、その布地を箱に貼り付けて飾り付けるという方法は見たことありませんね」
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クリスが呆れた理由がついに明かされる…!なんてね〜
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