148 憧れの白い例の粉

ソースに合わせてチキンステーキに使う部位や焼き方を変えてあるっぽい。

乏しい語彙力では表現できないが、照り焼きは以前より香ばしい。

トマトソースは鳥の脂を閉じ込めたように焼かれていて、溢れ出した脂とトマトソースが合わさって美味しい!

残ったソースにパスタを入れて食べたいくらい!

ホワイトソースは逆に脂身の少ない部位を使って柔らかめに焼いてあってソースに絡んで美味しい…!


本当にどのソースのチキンステーキも本当に美味しい!

これは各種類のチキンステーキをできるだけ多く焼いてもらって、アイテムボックスに保管しておかないと!

絶対すぐなくなっちゃうよ!


チキンステーキはできるだけ多くと依頼しても給仕の人を困らせるので、とりあえず1日各ソースごとに10枚ずつ焼いてもらって、受け取れるだけ受け取るようにした。

こんなにたくさん買っているのに、今持っている現金にしたら微々たるもの。

こういう時に小金持ちになったんだなっと思うよ。


まあでもお金を使う機会はこういった美味しいものがある時ぐらいだから、使えるときは使っておこう。

むしろ美味しいものに出会ったときには逃さないようにしないとね!

意外とお金があっても手に入らないものが多いから、お金を払えば手に入るものは手に入れておいたほうが、あのとき手に入れていれば!なんて後悔もしたくないし。


リンダさんに連絡が取れるまでまだ数日はかかるだろうから、その数日間はエミリーさんのおすすめのお店をまわっていくことにした。

飲食店はもちろん新鮮な野菜や珍しい香辛料などを売っているお店にも行った。


色々なものが集まる首都だからこそ、珍しいものもいっぱいあった。

個人的に嬉しかったのはホットケーキミックス!

まさかあると思わず、何度も確認してしまった。


小麦粉や膨らまし粉や砂糖などが混ぜられたホットケーキミックス!

通常は高級レストランや宿に卸しているとのことで、販売価格もそれ相応に高かったけど、これがあれば、ホットケーキはもちろん、クッキーやマフィン、パウンドケーキにスコーンも楽に作れる!


アイテムボックスに入れておけば劣化もしないから、他に影響がない範囲で買えるだけ買ったよ!

今後もなくなったら補充できるように、首都以外で販売しているところももちろん確認しておいた。


いや〜この出会いのために首都に来たんじゃないかと思うくらい運命的な出会いだったね。

ダンジョンでじいじが果物を採取できるようにしてもらった時くらいテンションが上がった。


すぐに宿の料理長の元に行って色んなものを一緒に作った。

スタンダードなホットケーキはもちろん、卵白を泡立てたふわふわのパンケーキ風ホットケーキも。

これに生クリームとダンジョンでとってきた果物を飾って美味しくいただいた。


その合間にナッツやドライフルーツを混ぜたクッキーやマフィンにスコーンも作る。

軽食としても優秀なので保存できるように大量に作ってしまう。

残念ながら料理長のご指示によりこれらのレシピも登録することになったけど…。


ホットケーキミックスがあるのに、なんでそれを使ったレシピが登録されていないの!?

ミックス粉を作った転生者は何をしているのよ!

まさか本当にホットケーキだけを作るために作ったわけじゃないわよね!?

おかげでレシピを書く手がプルプルしてきそう。

レシピを書くので疲れた心は料理長が作ってくれたふわふわホットケーキで癒やしました。


ずっと料理長を独占するわけにはいかないので、翌日からは宿の部屋で思いついた食べたい物を作りまくった。

ワーキングルームの魔法があって本当に助かるわ〜

じいじの小型システムキッチンと一緒に使えばあっという間に調理場に変身!


ダンジョンで採れた果物もそのままにしていたけど、いくつか加工してしまおう!

今世のドライフルーツは保存用として作られているためかなり水分を抜いている物が多い。

それもそれで美味しいけど、前世で食べていた砂糖をまぶした柔らかめのドライフルーツが食べたい!

歯ごたえがありつつジューシーなドライフルーツを!


あと果肉を残したジャムや砂糖のシロップに浸した所謂フルーツ缶詰と冷凍した果物も作って瓶詰めする。

あとはすぐ飲めるようにフレッシュジュースと氷を混ぜたスムージーも作っておく。


今は首都でリンダさんを待っているから時間があるが、旅に出たり魔獣の森に籠もったりしていると嗜好品の調理まではできない時がある。

いつでも美味しく食べれるように準備に余念はない。


そんな作業を数日続けていると商業ギルドより連絡が届いた。

リンダさんと連絡が取れたので、早速明日来て欲しいということだった。


「やばい…」


リンダさんから連絡が来るのはもう少し時間がかかるだろうと思っていたので、全く準備をしていない。

明日までに準備しなくてはいけない…!


「あれ?保湿剤は前に作ったものがあるんじゃないの?」


連日ホットケーキや果物を加工するリサの様子に心配になったクリスが尋ねたときは、そう答えた。

それで間違いない。保湿剤は作ってある。保湿剤は!


「貴族の方にお渡しするなら入れ物や包装もこだわらないと!」


前回はリンダさんとエミリーさんにお任せしたけど、毎回お願いするわけにもいかない!

まだ時間があるだろうと後回しにしておくんじゃなかった!


「貴族の方が気に入る細工とか布の刺繍とはできないから素材で勝負するー!」


準備するのはこの間ヴェトネスの街で採掘した小粒の水晶を研磨してスライムゼリーと混ぜる。

保湿剤を入れている瓶に薄くコーティングしていくように魔法で圧着していく。

これで砂状の水晶がキラキラ反射してラメ入りのガラス瓶になる。


瓶ができたら次は入れ物だ。

世界樹の涙を使った宝飾品についてはネレーオさんとじいじが準備してくれたけど、保湿剤の分は準備していなかったもんね。


保湿剤は本数が多いので袋は無理だろうから箱を作っていく。

木材そのままじゃあまりに味気ないので、エルフの里のノーラ先生とワンピースなどを作った時に余った布をパッチワークみたいにしてそれを貼り付けていく。

柄のせいか洋風の飾箱っぽくなったんじゃないかな、見栄えは悪くないだろう。


「ふぅ、どうにか間に合った!」

「リサお姉ちゃんって時おりどんでもないことやらかすよね?」


クリスから呆れたような言葉をもらったが、この時はしなきゃいけないことを後伸ばしして、力技で凌いだことだと思っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る