147 忘れていたお金

まあここでどうこう言っても結果が変わるわけじゃないし、見る人から見ればクリスの実力はわかるってことでしょう。

最後に現れたガタイのいい人も強そうだったし、多分。

あんなに強気で筋肉がムキムキなら冒険者を引退してギルド職員に転職した人かもしれない。


「何はともあれ無事ランクアップできたことを祝って美味しいもの食べに行こう!」


変な人に絡まれたけど、いつの間にか抗議の対象が冒険者ギルドになって最後は私のランクについてはなあなあに終わって良かった。

心置きなく美味しいものを食べに行けるよ。


「うふふ楽しみだなぁ〜」

「クリスも食べたことあるけど、お店でできたてを食べるのはまた一段と違うと思うんだ〜」


今から行くのは例のチキンステーキのお店だ!

レシピ登録したソースも弟さんが販売しているらしいけど、あの味を提供している店主がレシピ通りのソースで終わるはずがない。

きっとより美味しく進化しているに違いない!


「さあ行こう!」

「あーすまない、そこの因縁つけられた冒険者に共有があるからちょっとこちらへ来てくれ」


気合をいれた瞬間にこれだよ。

呼んだのはあのガタイのいい人だから嫌なことは言われないだろうが、呼ばれた理由はさっきの自己中のことだろうか。


「悪かったな。祝いの前に時間もらって」

「いいえ。それよりお話というのはさっきの?」

「あぁあれは大丈夫だ。こっちで対処しておくからな」


懸念していたことではなかったようでよかった。

なら何の話だろうか?


「一応、落札金額は口座には入れておいたんだが、それぞれの売却額を説明する必要があるんだ。面倒なんだが聞いてくれ」


そっと出された紙を見ると魔獣と金額が一覧になっていた。

おや?この魔獣たちはどこかで見た記憶が…?


「おいおい、まさか知らないとかじゃねぇよな?」


首を傾げたのを見られていたようで、ガタイのいい人が口元を引きつらせている。

ちょっと記憶の波が来ないだけで、引っかかりはあるのですががが。

老化ではないと証明したいので頭を捻って思い出したい!


「本当に覚えてないか?これを討伐したのお嬢さんたちって聞いているぜ?」


討伐?

首都ではしていないからそれより前だとすると…あっ!


「魔の森の遠征の魔獣か!」

「そうだ!良かった思い出してもらえて」


そういえば護衛依頼と一緒にオークションに出すために持ってきたんだった!

もう随分前のことだから記憶の隅に追いやられていたよ。


「いやー預けてからずっと首都にいなかったもので…」

「まあずっと首都にはいなかったからな…ってなるか!冒険者なら特に買い取りに出したお金は大事にしろ!」

「はは、そうですよねー」


笑って誤魔化してみる。

手元に結構な現金もあるし、高い買い物もしないからお金が足りないってことが最近ない。

もし現金がなくなっても討伐や採取をすればすぐ現金化できるから、口座から下ろすっていう意識すらなかった。


オークションで落札されたリストを見てみると、やっぱりランクが高い魔獣は相応に高く売れたようだ。

ランクが高いと頑丈なだけあって武器や防具に使えるし、剥製にしても見応えがあるだろう。

意外と内臓系が薬の材料になる魔獣も含まれているから落札されなかった魔獣はなかったようだ。

港町のギルドマスターの進言通りオークションに出して正解だね。


落札されたお金はそのまま口座に預けておく?

そういえば商業ギルドの口座にもお金入っているんだったー。

貯まっていくだけっていうのは不経済かな?


いやいや私よりお金持っている人はたくさんいるだろうし、貯めておくから不経済ってことはないだろう、きっと。

前世より貧富の差が大きい気がするから、私がちょっとお金を使ったところでそれほど影響はないだろう。

老後までに定住する街を見つけたらその時一括で払えばいいだけだしね!

特に問題ないということでさっさとギルドを後にした。


ちなみに巻き込んできた自己中野郎のその後は知らない。

巻き込まれただけで、こちらに非はないしあんな野郎にはこれっぽっちも興味がない。

あれだけ冒険者ギルドを責め立てたんだから要注意人物にされているだろう。

最悪ギルドカード剥奪かな。


仕方ないよね、証拠も何もなしにひたすら喚き続けたんだから。

ランク試験中だったし、試験妨害と捕らえられても仕方ない。

まあ、そんな奴のことなんかは忘れて、さっさとチキンステーキのお店に行くのだ!


「すいませーん!チキンステーキ3枚お願いしまーす!」

「はーい!味付けはどうされますか?」


久々にきたチキンステーキは以前来た時より混み合っていた。

そのため注文を受ける給仕の人が増えていた。

前に来たときには照り焼きのみだったのに、いつの間にか味付けの種類が増えている。

私の登録したソースのレシピを使ってくれているようだ。


「う〜ん、3人別々の味付けにして分けない?」

「賛成ー!色々な味を食べたいからね!」


同意も取れたので、照り焼きのほかトマトソースとホワイトソースを注文してみた。

届いたチキンステーキを3等分にして切り分け、早速食べてみる。


「…んんーん!美味しい!」

「うん!前食べたときより美味しくなっている!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る