145 ランク試験でおなじみの
やってきましたランク試験日。
冒険者ギルドには学生と思われる子たちが続々と集まってきていた。
毎年恒例の光景みたいで首都に在籍している冒険者たちはもうそんな時期かと呟いていた。
案内された地下の訓練場には集まったGランクの子たちでいっぱいでした。
思ったより小さい子もいるのでクリスがその場所にいても違和感がなくて良かった。
ランク試験は攻撃方法で試験が分かれているようで、クリスは遠距離武器の的あての試験に向かった。
短剣を使った接近戦もできるけどクリスの体格でそれをすると目立つからね。
揉め事に巻き込まれないように徹底して参加するよ!
受験者は一人ひとり名前を呼ばれて的に当てていく。
今回クリスは世界樹の弓矢は使わず首都でも売られている一般的な弓矢を持ってきた。
どこに目ざとい人がいるかわからないから、なるべく隠す方向で動いている。
「よっと!…ごにょごにょごにょ《エアーカッター》」
「おぉー!」
何の気負いもなくクリスは的の中心に矢を当て、最後に風魔法で的を半分に切り落とす。
瞬間、周りから小さいどよめきが起きる。
クリスがいつものように風魔法を使うと的の後ろの壁まで傷をつけてしまうので、試験では威力を抑えるように言っておいたのだけど、どうやらこれでも驚いてしまう威力のようだ。
ちなみに魔法発動前にごにょごにょと呟いたのは詠唱を破棄して魔法を使うことがバレないようにするためだ。
試験前に本当に打ち合わせしておいて良かった!
後はすべての受験者の試験が終わるのも待つだけ。
相応のランクになるようなこと聞いたけどクリスの場合はどんな判断になるんだろう?
Fランクは確実としてもあの威力ならEランクもいけると思うけど。
「君は試験に行かないのかい?」
「はい?」
訓練場の入口の近くで見守っていたら身なりが整った男の子に声をかけられた。
もしかしなくても受験者に間違われた?
「私は試験を受けませんが」
「全員受けないと結果を出せないだろう。怖気づいたのかもしれないが早く行きたまえ」
おぉ人の話を聞かない上に、この言い方は典型的な貴族っぽいな。
腕を組んでドヤ顔しているけど、自分は間違ったことを言っていないと思っているのは滑稽だと思う。
まあそんなんだから誰も指摘してくれないのかもしれないけど。
言い募ったところで相手が受け入れるとは思わないので、軽く頭を下げてから何も言わずその場から離れる。
こういうのには物理的に距離を取るのが一番だ。
私が動いたことで相手も満足してどこかに行ったようだ。
「何か変なのに絡まれていたね〜」
試験が終わって他の受験者の様子をみていたクリスが近づいてきてくれた。
まさかじいじも一緒にいたのにあんなこと言われると思わなかったよ。
何より成人している私に未成年の試験を受けろというのはどういうことなんだろうね?
それってつまり背が低いチビに見えたってことはないよね?
「ああいう自分の意見を正しいと思い込んでいる輩には正しい対処でしたよ」
「だよね?物理的に距離を取るのが一番だね!」
「でも態度からして良いところの坊ちゃんみたいなのになんで冒険者になるんだね?」
クリスの疑問は最もだ。
横柄な態度と身なりから裕福な出であることは間違いないだろう。
ならばわざわざ冒険者になる必要なんてない気がするな。
私の冒険者のイメージは、継ぐ家もなく手に職もない人がなるものなんだけど。
もしくは定住しない旅人!
私も世界を見て回りたいから冒険者になったし。
「まあ個人の自由だし、考えなくていいんじゃない?」
結局は知らない赤の他人のことだし。
今はクリスの冒険者ランクが何になるのかだけを気にすればいい。
試験の様子をみるに、もう少しで終わりそうだし。
「現時点で試験は終了となります!結果が出るまでそのままでお待ち下さい」
「待ちたまえ!まだ受けていない受験者がいるではないか!」
聞き覚えのある声に背筋が寒くなった。
まさか、そんなわけないよね。
「ほら!この者はまだ試験を受けていないぞ!」
「ぎゃ!」
私に向かって指をさしてきたのはやっぱり予想した通りの人で思わず悲鳴を上げてしまった。
当たって欲しくない時ほど勘がよく当たりますね!とヤケクソに心の中で悪態をつくけど、訓練場の視線をいっぺんに集めた状況は変わらない。
「私は試験を受けないと言いましたけど」
ここで変に騒いでも印象が悪くなるだけだと思ったので、冷静に冷静にと自分に言い聞かせて反論をする。
すると相手は目を瞬かせて驚いた表情をした。
さっき同じ言葉を言ったはずなのに、やっぱり伝わっていなかったようだ。
「そんなはずない!私は怖気づいても試験を受けるべきだと言ったはずだ」
あぁ〜もう!
そんなはずあるんだよ!さっきから言っているのに全然話が通じない!
「試験を受ける必要ないと言っているの!成人しているし、ランクアップしている!」
ちゃんと着実にランクアップしてきたんだよ!
首都に着いたときにもランクアップしたんだから!
ちょっとした騒動になった嫌な思い出があるくらいだ。
「えぇっと、念のためギルドカードを確認しても?」
収拾がつかないと思ったのか、ギルド職員がカードの提示を求めてきた。
まあ言った言わないの水掛け論より物的証拠を見せたほうが早いよね。
そう納得してギルド職員にギルドカードを渡した。
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ターゲットは違ったけど、やっぱりお察しの未来になりましたよ…ふふふ
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