135 採掘
「ギリギリ掘っていい場所だからって言っても地面を掘るのはいいのかな?」
「掘った後にちゃんと埋めておけばいいんじゃないかな〜」
足元ということで躊躇するのだが、クリスは見つけた鉱脈にワクワクした顔が止まらない様子だ。
今度こそ出てくれるだろうという期待が現れている。
止めたって止まらないだろうとわかるので、ひとまずじいじに教えてもらった人よけの魔法を使っておく。
鉱山じゃなくて、地面を掘っているという異様な光景を他人に見られたくはないからね!
午前中のようにいきなり掘るのではなく、鉱脈に繋がってそうな場所を再度探して、ある程度は土魔法で不要な土を取り除いておく。
結果、鉱脈に繋がっていそうなところまで掘ったら、クリスがすっぽり入るくらいの穴が開いてしまった。
午前中の教訓を活かして手で掘らなくて良かった。
「じゃあやっと採掘だー!」
「うん、期待しすぎないようにね」
午前中より断然鉱石がでそうな雰囲気があるけど、だからといって出るとは限らないからね。
期待する気持ちにブレーキをかけながら、クリスと2人で穴に入って、その側面にツルハシを振り下ろす。
カツンと固めの土に当たった音が響く。
山の斜面を掘った時はまったく違う音に期待が高まっていく。
クリスもそれを感じているのか、口元がにんまりしている。
カツン、カツンとなる音と、ポロポロ落ちていく石を入念に見ていく。
小さい鉱石が出るだけでも嬉しいからね、見逃さないようにしないと。
数分くらいたった辺りだろうか、一際甲高い音が響いたと思ったら、ゴロッと手のひらサイズの塊が転がり落ちてきた。
これはもしかしたりするのかも知れない。
「おぉ!もしかしなくてももしかする?」
クリスの期待する声に、私の期待も高まる。
落ちたものを拾って鑑定してみると、念願の鉄鉱石!
この鉱山で採れる代表的な鉱石だけど、自分で掘って取れたと言うことに喜びを感じる。
「すごい!出たね!僕もまけてられないや!」
そう言って更に気合を入れて掘り出すクリスも程なく何か半透明な何かがついた石を掘り当てた。
クリスに断りを入れて鑑定してみる。
【水晶(シトリン)】
結晶化した水晶の中に多くの鉄を含むことで濃い黄色になっている水晶。
黄金の輝きは太陽を模していると言われている。
「水晶!やったー!」
「すごいね!」
鉄鉱石があるからこういう水晶も採れるのかもしれない。
しかもクリスが持っている石には爪先大の水晶が出ているが、どうやらその石の中にも水晶があるようだ。
これうまく開けないと水晶まで傷つけることになりそう。
「とりあえず掘れるだけ掘ってみよう!」
「そうだね。掘った後のことは掘った後に考えようか」
クリスの提案もあり、水晶以外も出るかもしれないと、またどんどん掘っていく。
すると午前中の不作が嘘のように、ポロポロと何か出てくる。
鉱脈って大事なんだね。
当たるとこんなにポロポロ出てくるもんなんだね。
その後も水晶やら鉱石やらが出てくる出てくる出てくる。
あんまりにも出てくるから掘り当てたものは持っていたカゴに入れていったけど、その中身がどんどん溜まっていく。
午前中の閑古鳥は何だったのかと思うくらい。
まあちゃんと確認しながらすればできるってことだろうけど。
「クリスそろそろ止めようか?こんなにあっても使い道ないんじゃない?」
「あーそうだね。出てくるのが楽しくて掘り進めちゃたよ」
アイテムボックスがあるから持っていられるけど、死蔵しておくのもなんかもったいない気がするし。
売るにしてもこの街で個人がこんなに売ると問題になるだろう。
絶対に絡まれるよね。
鉱石は武器の修理とかの時に鍛冶師に渡せばいいけど、水晶とかはどうするか。
他の街でわざわざ売るのも面倒だし、1つくらいアクセサリーを作って、後はまた作りたいときまでアイテムボックスに保管すればいいかな。
クリスに説明するとそれで了承してもらえた。
「じゃあ採れた記念で1つ水晶選んで、街の宝飾店に持っていこうか?」
「だね!じゃあどれにするか選ばないとだけど…いっぱいあって迷うね?」
「それじゃあ、僕のお店で選んでみてはどうでしょうか?」
「へっ?」
誰もいないと思っていたら、いつの間にか穴をのぞき込むように見ている男性がいた。
人よけの魔法を使っていたはずなのになぜ見つかったの!?
見られなくなかった地面を掘って採掘している姿を見られてしまった…。
しかも2人がすっぽり入るくらいの大きな穴を開けて掘っていたと知られてしまった。
こんな観光的な採掘場で本格的に採掘している変な人だと思われる…!
「あ、あの、これは、その…」
「たくさん採れたみたいで良かったですね〜ここなかなか採れない人が多いみたいなんですよ」
「斜面とか掘っても出ないから硬いところ探して掘ってみたんだ!やっぱりこの量が出てくるってことは普通じゃないんだね!」
「そうですよ!しかも品質良さそうだし、お姉さんたちは幸運ですね!」
なんかすごいのほほんとしている人っぽい。
普通の人が見たら驚くようなことをしているはずなんだけど、それにはツッコまず、カゴの中にある掘り当てた鉱石類を見ながらクリスと穏やかに話をしている。
このお兄さんは敵意とか悪意も感じないから良かったけど、人よけの魔法を使ったからって周りの警戒を疎かにしてしまった。
気を抜いちゃダメってことだね。
「うふふ、お兄さんも嬉しいこと言ってくれるね!お店って宝石屋さんなの?」
「はい!宝飾店をしていますよ!」
ぺかーと明るい笑顔が眩しい!
いい人だとひと目でわかるよ。
「ふふふ、せっかくだからお兄さんのお店に行ってみようかな?」
「ぜひ!お越しください!見せていただくだけでも嬉しいですから〜」
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